受動喫煙裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 09:54 UTC 版)
2004年8月5日に神奈中ハイヤーを相手に乗務員が受動喫煙に対する健康被害を受けたとして、50万円の損害賠償と全車両の禁煙を求めて訴訟。2006年5月9日に原告側の請求を退ける判決を下したが、判決文には「タクシーの全面禁煙化をすすめる事が望ましい」との意見が附された。なお、原告側は控訴を要求したが2006年10月11日に東京高等裁判所への控訴を棄却された。 東京都の江戸川区職員が区に対して求めた、職場での受動喫煙に関する損害賠償請求訴訟。2004年7月13日に東京地方裁判所は同区に対し、安全配慮義務を怠ったとして5万円の支払いを命じた。判決では被用者(職員)がたばこの煙から保護されることを安全配慮義務の内容とし、受動喫煙と健康被害の因果関係を日本で初めて法的に認めた。 北海道滝川市の建設資材製造会社「道央建鉄」に勤務していた男性が職場での受動喫煙の被害を受け、急性受動喫煙症となった。男性が会社に分煙など改善要求を行ったところ、男性が解雇された。それを不服として、2008年1月24日に解雇の無効確認と給与の支払いを求める訴えを札幌地裁岩見沢支部に起こした。「道央建鉄」側は「社長を含め社員の大半は喫煙者であり、分煙を行うための費用が掛かるために男性を解雇した」と述べた。2009年4月1日に700万円を道央建鉄が男性に支払うことで和解したと発表した。 イスラエルでは2009年に演劇の舞台上で女優が喫煙するシーンがあった。それによって観客の健康を害したとして、ハイファの公営劇場が観客に対して一人当たり1000シェケル(約23,000円)を支払うよう求める訴訟を弁護士らがハイファの裁判所に提起した。イスラエルには禁煙法があり、公共の場所は基本的に全面禁煙となっている。 積水ハウスの滋賀県の工場に勤務していた女性社員が、男性社員の多くが工場内の喫煙室を利用せず、女性社員の勤務するミシン室で喫煙をし続けていたことで、受動喫煙状態となり、2009年7月に、煙草の煙に起因する化学物質過敏症(シックハウス症候群)と診断された。女性社員は上司に掛け合ったが応じてもらえず、2011年12月に同社を相手取り、慰謝料などを求める訴えを大阪地方裁判所に起こした。一審の大阪地裁は原告の訴えを退けたが、二審の大阪高等裁判所で2016年5月31日付で、積水ハウス側が原告に対し解決金約350万円を支払う内容で和解が成立した。 2017年11月に神奈川県横浜市郊外の団地在住ミュージシャンが斜め上の一家に、喫煙が原因で受動喫煙症と化学物質過敏症になったとして4500万円の賠償請求訴訟を提訴された。防音室となっている二重窓部屋の中で1日数本程度の喫煙であった。2019年11月に横浜地裁の判決において、体調不良と喫煙の因果関係は認められず、団地の自宅内での喫煙は自由であり、社会相当性を逸脱するような事情がないのであれば違法でないと認定。裁判記録中に日本禁煙学会の作田学医師の診断書があり、原告の体調不良は受動喫煙症による物だと記載がなされていたが、判決では.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}直接診察することなく行われたものであって、医師法20条に違反するものといわざるを得ず —横浜地裁、横浜地方裁判所平成29年(ワ)第4952号判決文 と医師法違反の指摘がなされた。さらに日本禁煙学会による「受動喫煙症の分類と診断基準」に従って、原告らの体調不良について「受動喫煙症」との病名を診断しているものと推認されるものの、その基準が受動喫煙自体についての客観的証拠がなくとも、患者の申告だけで受動喫煙症と診断してかまわないとしているのは、早期治療に着手するためとか、法的手段をとるための布石とするといった一種の政策目的によるものと認められる —横浜地裁、横浜地方裁判所平成29年(ワ)第4952号判決文 と診断基準にも疑問が示された。原告は東京高裁に上告したが棄却され、原告の敗訴が確定した。
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