取り入れられた宗教・思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 09:16 UTC 版)
神智学協会の〈神智学〉は、「西洋伝統思想」に仏教など多様な宗教・思想を折衷して作られた。マハトマ(秘儀参入者)が伝承してきた教えは、様々な宗教や神秘思想とオカルトの源泉であり、真理はそれらのなかにも断片として表現されているが、〈神智学〉はその教えを純粋に復原したものと主張される。 〈神智学〉では、古代エジプト、神秘主義、ヘルメス思想、ギリシア哲学、キリスト教、新プラトン主義、グノーシス主義、カバラ、ヴェーダ、バラモン教・ヒンドゥー教(アドヴァイタ・ヴェーダーンタ、ヨーガを含む)、仏教(特に、チベット仏教を含む北伝仏教)、ゾロアスター教、魔術、錬金術、占星術、心霊主義、神話、フリーメイソン、薔薇十字団などから様々な文脈の中で引用が見られるが、それらの知識のなかから、曇りのない秘儀を抽出することで叙述されたものとされる。 とは言っても、すべての宗教を同列とみなしたわけではなく、ユダヤ教は忌まわしい代物で(好意的な引用もある)、キリスト教はイエスを除けば何の値打ちもなく、イスラム教も数人の神秘家を除けば同様であるとし、その叡智が宿るのは「人類の魂のゆりかご」インドであるとした。 特に仏教への偏愛が著しく、もっとも完成されたものと判断した。ただし、その仏教は、大衆の間で実践され学者が研究してきた「顕教的な(外面的な)仏教」ではなく、「秘儀伝授を受けたもの」のみに伝えられてきた「秘教的仏教」であり、彼らの言う「顕教的な仏教」には重大な誤りが含まれており、無学な大衆向けのものであるため、宇宙の意味や人間の運命にかかわる究極の英知は含んでいない、という。 初期の〈神智学〉ではキリスト教は厳しく排斥されたが、のちに後継者のアニー・ベサントは、ブラヴァツキーら先輩たちの教え、特にキリスト教に関するものを修正し、表向きのキリスト教の背後に由緒正しい「秘教的なキリスト教」が存在するとしてキリスト教を東洋思想と同列に並べた。この戦略で、多くのキリスト教徒が〈神智学〉に引きつけられるようになった。 ブラヴァツキーは、伝統的な神智学の大家ヤーコプ・ベーメに申しわけ程度に言及している。イギリスの小説家エドワード・ブルワー=リットン(初代リットン男爵)は、友人のエリファス・レヴィの理論を焼き直したオカルト小説を書いているが、このブルワー=リットンからも直接影響を受けている。また、〈神智学〉を提唱する以前の若い時にフランスのパリで過ごした際、霊の進化と生まれ変わりを唱えるスピリティスムを提唱した霊媒・教育者アラン・カルデックのグループに足しげく通っていた。 これらと進化論などの新しい知見を折衷して、ブラヴァツキーは万物の一元性、宇宙や文明や人種の周期的な発生と衰退、カルマと普遍的な因果応報、再生(輪廻転生)、太古の文明、超能力、高次の意識、原子や鉱物や惑星の進化、生命体の進化に伴う天体間の移動などを説いている。
※この「取り入れられた宗教・思想」の解説は、「神智学」の解説の一部です。
「取り入れられた宗教・思想」を含む「神智学」の記事については、「神智学」の概要を参照ください。
- 取り入れられた宗教・思想のページへのリンク