博士号取得者のキャリア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 07:43 UTC 版)
各国で、高等教育への関心が高まりつつある。そのため、社会人大学院や夜間大学院、通信制大学院といった形態で、働きながら研究して博士の学位を取得する人が増えている。またそうした社会経験の豊富な人口が大学の教員になることで、学問と社会の接点を拡大しているという面もある。 理系の博士は、企業からも一定の研究能力を持つ者として認知されることが多く、一部の産業では何人の博士を雇用しているかが信用の指標とされる場合がある。実際、日立グループと日立造船グループの関係者(在籍者とOB)の間では、1952年に博士号取得者の親睦組織「返仁会(意味は変人会(へんじんかい))」が結成された。 国際的な知識社会化、生涯教育の拡大、高度専門職の増加などが進行する中、社会において博士号取得者をいかに活かすことができるかが、多くの国々で問われている。しかしながら日本では、博士号取得者の新規雇用に積極的な企業や大学はそれほど多くはないのが実状であり、ポストドクター問題の一因となってきた。文部科学省は2006年に博士人材の就職支援を開始。大阪府立大学など各大学や産学協働イノベーション人材育成協議会が博士号取得者を企業に派遣してのインターンシップ研修を行うようになった。こうした取り組みや、人工知能(AI)など技術革新に対応する必要から、博士号取得者の採用に積極的になった企業も見られる。 なお、博士号取得者は国会議員政策担当秘書の資格を無試験で取得できる他、労働基準法第14条にて高度な専門知識を有する者としても位置付けられている。 また、欧米などでは称号として氏名に博士を付けて呼ぶ(英語圏の場合、博士号所持者はMr.○○ではなくDr.○○と呼ばれる)ことが通例である。日本においては、ノーベル賞の受賞者等に対して博士の敬称を付けて報道される例が現代においても見られることがある。 日本で学問分野別博士課程修了者の正社員・正職員率は、工学博士76.2%、保健博士(医師、歯科医師ら)74.1%、農学博士66.0%、人文博士は41.0%、教育博士や芸術博士などその他は49.5%である。博士課程修了者(必ずしも博士号取得者ではない)の年収については、2018年度博士課程修了者の翌年度の年収は分野別では「収入なし」から「1500万円以上」まで15区分すると、保健が「1200万~1500万円未満」で最も高く、次は工学で「400万~500万円未満」、社会科学と理学が「300万~400万円未満」、農学が「200万~300万円未満」、人文科学は「100万~200万円未満」だった。博士課程修了者の年収は保健、工学、理学、社会で高い傾向にあり、保健は30%以上が1,000万円を超えていた。所得割合が最多なのは理学と社会が300~400万円未満、工学が400~500万円未満、保健では500~600万円未満となっている。農学が200~300万円未満、人文は100~200万円未満であった。人文博士課程修了者は400万円未満が約40%を占め、その内100~200万円未満が19.6%で最多層であった。
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