博士学位の取得方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 07:41 UTC 版)
日本において博士の学位を授与するのは、大学もしくは独立行政法人大学改革支援・学位授与機構である。学校教育法第104条は、大学院の課程を修了した者に博士の学位を授与することとされ、第104条第2項に前項の規定により博士の学位を授与された者と同等以上の学力があると認める者に対し、博士の学位を授与することができるとされている。 学校教育法第104条第1項に基づいて、課程修了によって取得する博士号を"課程博士"("甲博士")、他方、同第2項に基づいて課程への在籍とは関係なく論文提出のみによって取得する博士号を"論文博士"("乙博士")と呼び分けることがある。 特に秀でた研究実績のない人は、"課程博士"("甲博士")を選択することが推奨されている。これには、授業料はかかるものの、指導教員から研究指導を直接受け、研究の進め方を学べる上、大学の図書館などの研究インフラが利用できるからなどの理由がある。 一方、"論文博士"("乙博士")は、取得要件として必要な査読付き論文数を持ち、そのバックグラウンドとして多くの査読なし論文や国際会議発表、学会の委員就任などの実績があり、日頃から研究業績の蓄積量が多い人向けであるが、授業料はかからないものの、かなり厳しいとされる。 大学が博士号を授与した場合、授与大学ごとに「学位番号」あるいは「学位授与番号」と呼ばれる「通し番号」が付けられて文部科学省に報告されるが、"課程博士"("甲博士")には甲1234XX号のように「甲」が、"論文博士"("乙博士")には乙1234XX号のように「乙」が付けられる。 なお、中央教育審議会は2005年6月13日の総会で大学院改革に関する中間報告「新時代の大学院教育 - 国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて - 」の中で、「"論文博士"("乙博士")」について、「諸外国の制度と比べ日本独特の論文博士は、将来的には廃止する方向で検討すべきではないかという意見も出されている」と述べる一方、反対意見も紹介した上で、「論文博士については、学位に関する国際的な考え方や課程制大学院制度の趣旨などを念頭にその在り方を検討していくことが適当である」としている(資料第1章第2節3 課程制大学院の制度的定着の促進を参照)。 また、大学によっては、所定の期間在学し所定の単位を取得して退学した後であっても、一定期間のうちに論文を提出することにより"課程博士"("甲博士")を与える制度を設けていることもある。これと同様にして、"論文博士"("乙博士")として学位の取得を申請する場合であっても、博士課程の在籍経験がある者に対しては、学力の確認(試験)の扱いを一部免除するなど便宜を図っている大学もある。 しかし、退学後の"課程博士"("甲博士")の授与について中央教育審議会は、「一部の大学においては、博士課程退学後、一定期間以内に博士の学位を取得した者について、実質的には博士課程における研究成果として評価すべき部分が少なくないとして『課程博士』として取り扱っている例も見受けられる。このような取り扱いについては、各大学の判断により、何らかの形で博士課程への在籍関係を保ったまま論文指導を継続して受けられるよう工夫するなど、当該学生に対する研究指導体制を明らかにして、標準修業年限と比べて著しく長期にならない合理的な期間内に学位を授与するよう、円滑な学位授与に努めることが必要である」とし、退学した後であっても、学生が再度復学などの形をとって課程に在籍して修了した上で学位が授与されることを原則とするような措置を各大学に求めている(資料)。
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