動的単一モード・レーザの実現が達成した社会的貢献
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 00:37 UTC 版)
「末松安晴」の記事における「動的単一モード・レーザの実現が達成した社会的貢献」の解説
末松が提唱した1.5μm長波長帯の大容量・長距離光ファイバ通信は、動的単一モードレーザ(DSMレーザ)を主な光源とし、さらに極低損失化とVAD法の開拓で低価格化が達成された単一モード光ファイバを中心に、光デバイスや変調方式、光ファイバ増幅器などの研究・開発と共に発展した。すなわち1987年には波長1.5μm帯の温度同調の動的単一モードレーザを光源とする、波長多重(WDM)光ファイバ通信システムがNTTなどによって陸上の幹線システムに、そして1992年はKDDやAT&Tなどにより大陸間太平洋横断光海底ケーブルの長距離用に商用化された(図6)。これによって情報の伝送コストが著しく低減し、インターネットの発展を支えて今日に至っている。この一連の研究が光ファイバ通信の発展に与えた貢献に対して、1894年のC&C賞を、1997年のドイツのEduard-Rhein- Stiftungを、さらに2016年には日本発明協会が戦後日本のイノベーション100選に選ばれ。また、汎用性の高い技術開拓として動的単一モードレーザへの関心が述べられている。さらに2004年ごろからは、電気的な波長可変のレーザ、電気同調の動的単一モードレーザが高密度波長多重(D-WDM)システムの高度化やコヒーレント通信の光源にも用いられている。現在、光ファイバ通信は地球を数万回取り巻く高密度の情報ネットワークを形成しており、中距離のイーサーネット等にも広く用いられている。さらに、FTTHによる家庭の光回線には、局から家庭には1.5μm帯の動的単一モードレーザが、そして最近は家庭から局へは1.3μm帯の動的単一モードレーザが用いられている。こうして光ファイバ通信の情報伝送性能指数、伝送容量×伝送距離の積は、それ以前の同軸ケーブルの性能の約1億倍に達し(図7)、情報伝送のコストを格段に低下させた。こうした進歩を反映して1990年代の中葉から、AmazonやGoogle、そして楽天などのネットワーク産業が続発した。その後、2010年が近づくと、電子映像のネットワーク利用が普及するとともに、スマート・フォンの発展により地球上の多くの人達がネットワークに繋がれ、高速伝送を前提としたクラウドを用いる社会、ビッグデータや人工知能を活用するネット連携社会へと進んでいる。光通信の発展は大容量情報の即時伝送を日常化し、ネット連携社会、そして情報通信技術文明を生み出す原動力となっている。今日のインターネット社会は、動的単一モードレーザを光源とする光ファイバ通信の発展なしには達成され得なかったであろう。こうした動的単一モードレーザの先駆的研究とその果たした社会的な貢献に対して、2014年に日本国際賞を、さらに天皇陛下から2015年には文化勲章が親授されている。
※この「動的単一モード・レーザの実現が達成した社会的貢献」の解説は、「末松安晴」の解説の一部です。
「動的単一モード・レーザの実現が達成した社会的貢献」を含む「末松安晴」の記事については、「末松安晴」の概要を参照ください。
- 動的単一モード・レーザの実現が達成した社会的貢献のページへのリンク