制度改正によるねじれの弊害の解消論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 13:16 UTC 版)
「ねじれ国会」の記事における「制度改正によるねじれの弊害の解消論」の解説
衆参ねじれによる国会審議の停滞を解消する方法としては、以下のものが考えられる。 衆院選に勝利した政党のマニフェストに関する議案や予算関連法案などについて、参議院が反対しないなどの慣行を与野党合意で確立する。前者の例としてはイギリスのソールズベリー原則(Salisbury doctorine)が挙げられる。ただし、イギリスの貴族院(上院)とは異なり参議院が公選制であることが、このような合意形成の障害になる可能性が考えられる。なお、イギリスのソールズベリー原則を万能と考える議論には批判がある。小堀眞裕によれば、ブレア政権下でのID法案はマニフェストで公約されていたにもかかわらず、貴族院で12回も政府案が敗北しており、原則の有効性は万能とは言えないと指摘されている。 国会の議事日程の決定について内閣に主導権を与える。その問題意識は、日本の現行制度が国会運営に内閣の関与を認めず、衆参各院の議院運営委員会(議運)に委ねている。これに対して、たとえばフランス議会やドイツ連邦議会(下院)では、議会の議事日程の決定に政府が参画している。 内閣提出法案の成立を促進する手段を内閣に与える。たとえばフランスでは、政府提出法案に対する修正案のうち許容範囲内のものに限定して、原案との一括表決を議会に求める権限が政府に与えられている。 参議院の権限を弱める方向で制度改革を実施する(参議院改革論)。その問題意識は、各国の第二院のなかでも参議院は権限が強大な部類に属する点にある。たとえば、衆議院の再可決の要件を3分の2から引き下げるには憲法改正を要するが、国会同意人事における衆議院の優越の復活は各根拠法の改正(たとえば日本銀行総裁であれば日本銀行法の改正)で実現できる。 憲法改正によって両院制から一院制に移行する(参議院不要論)。ただし、一院制における任期の調整、選挙制度の調整、現行憲法で満了日まで任期が保障されている参議院議員の在任期間、両院の総議員3分の2以上の賛成への実現性可能性などの問題がある。2013年7月、第23回参議院議員通常選挙において自民党が両院で第一党となったとたんに論じられなくなった[要出典]。 衆参同日選挙の慣例化により、衆参の選挙結果の差異を縮小する方法も考えられる。現在の日本が事実上採用している衆参別時期選挙というのは、世界的な上下両院選挙の動向からみれば異例である。議院内閣制を採用する国で、上下両院を選挙する国は、イタリア・オーストラリア・ベルギー・スペイン・日本であるが、このうち上下両院別時期選挙を行っているのは、日本のみであり、他の国々では上下両院同日選挙を実施している。また、日本以外の国々では、上院解散が可能であり、できないのは日本だけである。にもかかわらず、国会の憲法審査会などでは、憲法学者が一般的に上院は解散できないなどという明らかな虚偽説明を行っている。日本の比較憲法の水準は低く、本格的な展開が求められる。
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