初飛行と運用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 05:02 UTC 版)
「エアバス A400M」の記事における「初飛行と運用」の解説
当初の予定では、1機あたりの価格は1億ユーロで、2009年10月に量産機の納入が開始され、2010年から配備が開始されることになっていたが、新設計のエンジンをはじめ多くの最新技術を取り入れたため、最大12トンの重量超過、4年近いスケジュールの遅れ、大幅なコスト上昇の問題が生じている。 初号機は2008年6月にロールアウトし、2009年12月11日にスペインのサンパブロ工場において3時間50分の初飛行 を実施した。バラスト水2トンや試験機材など15トン分を搭載して、初飛行時から最大離陸重量の93%である127トンの離陸重量で、10時15分から14時2分までの3時間47分の飛行を行った。ロールアウトから初飛行まで時間が掛かったのは、エンジン制御用ソフトウェアの開発に問題が生じたためだとされる。 2010年初頭には、重量超過問題およびスケジュールの遅延に伴い、約90億ユーロの予算オーバーが生じるとして、EADS(エアバス親会社)と発注者である欧州7カ国が協議し、欧州7カ国は総額35億ユーロ(20億ユーロのコストアップ承認および15億ユーロの条件付融資)の支援を行なうこととなった。2011年にEADSは、量産機4機が2013年にフランスとトルコにまず引き渡される予定であることを発表した。ドイツ、イギリス、マレーシアへの引き渡しは翌年以降とされた。その後10年間にわたる4万人近い労働と、5,000飛行時間以上のテスト飛行の成果として2013年8月1日、フランスへ量産初号機が、また同2号機を2014年1月22日納入した。続いてトルコも機体完成後若干受け入れを引き延ばしたものの、2014年4月4日にスペイン・セビリアの工場で同3号機を受領した。 2014年12月18日段階でフランス空軍に6機、トルコ空軍に1機、イギリス空軍に1機、ドイツ空軍に1機納入され、フランスではセルヴァル作戦に投入される など、徐々に実戦化されているものの、ドイツが、国防予算削減により当初60機を、40機まで減らす方針に変える。 ドイツのほかにもイギリスとトルコも遅延の影響を受け、開発・生産の遅延のほか、性能が目標に達していなかったり、複数の発注国の国防予算削減による機数減などの問題も抱え、未だ状況は安定していない。 NATO加盟国保有のA400Mに関係する近況としてドイツ空軍は2014年6月26日、2019年までに経年化したトランザール輸送機と交替する形で合計40機の配備を予定していると発表した。イギリス軍広報部は2015年内に初期作戦能力(IOC)獲得を目指しているA400M(アトラス)輸送機が、2015年3月3日に初めての実任務輸送としてキプロスへ飛んだと発表した。発表によると、キプロスのイギリス空軍(RAF)アクロティリ基地に飛行したのは、イギリス空軍が2014年末に受領したA400Mの1号機「シティ・オブ・ブリストル」だという。 2015年3月17日エアバスDSは、マレーシア・ランカウイ島で行われていた航空ショーの会場を利用し、マレーシア空軍にA400M初号機を引渡したと発表した。プログラムに最初から参加していたローンチ国以外の国への引き渡しはマレーシア軍が初めてとなる。 2017年時点でも、機体後方の乱気流が大きく、落下傘兵が空中衝突する可能性があるため機体側部ドア両方から同時に降下できないなどの問題を抱える。加えてヘリコプターへの空中給油能力が未完成のため、フランス空軍は空中給油能力を備えたC-130Jの導入に踏み切り、場合によっては追加調達するともしている。
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