再興:ハンマーヘッドリボザイムとグループIイントロン: P4-6
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「分子生物学の歴史」の記事における「再興:ハンマーヘッドリボザイムとグループIイントロン: P4-6」の解説
最初のtRNAの構造の後のかなりの期間、RNA構造の分野に劇的な進展は生じなかった。RNA構造の研究は標的となるRNAを単離できるかどうかに依存していた。このことは長年この分野の限界となっており、リボソームなどの既知の標的は単離や結晶化が格段に困難であった。さらに、興味深い他のRNA標的が単に見つかっていない、または興味深いと思えるほどに十分に理解されていないために、構造的な研究を行う対象も不足していた。そのため、tRNAPheの構造の最初の発表の後の約20年は、ほんの一握りの他のRNA標的の構造が解かれただけであり、それらのほとんどはtRNAファミリーに属するものであった。この不運な機会不足は、最終的には核酸研究の2つ大きな前進によって克服されることとなった。リボザイムの同定と、それらのin vitro転写による生産技術である。 テトラヒメナのグループIイントロン(英語版)が自己触媒を行うリボザイムであることを示唆する発表をトーマス・チェックが行った後、シドニー・アルトマンのリボヌクレアーゼPRNAによる触媒の報告など、いくつかの他の触媒性RNAが1980年代後半に同定され、その中にはハンマーヘッド型リボザイム(英語版)も含まれていた。1994年、McKayらは「ハンマーヘッド型RNA-DNA リボザイム-阻害剤複合体」の 2.6 Å分解能の構造を発表した。それは自己触媒活性をリボザイムがDNAの基質と結合することで中断した構造であった。この論文で発表されたリボザイムのコンフォメーションはいくつかの可能な状態のうちの1つであることが最終的には示された。この試料は触媒的に不活性であったものの、その後活性状態の構造が解明された。この構造に続いて、ジェニファー・ダウドナによってテトラヒメナのグループIイントロンのP4-P6ドメインの構造が発表された。これはチェックによって有名になったリボザイムの断片である。この論文のタイトルの2番目の句として用いられた Principles of RNA Packing (RNAのパッキングの原理) は、これら2つの構造の価値を適切に表現していた。詳しく記述されたtRNAの構造とtRNAファミリー外の球状RNAの構造の比較が初めて可能となったのである。これによって、RNA三次元構造の分類の枠組みが作られた。現在では、モチーフ、フォールドやさまざまな局所的な安定化相互作用化の保存性を提案することが可能である。これらの構造とそれらからの示唆についてのレビューとしては、ダウドナとFerré-D'Amaréによる RNA FOLDS: Insights from recent crystal structures を参照のこと。 結晶学によってなされた全体構造の決定における進歩に加えて、1990年代の初頭にはNMRがRNA構造生物学の強力な技術として実装されることとなった。大きなリボザイムの構造が結晶学的手法によって解かれるとともに、多数の小さなRNAや薬剤やペプチドと複合体を形成したRNAの構造がNMRを利用して解かれた。加えて、現在ではNMRは結晶構造を精査し補完するものとしても利用されている。その一例は1997年に発表されたテトラループレセプター単独の構造決定において示されている。このような精査によって、大きなRNA分子の全体的なフォールドを安定化している、塩基対形成や塩基のスタッキング相互作用をより正確に特徴づけることが可能となった。RNAの三次元構造モチーフを理解することの重要性は、MichelとCostaがテトラループ(英語版)モチーフを同定した論文において予言的に記されている。「...自らフォールディングを行うRNA分子が比較的少数の三次元モチーフのみを集中的に使用していたとしても驚くには当たらない。これらのモチーフの同定はモデリングの試みに大いに役立つだろう。そして大きなRNAの結晶化が困難な課題である限り、必要であり続けるだろう」
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