個室A寝台
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 05:49 UTC 版)
先述の通り、A寝台においては戦後も個室寝台車が設置されてきたが、数は少なく、国鉄時代は開放式が主流であった。ただし、前に述べたとおり、「区分室」として存在したものもあった。 しかし、個室を1つの単位として寝台券を販売する「個室寝台」は20系客車の1人用個室「ルーメット」と24系客車のオロネ25形の1人用個室が1984年(昭和59年)の個室B寝台「カルテット」の運用以前では唯一であった。 その後、プライバシーの重視と居住性の改善の見地から、寝台車の個室化が進展した。従来からの個室も洗面台などが設けられている点がB寝台との差異となっていたが、国鉄末期以降は、在来車の改造によりB寝台個室が登場、これに対し差別化を図るため、同じく改造により登場したA寝台個室の大半は室内テレビやオーディオ機器などが設けられている。 国鉄民営化後直前の1987年(昭和62年)に、北海道直通寝台特急用として2人用A寝台個室「ツインデラックス (DX)」が登場。 1988年(昭和63年)の青函トンネル開業に伴って運行を開始した、寝台特急「北斗星」には先の2人用A寝台個室「ツインデラックス (DX)」とともに豪華個室「ロイヤル」が設定され、先述の機器に加え合造式のトイレ・シャワールームやベッドとは異なるリビングスペースが登場し、戦前の一等区分室をも上回る豪華さとなった。 さらに寝台特急「トワイライトエクスプレス」では、このロイヤルルームを「北斗星」以上に設置し、更にセミダブルベッドの2床配置や、最後部展望スペースやトイレ・洗面台ユニットと独立したシャワールームなどを兼ねた2人用個室「スイート」を設置、質の高いサービスを提供し、ブランドイメージの構築に成功した。 またJR東日本で試作された「夢空間」では、オロネ25 901「デラックススリーパー」においてバスルーム付きの個室が3室のみ設定された。2室が設定された「スーペリアツイン」の料金は、「カシオペア」の「カシオペアスイート」と同額である。また最上級個室である「エクセレントスイート」は、居間と寝室の間に扉があり、一般的なホテルにおけるスイートルームの概念に近い間取りである。一室67,320円と、スイート等より高額な料金が話題となったが、2008年(平成20年)に夢空間編成の廃車とともに廃止された。 これを更に推し進めた寝台特急「カシオペア」で使用されているE26系客車では、個室A寝台車のみで編成を組むという試みを行っている。また同車では全ての寝台にトイレ・洗面台を設け、上級客室である「カシオペアDX」「カシオペアスイート」では個室シャワーも設置されており、「トワイライトエクスプレス」の2号車スイート以来となる、トイレとシャワースペースの分離を行い、トイレの折り畳み動作を省略している。 2013年(平成25年)に登場した「ななつ星 in 九州」用の77系客車では「クルージングトレイン」として更に豪華な内装を求め、全室にシャワーを設置するなど設備の充実化を推し進めている。また長い間廃れていた「イネ」の称号が復活した。ただし運行上の戦略から、これまでの上級A寝台個室と異なり室内テレビは敢えて設けていない。 「カシオペア」「ななつ星in九州」とも、客車列車の性質を利用し、最後部は通路部分を廃し丸々個室スペースに利用した「展望式スイート」が設置されている。なお、バスルーム付き個室が設定された車両は2017年より運行が開始された「TRAIN SUITE 四季島」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」において、「夢空間」以来9年ぶりに復活した。 ちなみに、個室の施錠方式は、鍵・錠前によるものと暗証番号を入力する方式のほかカードキーを使うものがある。
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