不活動時間など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 23:47 UTC 版)
第32条の労働時間とは、労働者が使用者の明示または黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう(最一小判平成12年3月9日、最一小判昭和56年10月18日)。労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下におかれたと評価することができるかどうかによって客観的に定まるものであり、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない。労働者が使用者によって直接的に強制されている、つまり使用者の指揮監督下にある行動に要する時間は基本的に全て労働時間に該当する。 就業前の準備や清掃のほか朝礼に要する時間、就業後の終礼や後片付けの時間、指定された制服や作業服への着替え(あるいは終業後の通勤着への着替え)のほか装備品の着脱に要する時間、更衣室等から作業所までの往復の移動時間も、使用者の指揮命令下に労働者が置かれている限り労働時間に含まれる。就業規則に、始業時刻と同時に業務を開始すべき旨の定めがある場合には、業務(更衣等を含む)の開始時点が労働時間の起算点となり、会社への入門から始業時刻までの時間は、労働時間には該当しない(東京高判昭和59年10月31日)。 朝礼や終礼への参加が労働者の任意であったり、ボランティアで清掃を行うような場合は、直接の強制を伴っておらず使用者の指揮命令下に置かれていないと解されるので、労働時間には含まれない。ただし、たとえそれらの行動が労働者の任意としていても、不参加の労働者に対し使用者が不利な取り扱いをする場合は事実上直接強制しているのであり使用者の指揮命令下に置かれていると解されるため、労働時間に含まれることになる(昭和23年7月13日基発第1018号・第1019号)。 休憩時間は労働時間に含まれない。ただし、事実上の休憩時間であっても労働者が使用者の一定の指揮命令下に置かれている場合は休憩時間とは見なされず労働時間に含まれる。休憩時間中に来客対応や電話対応をさせる場合(昭和23年4月7日基収1196号、昭和63年3月14日基発150号)、使用者または監督者のもとで労働はしていないがいつでも労働できる待機状態である時間(手待ち時間 例:タクシーの客待ち時間。昭和22年9月13日発基17号)は、出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている以上、そのような時間も労働時間に含まれる。 労働安全衛生法による特殊健康診断の実施に要する時間、安全衛生教育の実施に要する時間、安全委員会・衛生委員会の実施に要する時間は、労働時間として扱われる(昭和47年9月18日、旧労働省労働基準局長名通達602号)。一方、同法による一般健康診断の時間や、その後の面接指導については当然には労働時間とはならず、労働時間として扱うか否かは労使の協議に委ねられる。 宿直勤務などの仮眠時間も、その時間内に何かあれば対応しなければならない義務がある場合などは「指揮命令下に置かれている」とされ、労働時間とされる(大星ビル管理事件、最判平成14年2月28日)。ただし、労働基準監督署から「監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外」の許可を受けた事業所では、通常の労働時間法規が適用されなくなり、仮眠時間は法規上の労働時間とはならない(後述)。 実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かによって客観的に定まる。不活動時間であっても労働からの解放が保障されている場合は労働時間には該当しないが、労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる。労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているとはいえないのである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下にあるというべきであり、この場合は労働時間に該当する。参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務上必要な学習等を行っていた時間は、労働時間として扱われる(平成29年1月20日労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。
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