ファルコン 1とは? わかりやすく解説

ファルコン1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/06 04:46 UTC 版)

ファルコン 1

ファルコン 1 ロケット
機能 人工衛星打上げ
製造 スペースX
開発国 アメリカ合衆国
大きさ
全高 21.3 m (70 ft)
直径 1.7 m (5.5 ft)
質量 38,555 kg (85,000 lb)
段数 2
積載量
LEOへのペイロード 670 kg (1480 lb)
ペイロード
SSO
430 kg (990 lb)
打ち上げ実績
状態 退役[1]
射場 オメレク島実験施設
ヴァンデンバーグ空軍基地
総打ち上げ回数 5
成功 2
失敗 3
部分的成功 0
初打ち上げ 2006年3月24日
22:30 GMT
第1段
1段目名称
1段目全長
1段目直径
エンジン 1 マーリン 1C
推力 454 kN (102,000 lbf)
比推力 255 秒 (海面高度)
(2.6 kN·s/kg)
燃焼時間 169 秒
燃料 RP-1/LOX
第2段
2段目名称
2段目全長
2段目直径
エンジン 1 ケストレル
推力 31 kN (7,000 lbf)
比推力 327 秒 (真空中)
(3.2 kN·s/kg))
燃焼時間 378 秒
燃料 RP-1/LOX

ファルコン1 (Falcon 1) はアメリカ合衆国の企業スペースX社により開発された2段式の商業用打ち上げロケット

概要

ワシントンD.C.連邦航空局前で撮影

一段目はマーリン・ロケットエンジンを、二段目はケストレル・ロケットエンジンを使用する。いずれも自社開発のエンジンであり液体酸素ケロシンRP-1を推進剤としている。このうち、一段ロケットは洋上で回収して再利用可能なシステムで設計されたが、回収は行われたことがない。

ファルコン1以前の民間主導で開発されるロケットは余剰となったICBM等からの転用型が多く、固体燃料ロケットエンジンに比べて比推力が高いが開発と運用の難易度が高い液体燃料ロケットエンジンを本体と共に民間主導で新規開発する例はファルコン1が世界初である。また、再利用型打ち上げシステムを採用したことにより打ち上げ費用は670万ドルと従来より格段に低コストである。これらのことから、ファルコン1は商用ロケット市場に革命を起こすものであると専門家から評価された。

ファルコン1の打ち上げは5回行われ、そのうち2回が成功した。2009年の打ち上げの後、スペースX社は他のプロジェクトに注力するためにファルコン1の開発・製造を一時凍結した。そしてファルコン9ドラゴン宇宙船の開発が順調に進んだこともあり、ファルコン1は開発再開がなされないまま退役の状態に置かれた[1]

設計

ファルコン1は低軌道への重量あたり打ち上げ費を最小とするよう設計された。ファルコン1を大型化させたファルコン9と部品を共通化させることで設計コストを抑制している。第一段ロケットはパラシュートの展開により海上に着水させ回収、再利用する。

横倒しのまま射点に運び込み、打ち上げ前に支持タワーと共に起立させる方式を採用している。これにより組み立てと移動の迅速化、自由度を高めることが出来る。

第一段

第一段ロケットにはアルミニウム合金摩擦攪拌接合により製造した部品が用いられている。液体酸素とRP-1のタンク間の隔壁などに利用される。アーヴィン・パラシュート社により設計されたパラシュートは高速落下時のドローグシュートと主パラシュートの二段階からなる。

初期の打ち上げではロケットの再利用は行われていない。上に示した打ち上げ価格はロケットの再利用を考慮に入れておらず、将来は価格が下がるものと見られていた。

第二段

第二段ロケットは低温耐性を有するアルミニウム・リチウム合金を材料とする。

派生型

マーリン・ロケットエンジン

2006年から2007年は開発初期型であるマーリンAが使用された。

2007年以降はエンジンと機体を改良したマーリンCが使用された。

2010年以降は、機体全長を延長し、燃料搭載量を増やしてペイロードの搭載重量を増加させたファルコン1eが計画されていたが、小型衛星市場が拡大しなかった上、スペースXはファルコン9ロケットとファルコンヘビーロケットの開発と製造に注力するために、ファルコン1の製造は中断することにした。製造を再開するかどうかは2012年降以[2]に改めて判断するとしていた。

2016年、スペースXの社長・最高執行責任者であるグウィン・ショットウェル英語版はもはやファルコン1の製造が再開されることはないだろうという見解を述べた。小型衛星市場に対してはより大型のロケットを用いた相乗り打ち上げで対応する方針を示した[1]

バージョン[3][4][5] ファルコン 1
(マーリン A)
ファルコン 1
(マーリン C)
ファルコン 1e
第1段エンジン 1 × マーリン 1A 1 × マーリン 1C 1 × マーリン 1C
第2段エンジン 1 × ケストレル 1 × ケストレル 1 × ケストレル
全高
(最大; m)
21.3 22.25 26.83
直径
(m)
1.7 1.7 1.7
離床推力
(kN)
318 343 454
離陸重量
(㌧)
27.2 33.23 38.56
フェアリング直径
(内径; m)
1.5 1.5 1.71
ペイロード
(LEO; kg)
570
SSOの場合はより少ない)
450 1,010
(SSOの場合430)
ペイロード
(GTO;kg)
値段
(Mil. USD)
6.7 7 9.1
1kg毎の最低の値段
(LEO; USD)
11,754 15,556 9,010
(SSOの場合19,767)
1kg毎の最低の値段
(GTO; USD)
成功率
(成功/総計)
0/2 2/3

打ち上げ

打ち上げ実績

フライト番号 打ち上げ日時 (GMT) 射点 バージョン 搭載衛星/注文主 結果 備考
1 2006年5月24日 22:30 クェゼリン マーリンA ファルコンサット–2/DARPA 失敗 打ち上げ後25秒でエンジン停止。
ロケット本体を喪失。
2 2007年3月21日 01:10 クェゼリン マーリンA デモサット/DARPA 部分成功 7分30秒の時点で第2段エンジンが早期に燃焼停止し、予定の軌道へ到達せず。
また、第1段の回収にも失敗。ただし十分なデータ収集が出来たとして、「部分的な成功」と認定。
3 2008年8月3日 03:34
クェゼリン マーリンC Trailblazer/Operationally Responsive Space
PREsat/NASA
ナノセイルD/NASA
Explorers/Celestis
失敗 打ち上げから140秒で異常が発生。
第1段エンジンの燃焼は正常だったものの1段目の切り離し時に、タイミングのミスで1段目が2段目に追突しロケットが破壊された。
4 2008年9月28日 23:15 クェゼリン マーリンC 擬似ペイロード - 重量シミュレーター, 165kg(元々はRazakSATを予定していた。) 成功 初の打ち上げ成功、ペイロードは予定の軌道に投入され、データを収集した。
5 2009年7月14日 03:35 クェゼリン マーリンC RazakSAT(リモートセンシング衛星), 180kg /  マレーシア 成功 初の商業打ち上げ成功、衛星は正常に軌道投入された。

第一回打ち上げの失敗

第一回目の打ち上げはエンジンに不備が見つかるなどの原因により数度にわたって延期された。それに加えヴァンデンバーグ空軍基地からはタイタン4ロケットの打ち上げ延期の為打ち上げ基地を他に変更するように要請され、結局は2005年11月26日にクェゼリン環礁より打ち上げられることが決定した。ペイロードには国防総省国防高等研究事業局との連携により、米空軍士官学校が設計・製造したプラズマ観測衛星であるFalconSAT-2が搭載された。

打ち上げ予定日は再延期され12月末に決行するとされていたが、12月19日に第一段エンジンのバルブに不具合が発見され、ロケットエンジン全体が新規のものと交換された。その後現地時間2006年3月25日09:30(2006年3月24日22:30 UTC)に打ち上げられた。ロケットは打ち上げの26秒後に制御不能となり、41秒後海面に衝突した。

機体は射場から250フィートはなれた珊瑚礁に衝突し、FalconSATは落下中にロケットから分離され、島の機械設備の建物屋上に落下した。衛星の損傷は明らかになっていない。同日中にSpace X社のウェブサイトで失敗の原因が燃料漏れであると発表された。その後の調査の結果、燃料漏れの原因は燃料パイプのアルミ製のナットが打ち上げ時に何らかの要因で破損したことが原因であったと発表された[6]

射場予定地

ファルコン1の打ち上げは人工衛星の搭載の便を考慮して5つの打ち上げ予定地が用意されていた。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク


「ファルコン 1」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ファルコン 1」の関連用語

ファルコン 1のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ファルコン 1のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのファルコン1 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS