皮癬壁蝨
読み方:ヒゼンダニ(hizendani)
ヒゼンダニ科のダニ
ヒゼンダニ
体長0.2~0.4mmの微小なダニで、脚は退化し全体的に円形の体型を持つ。体の表面には細かな横じわがあり、脚が短い。雌では第3、4脚に、雄では第3脚に長毛が生え、他の脚先には吸盤があり、雌背面には多数の三角状突起が見られる。
このダニに寄生されると皮膚にみみず腫れが現れ、非常にかゆく、水疱も見られる。このような症状を疥癬症と呼ぶ。重傷の場合は特にノルウェー疥癬と呼ばれ、皮膚が角質化してボロボロになり、触れただけでパラパラと皮膚が落ちてしまう状態となる。抵抗力の弱い人が感染しやすいため、老人ホームや病院内で蔓延することがある。
人のみに寄生するダニの一種。通常の疥癬症では感染力はそれ程強くないが、重傷型のノルウェー疥癬では、100万~200万ものヒゼンダニが生息し、接触、寝具、落下した皮膚屑等を介して感染し、大きな問題となる。
卵から孵化すると幼ダニ、第1若ダニ、第2若ダニを経て成ダニとなる。卵は3~8日で孵化し、その後2週間ほどで成ダニとなる。若い成虫は皮膚表面に出て這い回り、雄は体表上に留まるが、雌は交尾後、皮膚内に再侵入して坑道を穿り進み、産卵する。雌成虫は皮膚の中にトンネルを掘り、産卵を繰り返しながらそのトンネルの中で一生を過ごす。産卵は毎日2、3個ずつ、30日間以上産み続ける。雌の寿命は約2ヶ月程度といわれている(吉川、1995)。
本種が人から離れた場合、長く生存することはできず、25℃条件では、湿度90%で3日間、30%では2日間しか生きられない。12℃では高湿度で14日間生存できますが、乾燥するとずっと短くなる。
皮癬蜱
皮癬壁蝨
ヒゼンダニ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 08:25 UTC 版)
ヒゼンダニ | |||||||||||||||||||||||||||
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ヒゼンダニ類
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Sarcoptes scabie (Linnaeus) |
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英名 | |||||||||||||||||||||||||||
itch mite |
ヒゼンダニ(皮癬壁蝨、皮癬蜱[1][2]、Sarcoptes scabie)は、ダニ目無気門亜目ヒゼンダニ科に属するダニである。生理的変種が多く、それぞれの種がヒトを含む特定の宿主動物の表皮内にもぐり込み、疥癬などの皮膚感染症を感染させることで知られる[3]。ヒゼンムシ、カイセンチュウとも呼ぶ[2]。
特徴
体長0.2 - 0.4ミリメートルで[4]、メスのほうが大きい。横に平べったい卵型で、体色は半透明の褐色[5]。表皮に細かい横皺がある。第1,2,4脚の先端に吸盤があり、宿主の皮膚を穿孔するのに適した鋏角を持つ。
生態
卵、幼虫、第1若虫、第2若虫を経て成虫となる。卵は産卵後3 - 4日で孵化し、次に産卵するまでの1世代の長さは10 - 14日程度である[4]。幼虫や若虫は皮膚の上や毛包の中で過ごし、成虫になると交尾し、メスは皮膚内に侵入して宿主の皮膚やリンパを食べながらトンネルを掘り、道中で産卵を続ける[3]。メスの寿命は2か月程度で[4]、死ぬまでに約50個の卵を産卵する[5]。
全世界に分布し、自然界や住居、ヒトを含む多くの動物の皮膚下や毛包に生息している。ヒゼンダニ類は宿主特異性が高く、例えばヒトにはヒトヒゼンダニ(Sarcoptes scabie ver. hominis)、イヌにはイヌセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabie ver. canis)が寄生する[6]。ただし、他の動物種との接触によって他種のヒゼンダニ類に感染する場合もある[6]。
人間・他の動物とのかかわり
主にメスのヒゼンダニがトンネルを掘る際に宿主に疥癬を感染させる[3]。トンネルが掘られた表皮はわずかに盛り上がり、膿疱や線上疹ができて激しい痒みに襲われる。重篤化すると免疫不全や全身衰弱を起こす[4]。動物が感染した場合、患部を掻きむしることで脱毛し、黄色ブドウ球菌などの深刻な2次感染が起きる場合があり、死因ともなる[6]。
主な変種
- ヒトヒゼンダニ (Sarcoptes scabie var. hominis)
- イヌセンコウヒゼンダニ (Sarcoptes scabie var. canis)[7]
- ブタセンコウヒゼンダニ (Sarcoptes scabie var. suis)[8]
- ウサギショウセンコウヒゼンダニ (Sarcoptes scabie var. cuniculi)
- ミミヒゼンダニ (Otodectes cynotis)[9]
脚注
- ^ 日本国語大辞典,動植物名よみかた辞典 普及版, デジタル大辞泉,精選版. “皮癬蜱(ヒゼンダニ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2025年4月26日閲覧。
- ^ a b 新村出 編『広辞苑』(第七版)岩波書店、2018年1月12日、2457頁。
- ^ a b c 内川公人「ヒゼンダニの生物学」『IASR』国立感染症研究所 Vol.22 No.10 pp.246-247. 2001-10-31 2021年1月3日閲覧.
- ^ a b c d 松崎沙和子・武衛和雄『都市害虫百科』普及版 朝倉書店 2012年 ISBN 978-4-254-64040-3 pp.201-202.
- ^ a b ジョージ・C. マクガヴァン『完璧版昆虫の写真図鑑:オールカラー世界の昆虫、クモ、その他の虫300科』<地球自然ハンドブック> 日本ヴォーグ社 2000 p.64 Google Books版 p.226. ISBN 978-4529032674 2021年1月3日閲覧。
- ^ a b c 木戸伸英, 「ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)に感染した野生ホンドタヌキ(Nyctereutes procyonoides)の疫学調査、血清生化学的性状および治療法に関する研究」北海道大学 博士論文 乙第6930号, doi:10.14943/doctoral.r6930, NAID 500000919521, 2014-09-25
- ^ 小方宗次, 二宮博義, 「16 イヌセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei var. canis 犬疥癬虫)感染の現況とヒトへの影響(第59回日本衛生動物学会東日本支部大会講演要旨)」『衛生動物』 2008年 59巻 2号 p.107-, doi:10.7601/mez.59.107_2, NAID 110006812794
- ^ 山端輝一, 広池忠夫, 岩渕功, 金子晋, 島田健次郎, 「豚の疥癬症とその治験例」『日本獣医師会雑誌』 1982年 35巻 9号 p.510-515, doi:10.12935/jvma1951.35.510, NAID 130004050807, 日本獣医師会雑誌
- ^ 伊藤直之, 伊藤さや子, 「飼育猫のミミヒゼンダニ感染状況」『日本獣医師会雑誌』 2002年 55巻 3号 p.155-158, doi:10.12935/jvma1951.55.155, NAID 10012317006
関連項目
- キュウセンダニ科 (Psoroptidae) - 表皮には侵入しないが、同じく疥癬の原因となるダニ。
ヒゼンダニ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 09:38 UTC 版)
動物の種類によって、ヒゼンダニの種は異なる。ヒトに対しては、Sarcoptes scabiei var. hominis が関係する。ヒゼンダニの大きさは雌成虫で体長約400μm、体幅約325μmで肉眼では見えない。交尾を済ませた雌成虫は、皮膚の角質層の内部に鋏脚で『疥癬トンネル』と呼ばれるトンネルを掘って寄生する。疥癬トンネル内の雌は約2ヶ月間の間、1日あたり0.5-5mmの速度でトンネルを掘り進めながら、1日に2-3個、総数にして120個以上の卵を産み落とす。幼虫は孵化すると、トンネルを出て毛包に潜り込んで寄生し、若虫を経て約14日で成虫になる。雄成虫や未交尾の雌成虫はトンネルは掘らず、単に角質に潜り込むだけの寄生を行う。 ヒゼンダニ科ヒゼンダニ属イヌセンコウヒゼンダニ Sarcoptes scabiei var. canis ウシセンコウヒゼンダニ Sarcoptes scabiei var. bovis ウマセンコウヒゼンダ Sarcoptes scabiei var. equi ヒツジセンコウヒゼンダニ Sarcoptes scabiei var. ovis ヒトヒゼンダニ Sarcoptes scabiei var. hominis ブタセンコウヒゼンダ Sarcoptes scabiei var. suis ショウセンコウヒゼンダニ属ネコショウセンコウヒゼンダニ Notoedres cati トリヒゼンダニ科トリアシヒゼンダニ属トリアシヒゼンダニ Knemidokoptes mutans キョウセンヒゼンダニ科キュウセンヒゼンダニ属ウサギキュウセンヒゼンダニ Psoroptes cuniculi ウマキュウセンヒヒゼンダニ Psoroptes equi ヒツジキュウセンヒゼンダニ Psoroptes ovis
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