パラレル映画の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 08:02 UTC 版)
サタジット・レイ ムリナル・セン リッティク・ゴトク グル・ダット パラレル映画勃興期の1940年代から1950年代にかけて、パラレル映画はイタリア映画(ネオレアリズモ)とフランス映画(詩的リアリズム)の影響を強く受けていた。サタジット・レイは『大地のうた』製作に際して影響を受けた作品として、ヴィットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』、ジャン・ルノワールの『河』をベンガル文学(英語版)とインド古典演劇(英語版)と共に挙げている。ビマル・ロイの『2エーカーの土地』も『自転車泥棒』の影響を受けている。 チェタン・アナンドの『下層都市』が第1回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞して以来、パラレル映画は数十年間にわたり国際フォーラムや映画祭で数多く上映されるようになった。これにより、インドのインディペンデント系映画製作者の作品は世界中で視聴されるようになった。特に大きな影響力を持ったのはサタジット・レイであり、ヨーロッパ・アジア・アメリカで人気を集めた。彼の作品はマーティン・スコセッシ、ジェームズ・アイヴォリー、アッバス・キアロスタミ、エリア・カザン、フランソワ・トリュフォー、カルロス・サウラ、高畑勲、ウェス・アンダーソンなどの映画製作者に影響を与え、黒澤明など多くの映画製作者が彼の作品を賞賛した。後にサタジット・レイは『カンチェンジュンガ(英語版)』でハイパーリンク映画(英語版)の先駆けとなる物語構造を取り入れている。また、彼が1967年に脚本を執筆した『The Alien』は最終的に製作が中断されたものの、スティーヴン・スピルバーグの『E.T.』に影響を与えたと広く信じられている。さらにアイラ・サックスの『Forty Shades of Blue』は『チャルラータ』のリメイクであり、グレゴリー・ナヴァの『ミ・ファミリア(英語版)』のラストシーンは『大樹のうた』の影響を受けている。この他に『Sacred Evil – A True Story』、ディーパ・メータのエレメント三部作(英語版)もサタジット・レイ作品の影響を受けている。 ムリナル・センはマルクス主義的視点の作品で知られており、彼の作品の多くはカンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭、モスクワ国際映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭、モントリオール世界映画祭、カイロ国際映画祭など主要な映画祭で映画賞を受賞しており、各国の主要都市で回顧上映が行われている。 リッティク・ゴトクは死後に作品が評価されるようになった。1990年代から彼の作品を復元するプロジェクトが始動し、国際展示会及びDVDリリースにより国内外の人々に認識されるようになった。リッティク・ゴトク作品もサタジット・レイ作品と同様にオールタイムベスト映画ランキングに頻繁に選ばれている。サイト&サウンド(英語版)の映画ランキングではサタジット・レイ作品のオプー三部作(1992年、第4位)、『音楽サロン(英語版)』(1992年、第27位)、『チャルラータ』(1992年、第41位)、『Aranyer Din Ratri』(1982年、第81位)が選ばれている。2002年の同ランキングではグル・ダットの『渇き』『紙の花(英語版)』(同率第160位)、リッティク・ゴトクの『雲のかげ星宿る(英語版)』(第231位)と『Komal Gandhar』(第346位)が選ばれている。1998年にはシネマヤ(英語版)の批評家投票ではサタジット・レイのオプー三部作(3作合算で第1位)、『チャルラータ』『音楽サロン』(同率第11位)、リッティク・ゴトクの『Subarnarekha』(同率第11位)が選ばれている。1999年にヴィレッジ・ヴォイスの「世紀のベストフィルム」にオプー三部作(3作合算で第5位)が選ばれ、2005年のタイム誌オールタイム映画100選にはオプー三部作と『渇き』、マニ・ラトナムの『ナヤカン/顔役(英語版)』が選ばれている。1992年にはサイト&サウンドの「オールタイム・トップ10ディレクター」にサタジット・レイ(第7位)、2002年には「偉大な監督」にグル・ダット(第73位)が選ばれている。 スブラタ・ミットラ(英語版)はオプー三部作で撮影監督を務め、彼の撮影技法は世界中の撮影技師に影響を与えた。彼は天井や壁に照明を当て、その反射光で照明効果を得るバウンスライトを得意としており、『大河のうた』でこの撮影技法を取り入れた。この他にサタジット・レイの先駆的な撮影技法として、『Pratidwandi』で取り入れたネガフィルムフラッシュバックとX線撮影が挙げられる。
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