詩的リアリズム
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詩的リアリズム(してき-、仏語réalisme poétique/フランス語から「詩的レアリスム」とも)は、1930年代の一連のフランス映画に適用される語であり、映画運動である。
なお、1840年代のドイツに興った文学的傾向も「詩的レアリズム」(Poetic Realism)または「市民的レアリズム」(Bourgeois Realism)と呼ばれる。
略歴・概要
映画批評家のジョルジュ・サドゥール(Georges Sadoul)によって提唱された一部のフランス映画の定義。表現手法としては、大型セットにおけるスタジオ撮影を基本とし、遠近などに関して誇張を行なう場合が多く、そのため画面上におけるパースペクティブに歪みを生じさせることが多い。主にジャック・プレヴェールによって書かれた作品に多いのも特徴的であると言える。表現技法の特徴から、1950年代における、リュック・ベッソン、レオス・カラックスなど、ヌーヴェルヴァーグを支持するカイエ派を断絶した、旧来の「良質フランス映画」への回帰という点から、「新詩的レアリスム」と呼ぶ傾向もあり、今後の研究が待たれる。
なお、特定のジャンルといえるほど明確ではないが、「たいていはパリを舞台にし、厭世的な都市のドラマを描く。設定は労働者階級であり、しばしば犯罪性に伴われた不幸に終わるロマンティックな物語が伴う」という見解もある。
おもなフィルモグラフィ
- ジャン・グレミヨン 『父帰らず』
- マルセル・カルネ 『霧の波止場』、『陽は昇る』、『北ホテル』、『天井桟敷の人々』
- ジャン・ルノワール 『獣人』、『大いなる幻影』、『ゲームの規則』
- ジャック・フェデー 『外人部隊』、『ミモザ館』、『女だけの都』
- ジュリアン・デュヴィヴィエ 『望郷』
- ピエール・シュナール 『罪と罰』(1935年)
参考文献
- Sandro Bernardi『L'avventura del cinematografo』、Marsilio Editori、ヴェネツィア、2007年 ISBN 9788831792974
- COMOLLI Jean-Louis, « RÉALISME POÉTIQUE, cinéma français », dans Encyclopædia Universalis , consulté le 28 juillet 2019. URL : http://www.universalis.fr/encyclopedie/realisme-poetique-cinema-francais/
- PINEL Vincent, "Réalisme poétique" dans PINEL Vincent, Ecoles, genres et mouvements au cinéma, Larousse, Comprendre et reconnaître, Paris, 2000. p. 184-185
- ジャン・ドゥーシェ『パリ、シネマ―リュミエールからヌーヴェルヴァーグにいたる映画と都市のイストワール』(フィルムアート社)
- 中条省平『フランス映画史の誘惑』(集英社新書)
詩的リアリズム(1848年 - 1890年)
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「ドイツ文学」の記事における「詩的リアリズム(1848年 - 1890年)」の解説
詩的・市民的リアリズムにおいて作家は、大きな社会・政治問題を避け、狭く地域的な郷土の風景と人びとに興味を向けた。全ての小説・戯曲・詩の中心は、一人一人の人間、個人である。詩的リアリズム作品の多くに見られる様式的特長は、耐え難く腹立たしい現実から距離を置くユーモアである。このユーモアによってリアリズム文学は、社会構造の個々の欠陥や弱点を告発するのだが、それが社会構造全般に対して向けられることはない。 初めのうち好まれたジャンルはノヴェレ(短・中編小説)であり、例としてスイスのコンラート・フェルディナント・マイヤーによる『首飾り』、テオドール・シュトルムの『白馬の騎士』などがある。戯曲では『マリア・マグダレーナ』などを書いたフリードリヒ・ヘッベルのみが記憶されている。のちには長編小説(ロマーン)がノヴェレよりも好まれるようになる。長編の作者としては、グスタフ・フライタークやヴィルヘルム・ラーベなどが挙げられる。 リアリズムの二巨頭は、テオドール・フォンターネと、スイスのゴットフリート・ケラーである。ケラーは、『村のロメオとユーリア』のような物語のほか、教養小説『緑のハインリヒ』などを著した。フォンターネは、ジャーナリストとして出発したが、『イェニー・トライベル夫人』や『エフィ・ブリースト』などの小説を書いている。フォンターネはその視野を主人公から広げ、社会小説の域にまで発展させた。 オーストリアでは、マリー・フォン・エプナー=エッシェンバッハやルートヴィヒ・アンツェングルーバーらの牧歌的モチーフや、時代区分の後方にはみ出しているがペーター・ロゼガーらが見られる。
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