パストラル詩とは? わかりやすく解説

パストラル詩(田園詩)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 16:11 UTC 版)

パストラル」の記事における「パストラル詩(田園詩)」の解説

パストラル文学ヘレニズム期ギリシアテオクリトスから始まったテオクリトスの『牧歌(エイデュリオン)』の数篇は田園地方舞台とし(おそらくテオクリトス住んだコス島景色反映しているものと思われる)、牧夫たちの間の会話含まれている。テオクリトスシチリア羊飼いたち実際民俗伝承集めたかも知れないテオクリトスドーリア方言でこれを書いたが、使った韻律は、ギリシア詩で最も有名な形式、つまり叙事詩のダクテュロス・ヘクサメトロスだった。この素さと洗練さのミックスは、後のパストラル詩でも主要な要素となる。テオクリトスの詩は、ギリシア詩人スミュルナビオンen:Bion of Smyrna)やモスコスen:Moschus)に模倣された。 ローマ詩人ウェルギリウスはこの形式の詩を『牧歌』ラテン語適用させた。ウェルギリウステオクリトス以上に理想化した田園生活叙述し、後のパストラル文学好んでその舞台としたアルカディアをはじめてその舞台とした。さらにウェルギリウス政治的なアレゴリー寓意)の要素をパストラル詩に含めたウェルギリウス理想郷都会人間視点であり、都会と田園概念的な対立や、都会田舎絵をめぐる往還みられる。 パストラル詩は、14世紀前くらいからペトラルカ、ポンターノ(en:Iovianus Pontanus)、マントゥアヌス(en:Baptista Mantuanus)といったイタリア詩人たちがラテン語復活させ、その後マッテーオ・マリーア・ボイアルドイタリア語書いたパストラル流行ルネサンス期ヨーロッパ中に広まったスペインでは、ガルシラソ・デ・ラ・ベガ(en:Garcilaso de la Vega)がその重要な先駆者で、そのモチーフ20世紀スペイン語詩人ジャンニナ・ブラスキ(en:Giannina Braschi)がらせた中に見ることができる。フランス指導的パストラル詩人にはクレマン・マロピエール・ド・ロンサールなどがいる。 イギリス最初のパストラル詩はアレクサンダー・バークレー(en:Alexander Barclay)の『田園詩Eclogues)』(1515年頃)で、それはマントゥアヌスの強い影響受けていた。イギリスのパストラル詩の金字塔は、1579年発表されエドマンド・スペンサーの『羊飼いの暦(The Shepheardes Calendar)』(en:The Shepheardes Calendar)である。この作品には1年12ヶ月相当する12エクローグ成り立ち方言書かれエレジー寓話当時イングランドの詩の役割に関する論が含まれていた。スペンサー友人たち偽名登場するスペンサー自身偽名は「コリン・クラウト」)。スペンサーの『羊飼いの暦』は、マイケル・ドレイトン(en:Michael Drayton)の『Idea, The Shepherd's Garland』やウィリアム・ブラウン(en:William Browne)の『Britannia's Pastorals(ブリタニア羊飼いたち)』といった模倣生んだ英語詩で最も有名なパストラル・エレジー(pastoral elegy)は、ジョン・ミルトンケンブリッジ大学学友だったエドワード・キングen:Edward King (British poet))の死に寄せて書いた『リシダス』(1637年en: Lycidas)である。ミルトンがこの形式用いたのは、作家という職業切り開くためと、ミルトン教会職権乱用だと思っているものを攻撃する両方目的からだった。英語詩のパストラル詩は、アレキサンダー・ポープの『牧歌(Pastorals)』(1709年)あたりを最後に18世紀にいったん死滅した。『Shepherd's Week羊飼い1週間)』を書いたジョン・ゲイのようにパロディ化する作家現れる一方でジョンソン博士はその作為性を批判し、ジョージ・クラッブ(en:George Crabbe)はそのリアリズム欠如攻撃して、『The Village)』(1783年)という自作の詩の中で田舎の生活の真実情景叙述しようと試みたそれにもかかわらずパストラル生き残ったマシュー・アーノルド友人詩人アーサー・ヒュー・クラフ(en:Arthur Hugh Clough)の死に送った挽歌『Thyrsis』(1867年)といった作品がそうだが、ジャンルというよりむしろ雰囲気としてだった。

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