ヌクレオチド、アミノ酸、炭水化物および脂肪酸の生合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 06:05 UTC 版)
「代謝」の記事における「ヌクレオチド、アミノ酸、炭水化物および脂肪酸の生合成」の解説
上記の反応により細胞内取り込まれた炭素、窒素、硫黄は豊富に存在している水と化合し、生体高分子の単量体であるヌクレオチド、アミノ酸、糖などの有機物を生合成する。これらの生体高分子のモノマーには前駆体として中央代謝系(解糖系、クエン酸回路)の中間代謝物が用いられることが多い。 核酸 (DNA、RNA) のモノマーであるヌクレオチドはプリン、ピリミジン塩基に五炭糖であるリボースあるいはデオキシリボースの5'位にリン酸が結合している構造をとっている。プリン(アデニン、グアニン)ピリミジン(ウラシル、シトシン)ヌクレオチドはそれぞれ異なる経路にて合成される。まずピリミジンヌクレオチドの合成系は以下のとおりである。 カルバモイルリン酸 + アスパラギン酸 → オロチン酸 リボース5リン酸 + ATP → ホスホリボシル1ピロリン酸 オロチン酸 + ホスホリボシル1ピロリン酸 → オロチジン5'リン酸 (OMP) オロチジン5'リン酸 → ウリジン5'リン酸 (UMP) + CO2 ウリジン5'リン酸(UMP) + ATP → ウリジン三リン酸 (UTP) ウリジン三リン酸 + グルタミン → シチジン三リン酸 (CTP) リボース5リン酸はペントースリン酸経路より生じている。またアスパラギン酸は後述するアミノ酸合成系より生じている。カルバモイルリン酸はアミノ酸とリン酸を基質としてカルバモイルリン酸合成酵素により合成される。プリン合成系については以下のとおりである。 リボース5リン酸 + ATP → ホスホリボシル1ピロリン酸 ホスホリボシル1ピロリン酸 + アスパラギンあるいはグルタミン酸由来のアミノ基 → ホスホリボシルアミン ホスホリボシルアミン + グリシン + ATP → グリシナマイドヌクレオチド グリシナマイドヌクレオチド + グルタミン由来アミノ基 + ATP + ホルミルTHFA由来のアルデヒド基 → 5アミノイミダゾールリボヌクレオチド 5アミノイミダゾールリボヌクレオチド + ATP + CO2 + アスパラギン酸由来のアミノ基 → 5アミノイミダゾール4サクシノカルボキサミドリボヌクレオチド 5アミノイミダゾール4サクシノカルボキサミドリボヌクレオチド + ホルミルTHFA由来のアルデヒド基 → イノシン5'リン酸 (IMP) イノシン5'リン酸 + アスパラギン酸 + ATP → アデノシン三リン酸 (ATP) イノシン5'リン酸 + グルタミン + ATP → グアノシン三リン酸 (GTP) 上記の過程で合成されたリボヌクレオチド (RNA) はリボース部位が還元を受けることによってデオキシリボースとなり、デオキシリボヌクレオチド (DNA) が合成される。また、DNAにおいてアデニンと相補的塩基対を構成するチミンはピリミジン塩基でありながらはウラシル、シトシンとは異なる経路にて合成される。チミン合成系には葉酸およびコバミド(ビタミンB12の補酵素形)を要求することがわかっている。また、上記の新生経路(de novo経路)のみならず、使用済みの核酸を再利用するサルベージ経路も存在する。 タンパク質を構成する20種のアミノ酸については各アミノ酸の炭素骨格から生合成経路が決定される。アミノ酸は炭素骨格によって以下の『族』に分類することが可能である。 グルタミン酸族:グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、プロリン アスパラギン酸族:アスパラギン酸、アスパラギン、リシン、メチオニン、スレオニン、イソロイシン 芳香族:トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン セリン族:セリン、グリシン、システイン ピルビン酸族:アラニン、バリン、ロイシン なお、それぞれの族の前駆体および由来する代謝系は以下のとおりである。 グルタミン酸族:ケトグルタル酸(クエン酸回路) アスパラギン酸族:オキサロ酢酸(クエン酸回路) 芳香族:ホスホエノールピルビン酸(解糖系:EM経路、ED経路) + エリトロース4リン酸(ペントースリン酸経路) セリン族:3ホスホグリセリン酸(解糖系:EM経路、ED経路) ピルビン酸族:ピルビン酸(解糖系:EM経路、ED経路) なお、上記の例は中央代謝系を基準にしたものであり、中央代謝系以外に回路を所持している、例えば植物などでは芳香族はシキミ酸経路、セリン族はカルビン - ベンソン回路由来のグリセリン酸リン酸より生合成を行う。なお、ヒスチジンのみが上記の族に属さずペントースリン酸経路由来のリボース5リン酸より合成される。 すべての前駆体は中央代謝系に由来するものであり、理論上、糖さえ摂取すればすべてのアミノ酸を合成できるはずだが、マウス、ヒトにおいては必須アミノ酸といわれる一群のアミノ酸を経口摂取する必要がある。それらは芳香族、アスパラギン酸族およびピルビン酸族のアミノ酸である。 糖については、解糖系の逆行である糖新生系にて合成される。また、ペントースリン酸経路においては多種多様な糖が合成される。また還元的ペントースリン酸経路と呼称されるカルビン - ベンソン回路においても同様である。 脂肪酸はアセチルCoAを基質として脂肪酸合成経路にて合成される。アセチルCoAは解糖系に由来するものであるが必要な還元力にはNADPHが使用される。NADPHはペントースリン酸経路より供給され、後述するが異化経路と同化経路の密接なかかわりをここにも見ることができる。
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