デヴィッド・ブレークリーの殺害
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「ルース・エリス」の記事における「デヴィッド・ブレークリーの殺害」の解説
1953年、ルース・エリスは「キャロル・クラブ」(Carroll Club)のマネージャーに出世していた。彼女にはホステスとしての才覚があった。この時点で、彼女は社交界で多くの名士と知遇を得、多くのひいき客らから惜しみなく高価な贈り物を受けるようになっていた。ルースは、レーシングドライバーのマイク・ホーソーン(Mike Hawthorn)を介し、3歳年下のデヴィッド・ブレークリーに会った。やはりレーサーであるブレークリーは、パブリック・スクール出で育ちの良い身分だったが、また大酒飲みでもあった。幾週間もしないうちにブレークリーは、別の女性メアリー・ドーソン(Mary Dawson)と婚約しているにもかかわらず、クラブの階上のルースのフラットに引っ越してきた。 ルースは4度目の妊娠をしたが、ブレークリーによって示された、ふたりの関係への傾倒の程度に自分が返礼することができないと感じて、その子を流産した。 ルースはその後、デズモンド・カッセン(Desmond Cussen)とも関係を持つようになる。1921年・サリー(Surrey)出身のカッセンは、英国空軍パイロットとして第二次世界大戦中、ランカスター爆撃機を操縦した経歴を持っていた。空軍を1946年に退役して会計士となったが、その後、家業のロンドンおよびウェールズに販売店をもつたばこ卸売小売会社(Cussen & Co.)の重役となった。裕福な身分の人物であった。 しかしブレークリーとの関係も続き、彼がルースの顔でクラブでのツケ遊びを続けていることがオーナーに知られて、ルースは雇われマネージャーの地位を追われた。ここに至って彼女はオックスフォード・ストリート(Oxford Street)の北、デヴォンシャー・ストリート(Devonshire Street)のグッドウォード・コート(Goodward Court)20番地に、カッセンの情婦となって彼と住むようになった。 ここに至ってもルースとブレークリーとの関係はずるずると続いており、かつ二人が他の人々と関係を持ち続けるにつれてますます暴力的に、不幸になった。ブレークリーはルースに結婚しようと申込み、彼女は同意したが、ルースはブレークリーとのいさかいで腹部を殴打されたせいで流産したのち、1955年1月にもう1人の子を亡くした。 1955年4月10日、イースターの日曜日、ルースはカッセンの自宅から、アンソニーとキャロル・フィンドレーター(Anthony and Carole Findlater)の自宅、ハムステッドのタンザ・ロード(Tanza Road)29番地のフラットまでタクシーに乗ったが(ただし、後述のルース本人による告白では、自動車で彼女を送ったのはカッセンだったという)、そこに彼女はブレークリーが居るのではないかと疑った。ルースがそこに到着したとき、ブレークリーの車が走り去った。それで彼女はタクシー料金を支払い、ハムステッドのサウス・ヒル・パーク(South Hill Park)の4階建てのパブリック・ハウス、マグダラ(Magdala)まで、4分の1マイルを歩いた。外にブレークリーの車が駐まっていた。 午後9時30分ころ、デヴィッド・ブレークリーと友人クライヴ・ガネル(Clive Gunnell)が姿を現した。ルースがマグダラのとなりの新聞雑誌販売業者、ヘンショーズ・ドアウェー(Henshaws Doorway)から足を踏み出したとき、ブレークリーが、舗道で待っている彼女の横を通った。彼女が「こんばんは、デヴィッド」("Hello, David,")と声をかけ、それから「デヴィッド!」("David!")と叫んだが、彼はルースを無視した。 ブレークリーが車の鍵をさがしたとき、ルースはハンドバッグから.38口径スミス・アンド・ウェッソン・ヴィクトリー・モデルのリボルバーを取りだし、ブレークリーに向けて発砲した。1発目は外れた。ブレークリーは避けようと車の傍を回りこんだが、ルースは2発目を発砲、銃弾を受けたブレークリーは舗道に倒れた。ルースは彼を見下ろすように立ちはだかり、さらに彼に向けて3発を発射した。1発はブレークリーの背から2分の1インチも離れていないところから発射され、彼の皮膚に火薬による火傷をのこした。 ルースは催眠術にかかったように死体を見下ろして立ちはだかっているところを見られた。目撃者らにより伝えられるところによれば、彼女がリヴォルヴァーの最後の6発目を発射しようとする幾つかのカチッという音がはっきりと聞こえ、それから最後には地面に発射した。発射された弾丸は路面の跳弾となり、マグダラまで歩いていた通行人グラディス・ケンジントン・ユール(Gladys Kensington Yule)(53歳)の親指の付け根を負傷させた。 ショック状態のルースは、ガネルに「警察を呼んでくださる、クライヴ?」("Will you call the police, Clive?")と訊ねた。彼女はただちに非番の警察官アラン・トンプソン(Alan Thompson)(PC 389)によって逮捕された。警官はまだ煙の出ている銃を受け取って上着のポケットに入れた。ルースは「わたしは罪を犯しました、すこし混乱しています」と語ったという。 ルースはハムステッド地区警察本署(Hampstead police station)に連行された。彼女は落ち着いており、明らかに酒や薬物の影響を受けていないように見えた。彼女は警察に詳しい告白をし、殺人罪で逮捕された。 ブレークリーの死体は病院に運ばれたが、腸、肝臓、肺、大動脈および気管に達する多数の弾丸による傷が認められた。 この日の午後11時30分時点で、ハムステッド地区警察本署でのルース・エリスの尋問のあいだじゅう、あるいは供述を取るあいだじゅう、3人の警察官吏が詰めていた。デーヴィス警部(Detective Chief Inspector Davies)、ジル(Detective Inspector Gill)とクロフォード(Detective Inspector Crawford)の両警部補である。
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