チャタル・ヒュユクの壁画とレリーフ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/09 06:26 UTC 版)
「チャタル・ヒュユク」の記事における「チャタル・ヒュユクの壁画とレリーフ」の解説
生き生きとした壁画が居住区のいたるところ、部屋の内側や壁の外側で発見される。チャタル・ヒュユクでは、前述したように壁に上塗りを繰り返したので、壁に彩色をしてある部屋の上塗り層の断面には塗色面が何層にもなっている。壁画はそのたびに上塗りされたため一時的にしか見られなかったことになる。反面そのために壁画が腐食せず良好に保存されて今日でも見ることができるのである。壁画は細かい毛のブラシを用いて塗料を塗って描かれたと考えられている。塗料の原料は、赭土、藍銅鉱、辰砂、孔雀石、方鉛鉱、マンガンなどアナトリアで入手できる鉱物から作られた。地は、白かクリーム色で、壁画には赤や赤褐色が主に用いられたが、黒、黄色、藍色、青、灰色が使われている例もある。多くの壁画は柱と柱の間におさまる大きさであったが、例外的におおきな壁画も描かれた。人や動物を描いたもの、幾何学文様、真っ赤に塗られたもの、人の手を並べて描いたものなど描かれた主題は多様であった。層の異なる二つの儀式が行なわれたと推察される部屋で、狩猟の様子を描いたと思われる壁画が発見されたが、北側の壁に2mもの巨大な赤い雄牛を描き、その周りに何人かがヒョウの毛皮のふんどしをして踊っている姿を描いていた。描かれた人物は多くは男性であり、体を赤く塗った姿で表現されていた。この壁画より古い層のV層では、壁四面を使って、いのしし、鹿、熊、狼、オナガーと呼ばれる野生のロバ、ライオンやそのほかの動物を描いた壁画が発見されている。研究者たちは、狩猟の光景ではなくミケーネ文化に見られる儀式や現在の闘牛のような動物を使った祭りのような象徴的なものを描いたと推察している。第III層では、部分的であるが犬のような動物を使って男性の狩人が牡鹿を矢で射ている絵が発見されている。VI層からは、アシと筵でできた納骨堂に織物がしかれ目のくぼんだ頭骨が置かれている絵が発見され、死者に関して何かを表す絵であるということ以外わかっていない。 多くみられるのは狩猟をしている男性たちがペニスをいきり立たせている場面である。また現在では、絶滅しているバイソン類を赤く描いていることもある。また、頭のない人間にワシやタカなどの猛禽類が飛びかかるように舞い降りてくる場面も描かれる。この壁画の猛禽類は、なぜか人間の足をもっているものがあり、儀式の際に鳥の姿に扮装した祭司の間に頭のない遺体が置かれている様子を描いていると考えられている。また、死体の処理の方法としてシロエリハゲワシなどに死体の肉をついばませていたことを表しているのかもしれない。壁には動物の頭、特に牡牛のものが多く、牡牛の頭骨や角を芯にして土で復元するように塗り固めているものがみられる一方、牡牛や牡鹿の頭が取り付けられている例もある。動物の頭像は、3個、5個、7個といった単位で低い基壇や壁にとりつけられたり、新しい時期の角がついたささげ物を置くのに使用した台と似た土柱に取り付けられることもあった。このような動物の頭像で、特に牡牛の角は男性の神格を表しているとかんがえられている。一方で、第Ⅶ層で発見されたようなヒョウの壁画や乳房の模型には、土偶ともに地母神や出産の女神を表していると考えられている。 背景にチャタル・ヒュユクから140kmの位置にあるハッサン火山ないしHasan Dağ火山の二つの峰を背景に集落の様子を描いているものもあり、世界最古の地図ないしは風景画とみなせるかもしれない。
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