カプセルの輸送と分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 01:00 UTC 版)
「はやぶさ (探査機)」の記事における「カプセルの輸送と分析」の解説
「惑星物質試料受け入れ設備」を参照 発見されたカプセルは、ウーメラ施設内のクリーンルームで爆発の危険性がある装置と電子回路を取り除いた後、窒素を満たしたポリエチレンの袋に入れた上で内箱に収納。さらに衝撃吸収用のボールを並べた免震箱に入れて熱シールドと共にチャーター機で日本に輸送され、17日深夜に羽田空港に到着した。18日2時にトラックでJAXA相模原キャンパスのキュレーションセンターに搬送された。カプセルはX線断層撮影 (CT) 検査を行うため一旦JAXA調布キャンパス飛行場分室に移送され、検査の結果容器に亀裂などがないことが確認された。昼夜連続でカプセルの清掃が行われ、20日にはサンプルコンテナがクリーンチェンバーに導入された。22日にサンプルコンテナが開封され、内部から微量のガスが採取されたが、大部分が地球大気由来の気体であった。24日には、サンプルキャッチャーA室の開封作業に着手した。 7月5日、JAXAはカプセル内のサンプルコンテナから肉眼で確認できる直径1ミリメートルほどの微粒子十数個と、サンプルキャッチャーA室の内壁から直径10マイクロメートルほどの微粒子2個を顕微鏡で確認したと発表した。その後、調査範囲を広げるにつれて発見される粒子の数も増えていった。カプセル内の微粒子はマニピュレーターで1粒ずつガラス容器に移して詳細に検査する予定だったが、事前に行ったリハーサルより粒子が小さく効率が悪かったことから、電子顕微鏡で観察できるサイズのテフロン製ヘラと純窒素チャンバーを開発し、地球大気による汚染を遮断した環境下で容器の壁面をこすって微粒子を採取するようにしたところ、10マイクロメートル以下の微粒子を約3,000個捕獲することができた。 11月16日までにA室内から回収した微粒子のうち約1,500個が岩石質であった。回収された微粒子が地球上で混入したものなのか、イトカワ由来なのかはキュレーションセンター内での簡易分析だけでは判断できないと考えられていたが、X線分光分析の結果、組成が地球上の岩石では見られないLL4-6コンドライト隕石の組成と一致した。イトカワの観測結果から、イトカワはLLコンドライトと近い物質であると推定されていたことから大部分がイトカワ起源と判断され、11月16日に公表された。12月7日にサンプルキャッチャーB室を開封した。 テフロン製ヘラによる採取では、微粒子がヘラに付着して取れなくなってしまうことから、サンプルキャッチャーをひっくり返して振動を与え、合成石英ガラス製の円盤に粒子を落下させる方法(自由落下法)が考案され、大きなもので300マイクロメートルを超える粒子を回収することができた。また、ガラス円盤に付着した試料は静電制御によるマイクロマニピュレーターによりひとつずつ拾い集められた。2013年3月15日までに400個ほどの粒子が回収され、元素組成によってカテゴリー別に分類され1つずつ保管されている。回収した粒子は初期分析のため各研究機関に配付された他、NASAや公募によって決まった各国の研究機関でより詳細な分析を行い、さらに一部のサンプルは分析技術の進歩に期待して保存する予定である。 粒子の初期分析は当初予定の8月以降から9月以降、さらに12月以降へと延期され、ようやく2011年1月21日にSPring-8で最初の初期分析が始められた。3月にはアメリカで開かれた第42回月惑星科学会議で初期分析の中間報告が発表された。 回収したサンプルの初期分析結果は、イトカワおよびJAXAホームページの特集「小惑星イトカワの真の姿を明らかに」(2011年12月27日公開)を参照のこと。
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