エジプト国鉄への新車輸出車両
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「国鉄10系客車」の記事における「エジプト国鉄への新車輸出車両」の解説
日立製作所は、1960年にエジプト国営の鉄道車両メーカー・SEMAF社(アラビア語版)と鉄道車両製造に関する技術協力協定を締結。その協定により、エジプト国鉄向けの客車をエジプト国内にて製造する計画が立てられ、その際に日本の国鉄軽量客車の技術を使用することとなった。計画にあたっては、まず最初に「サンプルカー」として日立製作所が1両を輸出し、その車両をもとにSEMAF社が同様の車両を大量に増備するという方式が採用され、1962年の秋に日立製作所にて「サンプルカー」1両が落成。以下にこの車両の特徴を述べる。 車体は長さ23,030 mm、幅2,900 mm、高さ4,318 mm。屋根上には日本国鉄の10系などと同様、ガーランド式ベンチレータの通風機が並ぶ。 車内の座席配置は日本国鉄の10系と同様の4列(2+2)席が並ぶ形態で、座席は砂漠地帯での清掃を容易とするビニール素材貼り。天井には、扇風機10組とガーランド式ベンチレータ装置の通風板11枚を設置している。 側窓は一段下降式で、車内側に木製の上昇式ブラインドを内蔵している。 一両につき便所は「洋式」のものと「アラブ式」(和式と似たしゃがみこみ式)のものをそれぞれ一つずつ、車端部に設置。便所が設置されていない側の車端部には荷物室と車掌室が配置されている。 台車は上記のタイ国鉄向け客車と同様、TR50の系統ではなく、ウイングばね式のDT21の系統のものを採用。エジプト国鉄の保線状況に適応しつつ、同時に良い乗り心地も得られる設計となっている。 この計画は成功し、予定通りこの車両はエジプト国鉄の標準型客車となった。技術提供を受けたSEMAF社は2000年代までの長きにわたりこの客車を作り続けたため、途中で数回、細かな部分の変更が行われた。以下に主なそれを述べる。 車端部の形状が少しながら変更され、よりすっきりとした見た目となった。 側面窓が下段上昇および下段左右開閉・上段固定の二段仕様へ変更。また、従来は一段下降窓として落成した車両のなかにも、途中より下段上昇・上段加工の二段窓へ改造された車両がある。しかし、二段窓の窓枠が事故や火災など緊急時に乗客が窓から避難する際の障害物となり、2002年にこの系列の客車にて乗客が持ち込んだガスボンベが爆発した際には、窓から避難しようとした乗客がうまく車外へ避難できず、そのうえ車両間で炎が猛烈な勢いで広がり多くの車両が全焼したことで、結果的に380人以上の乗客が死亡するという大きな事故も発生している(事故の経過はエル・アッヤート列車火災 (2002年)(英語版)を参照)。 1980年代以降に製造された車両は、台車がハンガリー・ガンツが設計した軽量コイルばね台車に変更されている。 一部の車両は都市近郊列車で運用するため、車内の座席をロングシートへ改座。 これらの車両は、現在もエジプト国鉄の普通列車などの主力として活躍しているが、初期に導入された、日立製作所の設計を色濃く残す車両の多くは老朽化のため引退している。 比較的古い車両台車はDT21の系統 比較的最近に製造された車両台車がガンツ設計のものへ変更されている 走行写真
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