インド離脱の論評、分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 02:09 UTC 版)
「地域的な包括的経済連携協定」の記事における「インド離脱の論評、分析」の解説
インド離脱については、ウォールストリートジャーナルのコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」は、「アジアのRCEP、インド離脱で張り子の虎に」の見出しのもと、「中国にとって環太平洋経済連携協定(TPP)の代わりになる可能性を秘めたものであり、マンモスと評されていたが、マンモスよりもネズミに近いものに向かっている」と論評した。 日本経済新聞電子版2019年11月16日に掲載されたシンガポール国立大学リー・クワンユー公共政策大学院のJ・クラブツリー准教授は「インドの離脱姿勢は、歴史的な大失態としか言いようがない」「もちろん、離脱姿勢は、譲歩を引き出すために強硬に臨むという交渉戦術かもしれない。ただ、RCEPがインド抜きで前進し、経済的な指導力を発揮したいというインドの目標に大きな疑問が生じる公算のほうが大きそうだ。」と評した。 東洋経済は、次のように状況をまとめている。「RCEPの交渉開始時に、中国が提唱したASEAN+日中韓に対抗して、日本がインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた16か国による交渉を提唱し、かつ、TPP並みの高い自由化を求めていたとし、中国、インドが消極的であった。これが、米中摩擦の激化によって中国はRCEPに活路を求め、交渉に積極的になったのに対し、インドはなお消極的であったが、最近のインドはRCEP交渉にがぜんやる気を見せてTPP並みとはいかずとも日本政府も納得できる水準で交渉はまとまり、2020年2月までには妥結が可能と思われた。それがドタキャンと表現するインドの姿勢の急変で合意の見通しが白紙となった。12月には安倍首相のインド訪問が予定されており、日本がインドにどんなボールを投げるかを参加国は注視している。一貫してインドを重視してきた安倍首相のスタンスからすれば、インドのRCEP交渉復帰に向けて経済協力などさまざまな手土産を持参するとみられる。(要約)」。 安倍首相のインド訪問については、2019年12月15日から3日間の日程であると日印外交筋が19日、明らかにしたとの報道がある。インドの離脱については、「関税引下げ問題というより、関税引き下げに見合う専門職業の相互承認協定(MRA)等インドの関心事項に十分な手当てをしてきたとは言えないことが原因であり、MRAについてASEAN+6のなかで最も消極的なのはおそらく日本であり、もし日本が、RCEPにMRAを重要な要素として取り入れる努力をするとコミットするなら、インドは交渉に戻ってくるであろう、専門職業の移動の自由でさらなる譲歩ができないか再検討すべきである、との指摘がだされている。この指摘は更に、「インド抜きではRCEPが瓦解するとの見通しもあるが、むしろインド抜きで交渉がラスト・スパートに入るであろう。中国は是が非でもRCEP交渉を来年中に纏めようとするだろう。中国はインドの参加よりも、RCEPの交渉妥結を重視したわけであるが、今後、日本の参加よりもRCEPの交渉妥結を重視するかもしれない。」としている。 ジェトロのビジネス短信は、11月11日付の複数の地元紙が報じたとして「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉からインドが離脱したとしても、2020年の協定署名を目指す残り15カ国が妥結すれば、フィリピン経済にとってプラスとなる、とフィリピンの複数の専門家や政府高官、企業が主張している」と伝えた。 日本経済新聞電子版2019年11月27日は、ニューデリー発として「国内景気の減速でモディ政権の支持が急落し、農家がさらに離反することへの焦りが背景にある。大票田に目配りする一方、対外向けには交渉に残る」との記事を掲載し、「まだインドから交渉を離脱するという正式な通知は何も来ていない」。インドネシア政府のRCEP交渉筋は首をかしげる。もし本当に離脱するなら窓口である同国政府に外交文書で伝える必要があるが、首脳会合後も連絡がなく、「インドは来年も交渉に参加する可能性が残る」とみる。」との記事を掲載し今後まだ事態が流動的であることを報道した。
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