アイドル声優
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 21:30 UTC 版)
アイドル声優とは、第3次声優ブームと称されていた1990年代半ばごろから出てきた俗称。このころにはボイスアイドルとも呼ばれた。 本業にとどまらず、歌を通してそのCDを発売、ライブを開催するなど歌手活動をする、声優専門誌や漫画雑誌などのグラビアに登場する、写真集やイメージビデオを発売する、CMに出演する(これはいわゆる「Web CM」を含む)などといったアイドル的活動を行う声優を指すことが多い。 戦前に遡るとラジオドラマで活躍した飯島綾子も流行歌・童謡などレコードを何枚か出していて、日本舞踊家でもあった。その後の横山智佐、氷上恭子、國府田マリ子、宮村優子など、1990年代にデビューしそうした活動を行う声優らも、その多くは前述の声優養成所で養成された声優が、それ以前にアイドルとしての活動経験/アイドルからの転進組などではない。しかし、こうした声優がマス・メディアに広く露出をしたことによって、1990年代の声優人気の受容は、それ以前の受容とは異なる状況を呈したが、特にこの時期から養成所を出たばかりの新人声優の報酬を安定させることを目的のひとつに声優の活動するメディアの拡大が計られ、その商業的な戦略のひとつとして様々な媒体を介した声優の顔出しがはじまったものとも推測されている。 2010年代半ば以後には宮野真守、平野綾、内田真礼、竹達彩奈、戸松遥、三森すずこ、佐倉綾音、逢田梨香子、斉藤朱夏 、小倉唯などのように、顔出しでCMに出演する例や、バラエティ番組やクイズ番組のゲストとして出演する例、マニア向けでない一般の漫画雑誌などでのグラビアに登場する例が増加するようになっている。 さらには、アイドル主体のアニメ・ゲーム作品における担当アイドル(キャラクター)を、そのまま実際のライブで再現する声優ユニットも登場し、専業のアイドルと比べても遜色のない例も存在する。例えばアイドルマスターシリーズ(THE IDOLM@STER・アイドルマスター シンデレラガールズ・アイドルマスター ミリオンライブ!・アイドルマスター SideM)、ラブライブ!シリーズのμ's・Aqours、Wake Up, Girls!、プリパラのi☆Risなどがある。 特に「ラブライブ!」シリーズのキャストは歌唱力やダンス力を重視したオーディションにより、それまで声優経験が皆無であった(女優などの他業種出身のメンバーに加えて、芸能界での活動経験自体がなかったメンバーもいる。楠田亜衣奈、降幡愛などがこれに該当)起用者も多くいる。 実際、i☆Ris、Wake Up, Girls!のほかに22/7などのように、「声優とアイドルの両立を謳うグループ」が増加するようになっている。 2020年代になっても上智大学のミスコン優勝の鳥部万里子、ミス日本コンテスト2020・ミス着物に選ばれた青木胡杜音など、ミスコン参加者など容姿を評価された人物が声優を目指す例もある。 こうした風潮について、浅川悠が自身のブログで、アイドル化が進んでいるとも言われる声優界に苦言を呈し、関連して桑島法子は「アイドル声優は旬を過ぎたら使ってもらえなくなる」と述べているなど、演技とは関係の無い評価基準に疑問を呈す業界人も存在する。実際、1990年代から2000年代にかけての椎名へきるは歌手としての活動で人気を博し、相当数のコンサート公演を全国を巡業していたが、アフレコや吹き替えの仕事から遠ざける要因となり、アニメのレギュラー出演は年間で数本に過ぎない状況で、同業の職業声優を含むアニメ制作者の間でも声優として異端視されていたことが知られる。花守ゆみりなどはインタビューで自身についてアイドル声優に見られたくないと述べている。浅野真澄がパーソナリティを務めた低俗霊DAYDREAM 深小姫のMIDNIGHT DREAMではしばしばアイドル声優に対する批判がなされていた。専門学校などでもそうしたアイドルを育成する的なニュアンスも押し出して生徒集めをしているところが少なからずみうけられるが、第一線で活躍している実際のアイドルたちは天分に恵まれた上で競争にももまれ、トレーニングを重ねており、こうしたアイドルたちと、学校に通ったくらいでの自分とライバルというのは、あまりにおこがましいと指摘されている 一方で、やまとなでしこ結成時のインタビューで堀江由衣は声優になってからアイドル的な仕事があって驚いたというが、アイドルについてはその人自身に魅力があるわけで見てるだけで楽しくなれる、元気になれる存在とし、「それを悪く言うのって、変だと思う。見る人の心を潤す為の仕事をしていて、そうならない方が困るんじゃないかな」と見解を述べている。芹澤優のように声優であることにもアイドルであることにもプライドを持ち、両立していると自認している者もおり、中川亜紀子もデビュー当初アイドル的な売り方がなされており、彼女はこの事にはなにかと批判的であったが、「今となっては『なんて贅沢なことを!』と思いますけど」と当時を振り返っている。
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