黒石の十三塚

国指定文化財等データベース

黒石の十三塚

名称：	黒石の十三塚
ふりがな：	くろいしのじゅうさんづか
種別：	信仰に用いられるもの
員数：	13基
指定年月日：	1993.12.13(平成5.12.13)
所有者：
所有者住所：
管理団体名：
備考：
解説文：	わが国の各地には塚に対して特別の信仰を寄せる習俗がみられる。十三塚もその一つで、一三基の塚が並んでいるものに対して命名されたものである。十三塚については早くから研究者の注目するところとなっており、供養塚、境界指標、修法壇などの性格が指摘されているが、近年の研究成果では十五世紀から十六世紀にかけて成立展開した十三仏信仰との関連が想定されている。 　黒石の十三塚は岩手県水沢市黒石町字下柳の北上川左岸に位置し、標高約五〇メートルの丘陵稜線上に北西方向から南東方向にかけて緩やかなＳ字を描いて並ぶ。この地は通称丹波山といわれ、元黒石寺【こくせきじ】領の黒石町字山内と字下柳の境にあって、往古の黒石寺の領域境となっている。『江刺郡誌』丹波山条には「黒石村にあり、往昔丹波某氏の拠れる地にして、鶴ケ城主正端入道越前守の滅ぼすところとなる。現に十三塚あり」と書かれる。また、十三坊長根ともよばれ、かつて四八坊あった黒石寺の坊のうちの一三坊を弔った跡とも伝えている。 　この塚に対する禁忌は厳しく、塚を掘ることはもちろん、踏んだり登ったりするなど粗末に扱うと病人や怪我人が出ると強く戒められていた。また、現所有者の千葉家は代々この地に居住する旧家であり、約二五〇年前に黒石寺より嫁を迎えた折に、お歯黒料として十三塚を含む山林が黒石寺より同家に与えられたものとの伝承がある。 　この十三塚は、昭和五十七・五十八年度に神奈川大学日本常民文化研究所が実施した全国調査によって判明した、一三基が揃って残る一七か所の一つであり、一三基の塚のうち四基はそれぞれ一部が削平されているものの、全体としての保存状況は良好である。この折の実測調査によれば、塚の総延長は一六九・八メートル。各々の間隔は最長のもので一七・八メートル、最短のもので一二・三メートルとなっており、その間には五・五メートルもの幅の違いが見られることが明らかとなった。 　この調査では、こうした計測の結果や個々の塚の立地条件などから、この十三塚は最初に北西側から数えて一・七・一三番目の塚（以下、北西方向から一号塚・二号塚と順によぶこととする）の位置を決め、ついでその間の塚を築いていった可能性が指摘されており、この種の塚の構築方法を知る上で貴重な事例となっている。 　一三のそれぞれの塚の規模は、東西方向の長さは最大で七・五メートル、最小で四・五メートルを数え、南北方向の長さは同じく七・八メートルから最小四・五メートルの範囲、高さは最高で一・七メートル、最低で〇・八メートルとなっており、この平均値は東西約五・八メートル×南北約六メートル、高さ約一・二メートルとなる。 　塚の形態は円形を基本として不整円形・楕円形、一部に方形のものも見られる。 　一三基のうちで最も大きいものは七号塚で、その規模は七・五メートル四方、高さ一・七メートル、塚の形は方形を呈している。 　このように黒石の十三塚は、それぞれの塚が平均的な大きさのなかにあるものの中央の七号塚が最も大きく、その形も他の塚がいずれも円形状を呈しているのに対してこの塚だけが方形を呈しているなど、中央の一塚が大きい十三塚築造の本来の形をうかがわせる構造となっている。 　なお、いずれの塚も盛土だけで、葺石やその他の施設などは見られない。 　以上のように、黒石の十三塚は一三基が平均的な大きさを示していることや、その構築方法が推測される貴重な事例であること、厳しい禁忌に守られてその保存状況も良好であることなどの特色を示しており、わが国の十三塚の成り立ちや特色を考える上で貴重なものであり、またわが国の庶民信仰の様相を示すものとして重要である。 　よって、重要有形民俗文化財に指定しその保存を図るものである。

重要有形民俗文化財のほかの用語一覧

信仰に用いられるもの：	阿弥陀寺の湯屋 附 旧鉄湯釜 旧鉄湯舟残欠  高山祭屋台  高岡御車山  黒石の十三塚
年中行事に用いられるもの：	七夕人形コレクション  上州の小正月ツクリモノ
民俗知識に関して用いられるもの：	久賀の石風呂

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