「萌え」の成立・普及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 04:22 UTC 版)
「萌え」という言葉が広まったのは1990年前後であると推測されており、その起源に関する主要な説も概ね1980年代末から1990年代初頭頃に集約されている。一方で「萌え」の現代的用法の成立・普及については様々な説や主張があり、その起源や成立の過程は明らかではない。これは、「萌え」が大筋では当時のネット(パソコン通信)上のコミュニティ、またはそれらと構成人員の多くが共通する周辺コミュニティで発生したものと推察される用語・用法であることから、「成立から流行に至る過程」や「“萌え”という単語の意味・概念」について客観的な根拠や物証、統一された見解を呈示することが困難であり、また、それらが拡散することで世間に認知され普及するに至った状況を分離せず、多数の論者が「個人的に支持する作品やコミュニティにまつわる説」を起源や語源などとして主張してきたため、結果的に多数の説が乱立することになっている。 語源にまつわる説の一つとしては、1980年代末頃にパソコン通信のチャットで「燃え燃えー」からの変換遊びで発生したというもので、誤変換や語呂合わせを由来に、それを面白がって広まったとするものがある。当初は異性・小動物等の愛玩的対象に対して熱烈にのめり込み、恋愛感情や性的欲求に近い感情が「燃え上がる」という意味のスラングから来たものであるという解釈である。 他方、キャラクターの名前が由来であったとする説も多い。おたく評論家岡田斗司夫は、NHK教育テレビ番組『天才てれびくん』の枠内で1993年に放映されたSFアニメ作品『恐竜惑星』のヒロイン「萌」を語源とする説を挙げており、これが有力な説であるといわれている。ただし当該作品の制作サイドの中心人物の一人であった金子隆一は自著において、当該作品の発表以前に既に「萌え」概念は存在しており、この説は事実ではないと主張しており(ただし、金子はそれを直接確認してはいない)、また岡田がヒロインの名字を誤って記述していることも指摘している。 他に出版物で確認できるものには、精神科医の斎藤環が友人から教わった知識として紹介した、1994年の漫画『美少女戦士セーラームーン』第3期シリーズから登場したキャラクター「土萠ほたる(ともえ ほたる)」を語源とする説がある。土萠ほたるの儚げな印象や不幸な境遇は、放送当時のファンの心を揺さぶり、ファンの間で「萌え」の対象にもなった。 他には、漫画雑誌『なかよし』に連載されたあゆみゆいによる1993年の少女漫画『太陽にスマッシュ!』を起源として挙げる説や、1980年のテレビアニメ『伝説巨神イデオン』の熱心なファンたちが雑誌『ファンロード』の投稿欄で使い始めたという説もある。 実業家の武井信也は、自分が高校生の頃に主催していたパソコン通信のコミュニティーで発祥し、パソコン通信を介して伝播していったものであるとする説を主張している。武井の主張によれば、元はコミュニティーの参加者が仲間に見せるために配信した創作物に対するコメントとして使われはじめたもので、当初は「もえー!!」という平仮名表記が使われていたとしている。
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