「真正な」コモン・ロー上の譲渡抵当
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/14 18:35 UTC 版)
「担保権 (英米法)」の記事における「「真正な」コモン・ロー上の譲渡抵当」の解説
「抵当権」および「譲渡抵当」も参照 コモン・ロー上の譲渡抵当が生じるのは、資産が担保権者に債務の担保として譲渡されたが、当該債務が履行されたときには当該資産の返還を受ける権利に服している場合である。この権利は受戻権(英語版)と呼ばれる。法は、歴史的に、この資産の返還を受ける権利を妨げ得る条項について否定的な見方をしていたが(受戻権に対する足枷であるといわれた。)、近年は、洗練された金融取引との関係においてはこの立場は緩和されてきた。 「真正な」コモン・ロー上の譲渡抵当との言い方は、前記の方法のただし書の付された伝統的なコモン・ロー上の移転方法による譲渡抵当を指しており、この言い方は、通常、衡平法上の譲渡抵当または制定法上の譲渡抵当との区別のために用いられる。真正なコモン・ロー上の譲渡抵当は、会社の株式に関してみられることを除けば、近代的な商取引においては比較的まれである。イングランドにおいては、土地に対する真正なコモン・ロー上の譲渡抵当は廃止され、制定法上の譲渡抵当に置き換わっている。 コモン・ロー上の譲渡抵当を完成するために通常必要となるのは、当該資産に対する権限が担保権者の名義に譲渡され、担保権者(またはその名義人)が当該資産に対するコモン・ロー上の権限保有者となることである。コモン・ロー上の譲渡抵当がこの方法によって完成しなかった場合には、通常は、衡平法上の譲渡抵当としての効力を有することとなる。権原の移転の要件のため、将来財産についてコモン・ロー上の譲渡抵当を設定することは不可能であり、同一資産に対して2つ以上のコモン・ロー上の譲渡抵当を設定することも不可能である。しかしながら、譲渡抵当(コモン・ロー上および衡平法上)は非占有型の担保権である。通常、譲渡抵当を設定する当事者(譲渡抵当設定者)は譲渡抵当に供した資産を引き続き占有する。 コモン・ロー上の譲渡抵当の保有者は、被担保債権が不履行となった場合には3つの主要な救済手段を有する。すなわち、当該資産に対して受戻権喪失を行うことができ、当該資産を売却することができ、または当該資産の管財人を選任することができる。譲渡抵当の保有者は、通常、さらに譲渡抵当の証書に多くの場合記載された金銭の支払約束について訴えを提起することもできる。譲渡抵当の保有者に利用可能な救済手段はさまざまであるが、これはほとんど土地に関連しており、したがって、制定法によって置き換えられており、また、実務上は他の資産との関連で行使されることはまれであった。譲渡抵当の受益者(譲渡抵当権者)は、その救済手段の全てについて、これを用いるのに、同時であってもよいし、または連続してであってもよい。売却権限が行使されてもなお不足がある場合には、譲渡抵当の保有者はなお支払約束に関して訴えを提起することができる。しかし、これには2つの例外がある。すなわち、ひとたび仮判決が受戻権喪失手続において認められれば、売却権限は裁判所の許可の下でしか行使できず、また、受戻権喪失と支払約束に関する権利の実行のための申立ては同一の手続においてなされなければならない。 受戻権喪失は救済手段としてはまれにしか行使されない。受戻権喪失を実行するには、担保権者は裁判所に対して申立てをする必要があり、命令は2段階で下されるため(「仮」と「確定」)、この手続は、遅く、そして煩わしい。裁判所は、歴史的に、受戻権喪失命令を下すのに消極的であり、しばしばこれに替えて司法上の売却を命じる。当該資産が被担保債権の価値を上回る場合には、担保権者は通常は余剰額について責任を負うこととなる。たとえ裁判所が確定判決を下して受戻権喪失を命じた場合であっても、命令の発出後において裁判所はなお絶対的な裁量をもって受戻権喪失を再開することができるが、これは購入した第三者の権原には影響を及ぼさない。 コモン・ロー上の譲渡抵当の保有者はさらに、当該資産に対する売却権限を有する。あらゆる譲渡抵当は、黙示の売却権限を包含する。この黙示の権限は、譲渡抵当証書に正式に押印されていなかったとしても存在する。捺印証書(deed)の方法による全ての譲渡抵当は、さらに制定法による黙示の売却権限も包含するのが通常であるが、制定法上の権限の行使は制定法の規定による制限を受ける。いずれの黙示の売却権限も裁判所の命令を要しないが、裁判所は通常司法上の売却を命じることができる。担保権者は合理的に得られる最高の価格を得る義務を負うが、売却が特定の方法によって行われることまでは求められない(すなわち、競売でも秘密入札でもよい。)。合理的に取得可能な最高の価格が何かは、当該資産と関連する対価について利用可能な市場に依存する。売却は、真正売買でなければならない―譲渡抵当は、単独であれ他と一緒であれ、たとえ公正価額であってもそれ自体を売却することはできず、そのような売却は、制止されもしくは無効とされ、または無視される。 第3の救済手段は、管財人の選任である。テクニカルには、管財人を選任する権利は2つの異なる方法によって生じる―譲渡抵当の証書の規定と、(譲渡抵当の証書が捺印証書として締結されている場合には)制定法である。 イングランドにおいては、第3の救済手段として、2003年金融担保整理(第2号)規則 上の充当として存在し得る。これは、当該譲渡抵当に服する資産が金融担保であり、譲渡抵当の証書においてこの規則が適用を受ける旨が規定された場合である。ここでいう充当とは、これにより譲渡抵当権者が当該資産に対する権原を取得することができ、譲渡抵当設定者に対してその公正な時価について説明する責任を負うが、裁判所の命令の取得を必要としないものである。 譲渡抵当権者が占有を取得した場合、コモン・ローに基づいて彼らは譲渡抵当設定者に対して当該財産の価値を保存する厳格な義務を負う。しかしながら、コモン・ローの準則は取得して物理的な財産に関連しており、株式などの権利に対する「占有」の所得についてどのように適用があり得るかについては先例が不足している。そうではあるが、譲渡抵当権者はやはり、自身の利益のためにも譲渡抵当設定者に対する潜在的責任に基づいても、譲渡抵当に供された財産の価値を保全する義務を尊重すべきであろう。
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