日本の原子力発電所
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歴史
1945年(昭和20年)8月15日の第二次世界大戦終戦後、日本では連合国から原子力に関する研究が全面的に禁止された。しかし、1952年(昭和27年)4月28日に日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約)が発効し、1953年にドワイト・D・アイゼンハワー大統領が国連総会で「平和のための原子力」演説を行ったことも契機となって、研究が再開されることとなった[1][2]。
日本における原子力発電は、1954年(昭和29年)3月に当時改進党に所属していた中曽根康弘、稲葉修、齋藤憲三、川崎秀二により原子力研究開発予算が国会に提出されたことがその起点とされている。この時の予算2億3500万円は、ウラン235にちなんだものであった[3]。これらの動きは、日米原子力研究協定を重大な契機として進展した。
1955年(昭和30年)12月19日に原子力基本法が成立し、原子力利用の大綱が定められた。この時に定められた方針が「民主・自主・公開」の「原子力三原則」である[4]。
原子力基本法の成立を受け、翌1956年(昭和31年)1月1日に原子力委員会が設置された[5]。初代委員長は読売新聞社社主でもあった正力松太郎である[6]。正力は翌1957年(昭和32年)4月29日に原子力平和利用懇談会を立ち上げ、さらに同年5月19日に発足した科学技術庁の初代長官となり、原子力の日本への導入に大きな影響力を発揮した。このことから正力は、日本の「原子力の父」とも呼ばれている。
有馬哲夫によると、正力の影響力の背後にはCIAの関与があったとする情報もある[7]。この時[いつ?]に原子力委員であった日本人初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹は、体調不良を理由に委員を辞任した[8]。
1956年(昭和31年)6月に特殊法人日本原子力研究所(現・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)が設立され、研究所が茨城県那珂郡東海村に設置された[9]。これ以降、東海村は日本の原子力研究の中心地となっていく。
1957年(昭和32年)11月1日には、電気事業連合会加盟の9電力会社および電源開発の出資により日本原子力発電株式会社が設立された[10]。
日本で最初の原子力発電が行われたのは1963年(昭和38年)10月26日で、東海村に建設された動力試験炉であるJPDRが初発電を行った。これを記念して毎年10月26日は「原子力の日」とされている[11]。
日本に初めて設立された商用原子力発電所は、同じく東海村に建設された東海発電所で、運営主体は日本原子力発電である。原子炉の種類は、英国のコールダーホール原子力発電所で世界最初に実用化された黒鉛減速炭酸ガス冷却型原子炉であった。しかし経済性等の問題[12]によりガス冷却炉はこれ1基にとどまり、後に導入される商用発電炉はすべて軽水炉であった。
1974年(昭和49年)には電源三法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)が成立し、原発をつくるごとに交付金が出てくる仕組みができる。日本の原子力発電は、工業用・産業用電源を安価に安定的に供給することを目的として導入された[要出典]。
東日本大震災発生後
福島第一原子力発電所事故が発生する約1か月前に、既存の原子力発電所の延命方針が打ち出された。老朽化で運転を終える原子力発電所の廃炉処置の困難さに加えて、二酸化炭素排出削減策としてである。2010年(平成22年)3月に営業運転期間が40年以上に達した敦賀発電所1号機をはじめとして、長期運転を行う原子炉が増加する見込みであることから、これらの長期稼働原子炉の安全性が議論となった[13]。
2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災による津波で、福島第一原子力発電所が全電源喪失によって炉心溶融と原子炉建屋の水素爆発が発生し、放射能汚染を東北・関東地方に及ぼした。
その影響により、原子力発電所の増設計画の是非や、点検などによって停止した原子力発電所の再稼働の是非などが焦点となり、今後の日本の原子力政策のあり方に関する議論が、日本国政府や国会、またマスメディアなどで大きく取り上げられるようになった。
この事故により、福島第一原子力発電所の原子炉は4基が2012年(平成24年)4月20日に廃止され、残る2基も2014年(平成26年)1月31日に廃止された[14]。新たに建設が予定されていた2基についても計画が中止された。また事故の影響により、2013年(平成25年)に浪江・小高原子力発電所の建設計画が中止され、2019年(令和元年)には福島第二原子力発電所も全基が廃止された。
また、原子力発電所が集中している福井県の若狭湾沿岸では、1586年の「天正地震」とそれによる津波で大きな被害が出たことが、東日本大震災を受けて調査した敦賀短期大学教授・外岡慎一郎(中世日本史)らの調査で、複数の文献に記されていることが明らかになった。吉田兼見が書いた『兼見卿記』や、ポルトガル人宣教師・ルイス・フロイスが書いた『日本史』などである[注釈 1]。
関西電力はこうした文献の内容を把握していたが、津波による大きな被害はないと説明していた[16][17][18][19]。これに対しては地元からも不安の声が上がっており、文献から想定される被害に即した対策を求めている[20]。このとき関西電力が調査しなかった場所(高浜原発3・4号機近く)で、2015年6月に福井大学等の研究チームが、津波の痕跡と推定できる14-16世紀頃の砂層を発見している。しかし津波が天正地震によるものと結論付けられる根拠が少なく、規模も不明であり、また関西電力も安全対策には影響しないとしている[21]。
2014年4月時点では、24基が原子力規制委員会に再稼働申請されていたが、再稼働できるのは20基以下と推測された。そのため原子力発電量は東日本大震災前と比較して半減し、震災前には28%あった全発電量に占める原子力発電の割合も、15%程度に低下すると予測された[22]。
2015年4月27日、美浜1号機と2号機、玄海1号機、敦賀1号機の4基が廃炉となった[23]。同年4月30日には、島根原子力発電所1号機が廃炉となった[24]。その結果、2015年には日本の原子力発電所は42基となった。
2015年8月11日、川内原子力発電所1号機が福島第一原子力発電所事故後に制定された新規制基準での稼働を、全国で初めて再開した[25]。
2022年11月28日、福島第一原子力発電所事故後に原子炉等規制法で定められた原則40年、最長60年の運転期間を延長する方針を示した。新規建設への投資確保や、立地自治体からの不安の声などに配慮し、現時点では上限の撤廃は一旦見送り、一定の上限を設けるとした上で、今後必要に応じて見直すとした[26][27]。運転期間の上限は維持し、新基準での安全審査や裁判所による仮処分命令などの停止期間を運転期間から除外する。また、新基準許可が出ていなまま40年を超えた原発についても廃炉とせず審査を続け、合格すれば運転可能にする方針[28]。
2023年9月12日、政府は60年を超えて原発を運転できるようにする改正電気事業法を2025年6月6日に施行すると閣議決定した[29]。
原子力規制委員会が60年運転を認可している4原発8基は、高浜1号機(1974年運転開始、2034年)、2号機(1975年、2035年)、3号機(1976年、2036年)、東海第二(1978年、2038年)、川内1号機(1984年、2044年)、高浜3号機(1985年、2045年)、4号機(1985年、2045年)および川内2号機(1985年、2045年)である[30]。
注釈
出典
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