戸籍 日本の戸籍制度

戸籍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 10:17 UTC 版)

日本の戸籍制度

日本の戸籍制度(こせきせいど)は、国民一人一人を(日本国内外の居住に関係なく)出生関係により登録する制度である。居住地を登録し、地方公共団体との関係を明示する住民登録制度とは異なる。居住地は住民票と関連付けて戸籍の附票に記載されており、居住地の追跡にも利用することができる。

戸籍は元来は徴税・徴兵のために設けられ、家制度の根幹であった。しかし第二次世界大戦後の民法改正に伴う戸籍法改正により、現在の目的は大きく変わった。国民健康保険国民年金などの行政サービスに用いるデータは住民票を基にしており、戸籍の果たす役割は低下している[15]

現在では、出生生年月日)、氏名婚姻配偶者)、養子縁組国籍の離脱等の個人の関係(法的に「身分関係」と呼ぶが差別的な意味ではない、以下同様。)を明確にするものとなっている。婚姻・離婚の届出や日本国旅券パスポート)の発行にかかわるほか、親族の関係を証明する唯一の手段として相続人の特定にも活用される[16]

利点と欠点

大前提として、よほど手の込んだ不正の無い限り、「出生から死亡までの履歴」が記録され、住民基本台帳制度との連携により、戸籍の附票を閲覧すれば転居の履歴が判明し、市町村名までの出生地は、移記すべき事項と定められているので本人であることの真正性が確実であり、転籍や分籍をした後の戸籍にも記載され、相続などの手続きの際に取るべき手順が明確である。

婚姻や本籍の移転により新戸籍が作られるシステムでは、婚姻や相続の際に、一つの戸籍だけでなく何重にも遡り各地の戸籍を取得しないと、婚姻歴や子の有無が分からないことがあり、一つの戸籍でその者の出生から婚姻・離婚、死亡まで網羅される個人編纂のシステムと比べると不便であると言われているが、個人番号(マイナンバー)制度の導入により、この問題は将来的に解決するとされる[注 2]

戸籍謄本の身分事項【従前戸籍】(「前の本籍地」ではなく「前の戸籍」)は、前に記載されていた戸籍の筆頭者(婚姻または分籍により新たに戸籍を編製した場合は親、離婚により新たに戸籍を編製した場合は前配偶者。)と本籍地が記載される。転籍歴の記載は無い(戸籍事項・戸籍改製【改製事由】平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製)。

現行制度では外国人(日本国外の外国籍者)と結婚しない限り夫婦別姓が不可能なため、一方の者は結婚前まで使い続けていた名字が公的証明で通用しない。そのため、選択的夫婦別姓制度の導入を望む声が近年増加している[17]

日本の戸籍法により出生後14日以内に氏名と性別を登録する義務を親権者は負うが、性分化疾患などにより出生時の段階で性別の診断が確定しない場合は、医師の診断書を添えれば生後14日以降でも性別留保ができる。

性同一性障害当事者で、性別の移行手術をした者は、戸籍上の性別と自身の術後の身体の状態が一致せず日常生活で混乱が起きることがある。従来は性別の変更が認められてこなかったが、2003年に性同一性障害特例法が成立し、2004年に施行した。申し立てを行い、必須要件を満たし第二項の要件を踏まえて厚生労働省の定める2人以上の医師の診断書と出生から全ての戸籍謄本及び本人の申し立て書などの受理により裁判官が全ての要件等を満たしたと判断されれば、従前の戸籍は残るが除籍され新たに性別を変更できるようになった。

現在では世界的に戸籍制度のような血縁・婚姻単位の国民登録制度を持つ国は少数派であり、主要国等では日本、中華民国(台湾)のみである。第二次世界大戦後に家制度は廃止されたが、戸籍制度は残ったために、地方自治体にも国民にも、住民登録との重複業務となっている部分もある。

"夫婦別姓の解禁論"などの理由から、戸籍制度の廃止を提唱する者もいる(橋下徹[18]ら)。

戦前の戸籍謄本は手書きだったが、枠内に収めるため小さな字や略字を多用することから判読が困難であり、同じく手書きだった登記簿謄本と共に行政手続に支障があった[19]。2022年、凸版印刷人工知能を利用し戸籍謄本や登記簿謄本の手書き文字を判別するシステムを開発した[19]

無戸籍者問題

離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子とみなす嫡出推定(民法772条)や、夫や元夫からの追跡や暴力を避けるために母親が出生届を出さなかったなどのために戸籍がない無戸籍者がいる。法務省が把握しているのは838人(2021年5月10日時点)、「民法772条による無戸籍児家族の会」は1万人以上と推定している。戸籍を得るためには家庭裁判所で就籍許可を得て、就籍届を市区町村に提出する。裁判調停となるケースも年3000件程度あるが、嫡出推定などが障害となり500件程度は認められない傾向が続いている[20]

無戸籍であっても出生証明書や住民票は取得でき、住民票に基づく権利や行政サービス(義務教育など)を受けられる。ただし、婚姻届や旅券(パスポート)取得はできない。責められるような違法行為だと思い込み、困窮しても自治体に相談せず、餓死に追い込まれた例もある。このため、無戸籍者を含む孤立・困窮世帯の把握や相談対応を強化する自治体もあるほか、法務省は再婚後に生まれた子供は再婚した夫の子とする法改正の準備を進めている[20]

母親が匿名で出産し子供に名前を伝えない「内密出産」の場合、出生届は母親の欄が空欄として提出されるが、法務省では、「一般論として出生届の母親の欄が空欄だとしても、日本国籍だと認められれば戸籍に記載する」との見解を表明している[21]

内容

戸籍謄本
戸籍簿を電算化していない自治体のもの
戸籍全部事項証明書
戸籍記録を電算化している自治体のもの

戸籍簿は、日本国籍を有する者のほとんどについて男女の性別、氏名や生年月日などの基本情報と、婚姻などの事跡が記載されており、行政事務で極めて重要な役割を持っている。戸籍は日本国籍を有する者の身分関係を証明する唯一無二の公的証書である。戸籍は和紙に印刷してあるが、以前は枠以外は手書きで書くか、和文タイプライターにより記入されていた。

戸籍簿は、一人もしくは2世代を最大とする複数人の生年月日・死亡年月日、性別、氏名、続柄(血縁関係)、婚姻歴・離婚歴、養子縁組歴などの情報が記載されており、戸籍の附票は現住所と転居履歴が記載されている。

この戸籍簿と同一の記録事項を、一定条件のもとで請求があれば、戸籍簿を管理している自治体(本籍地を所轄する自治体)が公的証明書類として発行する。戸籍簿の電算化が行われる以前は戸籍簿のコピー(コピー機の導入以前は手書きによる写し)に自治体の長の公印が押印されたものが発行される、そしてこれを「戸籍謄本」という。電算化が行われて以後は、戸籍簿と同一の記録事項を出力印字して自治体の長の公印が押印された書類が発行される、そしてこれを「全部事項証明書」という。戸籍謄本および全部事項証明書は戸籍簿に登録されている全員の記録事項が記載されるが、特定の一人のみ抽出して記載した書類をそれぞれ「戸籍抄本」「個人事項証明書」という。

日本の戸籍は日本国籍を有する人物のみが記載され、外国籍の者は、日本国籍を有する者の配偶者や父母としてのみの記載がされる。住民基本台帳は記載されているが戸籍は記載されていない人物(住民票及び個人番号がある無戸籍者)も存在し得る。

なお、皇室を構成する天皇上皇皇族[注 3]は一般国民のような戸籍を持たず、天皇・上皇・皇族の身分に関する事項は「皇統譜」(こうとうふ)に登録される[22]皇室典範の規定により皇族の身分を離れた者については、皇統譜にその旨が記載され、法律の規定に基づき新たな戸籍が編製されるか既存の戸籍に編入される。一方で、婚姻により非皇族から皇族になった者は戸籍から除かれる[23]

天皇・上皇・皇族には戸籍法が適用されないため、住民基本台帳法も適用されない[24]。つまり、天皇・上皇・皇族には戸籍も住民票もない[注 4]

戸籍の届出の種類

  • 本人の本籍地または届出人所在地でしなければならない。(第25条)
  • 書面または口頭ですることができる。(第27条)※実務では、口頭届け出を受け付けることはまず無く、書面を要求される。口頭の場合は、調書を役人が作らねばならず、面倒だからである。
出生届戸籍法第49条の届)
子が出生したときに14日以内に提出する届出である。医師等による出生証明書を添付する(一般的にA3判の用紙の右半分に欄が設けられている)。
婚姻届戸籍法第74条の届)
婚姻(結婚)をする場合に必要な届出である。証人2名の署名押印が必要。
離婚届戸籍法第76条の届)
離婚をする場合に届ける。筆頭者でない側(配偶者)が、戸籍を抜けることになる。協議離婚と裁判離婚(調停、審判、訴訟)との2種類がある。
死亡届戸籍法第86条の届)
死亡を知ってから7日以内に届ける。死亡診断書または死体検案書の添付が必要である(一般的にA3判の用紙の右半分に欄が設けられている)。身元不明で引取者がいない場合(いわゆる行き倒れ)は行旅死亡人といわれ、引取り人を探すために市区町村長名での公告が官報に掲載される。
認知届戸籍法第60条の届)
(主に男性が)生物学的な自分の非嫡出子を法的な自分の実子とするための届出である。子の母が別の男性と結婚している場合、子はその夫婦の嫡出子となる(離婚後300日以内の出産の場合を除く)ので、嫡出否認もしくは親子関係不存在の訴えが認められるまで認知できない。
養子縁組届(戸籍法第66条の届)
養子を受け入れるための届出である。年上の人物と尊属と自分の嫡出子は養子にできないが、嫡出でない実子と、実妹弟、実孫などは養子にできる。
養子離縁届(戸籍法第70条の届)
養子を解消するための届出である。
特別養子縁組届
特別養子を受け入れるための届出である。実親が養育に不適格であるなどの特段の事情がある場合のみに認められる。通常は15歳未満でなければ特別養子縁組はできず(ただし15歳未満から養親候補から事実上養育されており、やむを得ない事由で15歳までに申し立てが出来ない場合は15歳以上でも可能)、縁組は家庭裁判所の審判が必要。
特別養子離縁届
特別養子を解消するための届出である。特段の事情がある場合のみ認められる。
離縁の際に称していた氏を称する届(戸籍法73条の2の届)
養子離縁によって旧姓に戻った人が養子時の苗字に戻るための届出である。
離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法77条の2の届)-いわゆる「婚氏届」
離婚によって旧姓に戻った人が婚姻時の苗字に戻るための届出である。離婚から3ヶ月以内に届け出なければならない(離婚届と同時に届け出ることも可)。
親権(管理権)届
「親権者指定」「親権者変更」「親権喪失」「親権喪失取消」「親権辞任」「親権回復」「管理権喪失」「管理権喪失取消」「管理権辞任」「管理権回復」の10種類の届出があり、子供を養育する権利と財産を管理する権利についての手続きを行うための届出である。
失踪届(戸籍法第94条の届)
ある人が平常地域で行方不明失踪)になった場合(普通失踪)は、最後の目撃日から7年後に家庭裁判所が6ヶ月間の失踪宣告を行い『官報』などに掲示する。戦地での作戦行動中行方不明や沈没船に乗船していたなどの場合(特別失踪)は、戦争終結あるいは船の沈没から1年後に家庭裁判所が2ヶ月間の失踪宣告を行い『官報』などに掲示する。それでも発見されない場合は失踪が確定し、本届を提出すると失踪した人は死亡したものとみなされ、相続などが行われる。
復氏届戸籍法第95条の届)
配偶者と死別した人が、旧姓に戻る場合に行う届出。
姻族関係終了届戸籍法第96条の届)
配偶者が死亡してもそのままでは配偶者の血族との間に姻族関係があるため、姻族が生活困難になった場合などに扶養義務がある。姻族との関係を終了させるための届出である。
推定相続人廃除届戸籍法第97条の届)
推定相続人が被相続人に対して著しい虐待などをした場合に推定相続人の遺留分を含む相続権を剥奪する届出である。廃除の裁判が確定した場合は裁判の謄本を添附して届け出なければならない。
入籍届戸籍法第98条の届)
父母の離婚・養子縁組・養子離縁などによって父母と別戸籍になった子を父母(父または母)と同じ戸籍に入れるための届出である。
分籍届(戸籍法第100条の届)
特定の一人のみ戸籍を分ける際に出す届出である。18歳以上の未婚者(つまり筆頭者と配偶者以外の者)であれば可。戦前の「分家届」と似ているが、全く異なるものである。
国籍取得届(戸籍法第102条の届)
国籍法の規定により外国人が日本国籍を取得した際にする届出である。
帰化届(戸籍法第102条の2の届)
外国人が帰化した際にする届出。法務大臣による帰化の許可の告示から1か月以内にしなければならない。
国籍喪失届(戸籍法第103条の届)
日本国籍を持つ者が外国籍を自己の意思で取得した場合は日本国籍を自動的に喪失するので(国籍法11条)、外国籍を得た時は日本国籍の自動喪失を届け出ねばならない。
国籍選択届(戸籍法第104条の2の届)
外国籍を有する日本人が日本国籍を選択する場合に届け出る(国籍法14条)。重国籍になったのが18歳未満であれば18歳が期限であり、18歳以上であればなった時点から2年が期限である。期限を越えた場合、法務大臣は書面により当人に国籍の選択をすべきことを催告することができる(国籍法15条)。
外国国籍喪失届(戸籍法第106条の届)
外国の国籍を有する日本国民が当該外国の国籍を喪失した場合に届け出る。
氏の変更届(戸籍法107条1項の届)
家庭裁判所の許可を受け、氏(苗字)を変更する。
外国人との婚姻による氏の変更届(戸籍法107条2項の届)
外国人と結婚した日本人はそのままでは氏(苗字)は変わらないが、結婚後6ヶ月以内であればこの届出で苗字を変えることができる。
外国人との離婚による氏の変更届(戸籍法107条3項の届)
外国人と結婚後、107条2項の届出によって氏(苗字)を変えた人が、離婚後3ヶ月以内に旧姓に戻るための届出である。
外国人父母の氏への氏の変更届(戸籍法107条4項の届)
片親が外国人の場合、子が親の氏(苗字)を名乗るための届出。家庭裁判所の許可が必要である。
名の変更届(戸籍法第107条の2の届)
家庭裁判所の許可を受け、下の名前(名)を変更する。語義がいじめの原因になったとして許可が下りた事例が存在する。
転籍届(戸籍法第108条の届)
本籍地を移転するための届出である。
就籍届(戸籍法第110条の届)
親子関係などから日本国民であると推定されるが戸籍のない者(例:樺太などの旧日本領からの引揚者、無戸籍者、未就籍児、両親が没した中国残留孤児)が、家庭裁判所の許可(通常、家事事件手続法226条2号の審判による)を得てから既存の戸籍に入ったり、新しい戸籍を作ったりするための届出である。なお、住民票記載及び個人番号が存在した者について、無戸籍化と就籍が発生しても、個人番号に変更は無い。記憶喪失により身元不明となった人物の仮の戸籍を作成する際にも利用される。
未成年者の後見開始届(戸籍法第81条の届)
両親が死亡するなどして未成年者に親権を行使する者がいない場合、または親権者に管理権がないときに届出が必要になる。
不受理申出
婚姻届や離婚届などを無断で提出されないための申し出。不受理となった場合に郵送で通知される。芸能人が勝手な婚姻届を出すファンからの自衛に利用している[25]
不受理申出取下書
不受理申出を取り消すための書類である。上記の理由がなくなった場合に申し出る。
死産届(しざんとどけ)(昭和21年厚生省令第42号(死産の届出に関する規程)による)
12週以上の胎児死産中絶した場合にこの届出を行う必要がある。この届出を行うことにより、死胎についての埋葬火葬許可証が発行される。

戸籍関連の書類

戸籍全部事項証明書
戸籍に記載された内容の全ての証明書である。電算化されていない戸籍の場合は「戸籍謄本」(こせきとうほん)(“謄”は全文の写しを意味する)というが、今はほとんど電算化されたため見かけなくなった。
戸籍個人事項証明書
戸籍に記載された者のうち全員ではなく必要者のみの内容の証明書である。電算化されていない戸籍の場合は「戸籍抄本」(こせきしょうほん)という(“抄”は全てではなく必要部分の写しを意味する)というが、今はほとんど電算化されたため見かけなくなった。
「省略抄本」と通称されているもの
現戸籍や除籍の必要な事項のみ記載した抄本である。証明文自体は通常の戸籍抄本と同様。電算化された戸籍の場合は「一部事項証明書」という。
除籍全部事項証明書
除籍された戸籍の証明書である。電算化されていない戸籍の場合は「除籍謄本」という。
戸籍に記載された者全員が死亡・離婚・婚姻などの理由により除かれるか、戸籍全体が他市町村へ移動したときに除籍となる。相続に際して相続権利者の存在を確認するために請求されることが多い。
除籍個人事項証明書
除籍された戸籍の証明書である。電算化されていない戸籍の場合は「除籍抄本」という。
改製原戸籍謄本(かいせいげんこせきとうほん、又はかいせい「はらこせき」とうほん)
戸籍法の改正による戸籍の管轄省令により戸籍を作り変えた(改製した)場合に、その元になった戸籍の謄本である。現在交付可能な改製原戸籍は2種類ある。
  • 1947年(昭和22年)の法改正に伴う、昭和22年司法省訓令による改製原戸籍および昭和32年法務省令による改製原戸籍
  • 1994年(平成6年)の法改正に伴う、平成6年法務省令による改製原戸籍(電算化を行った市区町村)。「平成改製原戸籍(平成原戸籍)」とも言う。
1994年(平成6年)以降は戸籍の改製が行われるような法改正が行われていないため、改製原戸籍全部事項証明書は存在しない。
改製原戸籍抄本
改製によって除かれた戸籍の抄本である。上記項目同様、改製原戸籍個人事項証明書は存在しない。
戸籍の附票
戸籍と住民票の記載事項を一致させる記録である。戸籍法ではなく、住民基本台帳法に基づく記録である。
戸籍の除附票
除籍された戸籍の附票である。住民基本台帳法施行令により、最低5年間保存される。
再製原戸籍証明
戸籍の再製が行われたときに、再製される前の戸籍について証明する書類である。
不在籍証明
ある人物がある番地の戸籍に記載されていないことを証明する書類である。
婚姻要件具備証明書
日本国籍を有する者が、外国の法律に基づき結婚するときに、相手国に対し結婚する資格があることを証明するために使用される書類である。
同性婚近親婚重婚を防ぐため、結婚相手を特定し、その相手との婚姻資格を証明する。ただし「日本の法律に基づいた婚姻資格」の証明のため、先の例のように同性婚が認められる国で結婚する場合でも、日本の戸籍法では同性婚を認めていないため、この証明は発行されない。地方自治体が導入しているパートナーシップ制度などについては「日本における同性結婚」参照。
主に外国人と結婚する為に用いられるが、日本人同士が外国で結婚する場合に用いられる場合もある。外国人と結婚する場合でも、日本の法律に基づいて結婚する場合は不要。本籍のある市町村で発行するほか、戸籍謄本を持参して法務局大使館領事館などから発行することも可能。
独身証明書
婚姻用件具備証明とは異なり、単に戸籍上の婚姻関係が生じていないことを証明する書類である。主に結婚情報サービスへの登録時に用いる。
受理証明書
各種の届出を受理した証明書で、外国人が日本で出生届けを提出したへの提出などに使われる。
届出した内容が戸籍に反映され、戸籍謄本などとして証明できるまでに数日を要し、それまでの間に届出内容に基づいた手続きを行うためにも用いられる。
ただ実態として、婚姻などをした事のみの証明である特性を利用し、出生事項などの余計な情報が記載されていない証明書として用いられることも多い。
「不受理証明書」というものもある。これは届出が受理されない処分の際に、請求により無料で発行される。不服申し立て(家庭裁判所にする)をなす時などに使う。
届書記載事項証明書
各種の届出を複写し長が認証した証明書である。受理証明書は届出の内容を抜粋して証明するのに対し、届書記載事項証明は届け出た書類そのもののコピーとなるため、使用目的や請求権利者が厳格に規定されており、特定の目的以外では発行されない。
この中で最も発行されることの多い「死亡届記載事項証明書」は遺族年金簡易保険の手続きに使われる。
戸籍記載事項証明書
戸籍謄本の記載事項の一部について証明するもので、必要な項目のみを証明したい場合に用いられる。
上質紙を用いた婚姻・離婚、養子縁組・養子離縁・認知の届出の受理証明書
賞状のような外観の受理証明書。外国籍の者との婚姻事実や離婚事実を日本国戸籍事務管掌者として日本国の方式で婚姻や離婚が成立したことを証することが目的として作成されるものだが、その外観から、一般に大切な事項の記念として請求される場合が多い。発行手数料が通常の証明書より高い。
身分証明書(身元証明書)
禁治産者・準禁治産者の宣告、1999年(平成11年)以降は成年後見制度に基づく登記を受けていない、破産宣告を受けていないことの証明書である。被保佐、被補助については記載されない。一部の職種(例:警備業における警務職)に就職する場合や、許認可業(建設業や宅地建物取引業など)で役員や支配人等、一定の者がこれらに該当していない事が許認可要件となっている場合に開業や更新の届出をする時などに要求される。本書をもって本人である証明はしない。

注釈

  1. ^ ただし、これらが日帝残滓であるという議論については否定した。
  2. ^ 2021年3月現在、戸籍と個人番号の直接の対応付けは無く、また戸籍制度において特定の者を一意に識別可能となる番号・記号も存在しない。ただし、個人番号と住民票、住民票と戸籍の附票は相互に連携している。
  3. ^ 2022年(令和4年)8月13日現在、皇室の構成員は、天皇・上皇・皇族15名の計17名。
  4. ^ 運転免許証の申請に当たっては住民票の抄本提出を要するが、生まれながらの皇族であった天皇・上皇・文仁親王はどうやって免許を取得したのかという疑問が生じる。
  5. ^ 不動産登記自動車検査証など登録者の住所を基準に権利義務が発生するもので、名義変更等に際して登録時と住所が異なると、登録済み住所と現住所の連続性を証明して手続者が同一人物であることの証明を求められる場合があり、該当戸籍に入っていた当時の住所履歴が記録されている「戸籍の附票」の写しを用いることがある。連絡先不明の相続人など、血縁関係者の住所を調べる際にも戸籍の附票の写しは使用される。戸籍の変更が頻繁な場合に連続性や同一性の証明が難しい場合がある。運転免許証日本国旅券は本籍地を記載される。
  6. ^ 「戸籍筆頭者ではない初婚の男性と、戸籍筆頭者である再婚の女性が、結婚して男性の氏を名乗り新しい戸籍が作られる場合」に入籍を用いることは誤りである。互いが初婚の場合であって、分籍して一人戸籍を有する男性の氏を名乗ることを女性が選択し、その籍に入る場合においては入籍となる[28]が、この場合でも届け出は「婚姻届」である。婚姻の対義語は離婚、入籍の対義語は除籍、である。
  7. ^ 住民票の続柄は総務省の通達によるものであり、法律に記述があるものではないことに注意されたい。

出典

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  8. ^ https://www.moj.go.jp/content/000005180.pdf 戸籍法部会資料「戸籍法見直しに関する論点(1)」法務省 (PDF)
  9. ^ ウィキソースには、同年4月8日法務省告示第174号「戸籍、除籍及び原戸籍が滅失した件」の原文があります。
  10. ^ 東日本大震災により滅失した戸籍の再製データの作成完了について”. 法務省 (2011年4月26日). 2011年6月21日閲覧。
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  27. ^ “芸能人「入籍しました」の新聞表記は「婚姻届を出す」”. 経済プレミア. (2017年10月4日). https://mainichi.jp/premier/business/articles/20171004/biz/00m/010/025000c 2020年10月2日閲覧。 
  28. ^ 粂美奈子 (2008年10月20日). “「結婚」を「入籍した」というのは間違い?〔2〕”. All About. 2011年10月12日閲覧。
  29. ^ 相続等で戸籍を請求されるかたへ(戸籍のさかのぼり)掛川市公式ホームページ(2021年6月12日閲覧)
  30. ^ 国勢調査 01500 世帯主との続き柄(12区分),世帯の家族類型(16区分),年齢(5歳階級),男女別一般世帯人員(3世代世帯-特掲) 全国(市部・郡部),人口集中地区 | データベース | 統計データを探す”. 政府統計の総合窓口. 2021年5月17日閲覧。






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