2つのノクターンとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 趣味 > ピティナ・ピアノ曲名 > 2つのノクターンの意味・解説 

タールベルク:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
タールベルク:2つのノクターンDeux Nocturnes Op.16初版出版地/出版社Schlesinger 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 嬰ヘ長調 Fis-durNo Data No Image
2 ロ長調 H-durNo Data No Image

ショパン:2つのノクターン (第11・12番)

英語表記/番号出版情報
ショパン:2つのノクターン (第11・12番)2 Nocturnes (g:/G:) Op.37 CT118-119作曲年: 1838-1839年  出版年1840年  初版出版地/出版社Leipzig, Paris, London 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第11番 ト短調 No.11 g moll op.37-14分30秒
2 12番 ト長調 No.12 G dur op.37-25分30秒

作品解説

執筆者: 樋口 晃子

Duex nocturnes op. 37

 この2曲のノクターン1838年から39年にかけて作曲され初版パリ(Troupenas, 1840)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1840)、ロンドン(Wessel, 1840)で出版された。献呈者の記載はない。この2曲は、当時人気女流作家であり、ショパン恋仲にあったジョルジュ・サンドと共に行ったマヨルカ島への船旅前後作曲されたと考えられている。この経験本作との関連不確かであるものの、第2番には舟歌風のセクション現れる

No. 1 ト短調
 このノクターンも、複縦線仕切られ3部形式(A, B, A’)からなる
 絶え緩やかなマーチ風のリズム歩み進め左手伴奏音型にのって、声楽ベル・カント様式想起させる装飾施され物憂げ主題(mm. 1-8)が右手奏でられる。この主題はAで3回現れるが、反復ごとに前打音やフィオリトゥオーラが加えられたり(m. 18, 19やm. 36 etc.強弱変化付けられたりする(1回目p-f2回目f-ff3回目p)。ここにはショパン初期ノクターン以来意識して行っていた「同語反復回避旋律書法顕著に認められる。Aで注目すべきは、6小節目に見られる3-3-3-3という指使いである。連続する複数音符に対して同じ指を連続的に使用することは一般的ではないが、ここでは三連符4分音符の各音が、均質というよりは幾分粗野な仕方際立たたせられることが示唆されている。
 変ホ長調のBでは終始一貫して温かく豊かな響きの4声体コラール奏されるノクターンへのコラール導入は既に第6番(1833)に見られるもので、旋律的なAと好対照をなし、宗教的な厳粛さをいっそう強めている。後半には印象的なフェルマータ4度挿入され、これによってコラール終結予示される
 主題再現するA’はこのノクターン場合、Aが大幅に縮小される以外、ほとんど変化見られない。曲の結尾ト短調の同主調であるト長調IVc-e-g和音)による変格終止に続くト長調主和音で終わる。ショパンノクターンにあってはこのようにピカルディ終止変格終止、またはその両方用いる曲は典型的である。

No. 2 ト長調
 このノクターンにはA, B, A’, B’, A’’, Codaというロンド風の形式認めることができる。但し、全体通して転調極めて頻繁に行われ主調ト長調がほとんど現れないのが特徴的である。例えば、Aでは、mm. 1-3、mm. 6-7とmm. 21-22にかけて一瞬ト長調現れるのみである。
 Aでは大き跳躍音程を含む左手分散和音伴奏音型にのって奏でられる、3度6度といった重音からなる右手主題特徴的である。主題このように冒頭から重音提示されるノクターンは、21曲中このノクターンだけである。これら3度6度急速な連続煌びやかな音響効果もたらす同時に、この曲にエチュード的な側面付与している。
 対照的にBでは、符点2分音符左手支えられ飾り気のない素朴なバルカロール風の主題奏でられる。主題アウトラインパターン化されているが、A同様、次々と自由に転調繰り返し、ここではA以上にト長調響き聞こえてこない。その転調経過たどってみると、ハ長調(m. 28-)、ホ長調(m. 36-)、嬰ハ長調瞬間的だがm. 45)、嬰へ短調(m. 46-)、変イ短調(m. 48-)、ヘ長調(m. 51-)、変ロ長調(m. 53-)、ニ長調(m. 60-)、そしてようやくト長調(m. 66-)に到達するハ長調からホ長調変ロ長調からニ長調へという長3度上の調への3度近親転調は、ショパン好んで用いた転調である。
 これに続く、A’(A’’も同様)はAの縮小形であり、B’はBと同じ長さだが、転調経過異なる。A’には半音階進行するバスによって期待されるカデンツ次々裏切られとりとめのない雰囲気助長される(mm.81-85)。このB’には、嬰ト長調(m. 91-97)や嬰イ短調(m. 98-102)というト長調からかなり遠い調も含まれている。m. 132フェルマータの後のコーダにおいて、Bでは主題として一度現れることのなかったト長調でBの主題一部奏でられた後、最後にト長調V- I和声進行ppp響かせ、曲を終える。


ショパン:2つのノクターン (第13・14番)

英語表記/番号出版情報
ショパン:2つのノクターン (第13・14番)2 Nocturnes (c:/fis:) Op.48 CT120-121作曲年1841年  出版年1841年  初版出版地/出版社Paris  献呈先: Laure Dupert&eacute

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第13番 ハ短調 No.13 c moll op.48-16分00
2 第14番 嬰ヘ短調 No.14 fis moll op.48-26分00

作品解説

執筆者: 上田 泰史 

Deux Nocturnes Op.48

この二曲ノクターン作曲時期研究者によって見解異なるが、1840年41年作曲され初版パリ(M. Schlesinger, 1841)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1842)、ロンドン(Wessel & Stapleton, 1842)で出版された。弟子のロール・デュペレ嬢に献呈自筆譜は見つかっていない。二作ともオペラ影響色濃く反映した傑作である。


第13番 ハ短調

 本作は、劇場オーケストラ思わせるシンフォニック書法導入しオペラ効果狙っている点で他のノクターンとは異なっている。
 全体複縦線仕切られた、性格異にする3部分(以下A, B, A’)からなる最初主題は、大きく跳躍する左手和音によって、バス中声部の和音豊かに響かせている。この伴奏音型は、後の作品55-115番)、作品62-2にも見られる後期ノクターン特有の書法であり、ショパン交響的な効果ピアノ追究している。これには、豊か低音得られるようになった当時楽器の特性とも関係があるだろう。A部の音域はほぼソプラノの音域一致しており、A部の終わり(第21小節)で歌はクライマックス迎えC音に達する。
 ハ長調のBでは静かなコラールダイナミックなオクターヴ連続対照的である。A’では冒頭の「歌」が再び現れるが、今度和音連打左手重音による分散和音伴奏される。この種の和音連打はしばしオーケストラトレモロによる弦楽伴奏ピアノ表現するときによく用いられ書法である。ここでも、他のノクターンとは違って右手の「歌」は決してc音を越えことはない。つまり、右手旋律は、一貫してソプラノ歌手イメージして書かれている考えられるのだ。
 Bで聴かれコラールは、作品15-3第6番)、作品37-1第11番)でも用いられたが、Aの静かなソプラノ独唱、A’の情熱的なフィナーレの間では、宗教的瞑想的な雰囲気が特に際立つ書法ドラマ性という点から見て、このノクターンは、3つの情景からなるピアノのためオペラとみなすこともできよう

第14番 嬰ヘ短調

 第2番第1番同様に3部分(以下A, B, A’)からなりオペラ特色顕著である。嬰ヘ長調嬰ヘ短調嬰ハ長調ともつかぬ短い導入のあと、ギター爪弾き連想させる左手の音型にのってセレナード風の旋律奏でられる。主題例によって繰り返されその際オクターヴ装飾加えられ変奏される。
 セレナードが終わると「モルト・ピウ・レント」と記され変イ長調のBに入る。ここで5連符と6連符によって表現されるレチタティーヴォ風の音型が導入されるこのような扱いは、ショパンノクターンにおいて他に例を見ない。「レチタティーヴォ」担うのは、音域的にテノールであろうショパン実際彼のお気に入り弟子友人だったA.グートマンレッスンをつけているとき、この中間部を「レチタティーヴォのように弾きなさい」と述べ、さらに「暴君命令下し(これが最初にある二つ和音の意味であった)、相手お慈悲乞うているのです」 と言ったという。これはグートマン証言である。
 さて、A’ では再び冒頭セレナード風の旋律戻ってくるが、コーダでは半音階進行和声旋律下方へと追いやり、「セレナード」の最低音cisにまで追いやる。そうかと思うと、最後の2小節で最高音aisまで一気駆け上り、嬰へ長調で曲を閉じる。

¹  ジャン=ジャック・エーゲルディンゲル『弟子から見たショパン―その教育法演奏美学』(Jean-Jacques Eigerdinger. Chopin vu par ses eleves, 3rd edition, Neuchatel, 1988)、米谷治郎、中島弘二訳、東京音楽之友社2005年


ショパン:2つのノクターン (第15・16番)

英語表記/番号出版情報
ショパン:2つのノクターン (第1516番2 Nocturnes (f:/Es:) Op.55 CT122-123作曲年: 1842-44年  出版年1844年  初版出版地/出版社Leipzig, Paris  献呈先: Jane Wilhelmina Stirling

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 15番 ヘ短調 No.15 op.55-1 f moll 4分00
2 第16番 変ホ長調 No.16 op.55-2 Es dur4分30秒

作品解説

執筆者: 上田 泰史 

Deux Nocturnes Op.55

この二曲ノクターン1843年作曲され初版パリ(M. Schlesinger, 1844)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1844)、ロンドン(Wessel, 1859)で出版された。献呈受けたJ. W. スターリング(1804-1859)はショパン弟子で、師を熱烈に信奉し、また恋愛感情抱いていた。スコットランド裕福な家系生まれた彼女は、パリショパン出会ってから亡くなるまでの間、ショパン様々な面で助けた。彼女の過剰な親切心はしばしショパン悩ませたが、善良なこの女性に対し礼節保ってふるまった。彼女が集めたショパン遺品ショパンについての記録文書ショパン研究において重要な資料となっている。本作二人出会ったころの作とみられている。
 これらのノクターンには、同時代のオペラ・アリアにおける歌唱様式ばかりでなく、バロック様式、とくに対位法的書法への関心色濃く表れている。ショパン対位法厳格に自作適用することは、習作として書いた二声のフーガ除けば殆どなかったが、この二曲には対位法への憧れ露呈されている。それでも、彼はポーランド時代から対位法をよく勉強しており、パリ時代1841年パリ音楽院院長対位法権威ケルビーニによる教則本対位法フーガの技法』を手に再び勉強している。

no.1 ヘ短調
前作ノクターン作品48-1引き続き、この曲でも左手伴奏バス中声部を補填する諸声部を、右手歌唱的な旋律をになう。形式は他のノクターン同様三部形式(ABA’)で書かれているが、同じ形式のなかで常に何か前と異なことをするのがショパンである。このノクターン特徴は、一見しただけでは気づかないが、バロック書法影響色濃く反映している点にある。
 Aは48小節からなるが、左手バス着目すると、この間使用される音はわずかに5つ、すなわちc-e(fes)-f-g-asに過ぎない。そして、e-f-g-asというバスの音型が8回も繰り返される。これは、一定のバスの上変奏をするシャコンヌパッサカリアというバロック時代ジャンル想起させる
 第48小節に始まるBは、劇的な低音ユニゾン続いて歌唱的な旋律現れる(第57小節)。この旋律は、作品48-2(第14番)と同じ伴奏音型によっているが、ここでは右手ポリフォニック扱い注意を払うべきである。そこでは、中声部に対旋律置かれ繋留音最上声部に対して六度ないし三度をなして解決するという、すぐれて対位法的な扱い見られる(第5862小節)。ここにもやはりバロックスタイルが顔をのぞかせているのである
 74小節目に始まるA’の主題旋律は、冒頭4小節変奏されてただ一度現れるだけで、その直後には全体の約1/4を占め長大ストレットが続く(第87小節~第97小節)。作品9(第1~9番)のような初期ノクターンにおいて、曲尾にはきまって技巧的装飾的なカデンツアが置かれたが、後期作品に向かうにつれ、曲の終わり方は和声的および曲のドラマチックな展開という点からみて、いっそう入念に仕上げられるようになっている。この曲のストレッタはとくにその長さ主題静けさとはかけ離れたスタイルという点で、21曲中特異な終わり方の身振りを示すものである。このストレッタで調性ヘ短調からヘ長調へと移りそのまま終止する。同主調による終止前作ノクターン作品48-2(第14番)と同じである。(上田 泰史)

no.2 変ホ長調
第2曲は以下の三つ部分分けられる二つ主題提示される第1~26小節(以下A)、第2634小節(以下B)、Aの再現・展開としての3555小節(以下A’)、そしてコーダ(第5667小節)。調性異な二つ主題提示する点はソナタ形式意識しているようであり、これがこのノクターンのもっとも特徴的な点である。また、第1番同様、対位法的な右手扱いにも注目すべきである
 Aは、ショパン多く作品がそうであるように、属音(この曲では変ロ音)で開始される。だが、左手開始和音主和音ではなく属和音であり、第2小節目で直ち主和音解決する。この曲が、突然にあたかも途中から始まったように聞こえるのはそのためである。このノクターンには、主部二つ楽想用意されている。一つは第1~12小節(以下a)に、もうひとつは第1326小節(以下b)にあたる部分である。aの第1主題旋律は二回繰り返されるノクターンにおいて、ショパン旋律反復する際に必ず変奏するが、通常の方法旋律装飾である。ところが、彼はここで新し変奏方法用いている。曲冒頭右手は単旋律だが、第9小節目に始まる反復の際には新し声部内声加え、に変化与えているのである。aの旋律は、A’に再び現れるが、ここでは旋律半音階的装飾施され、さらに中声部には16分音符対旋律強く自己主張する。
 同じことは下属長の変イ長調提示される第2主題bにもいえる。bは、曲の後半Bでも再現され二度反復されるが、いずれの場合も、単なる反復ではなく常に新し対旋律付けがなされている(第39~第55小節)。しばしば半音階的に動くこれらの対旋律おかげで、縦の響き聞き手にかなり交錯し印象与える。
 コーダはそれに比べ再びテクスチュア簡素化されすんだ分散和音カデンツのなかで曲は閉じられる


ショパン:2つのノクターン (第17・18番)

英語表記/番号出版情報
ショパン:2つのノクターン (第17・18番)2 Nocturnes (H:/E:) Op.62 CT124-125作曲年1846年  出版年1846年  初版出版地/出版社Leipzig, Paris, London  献呈先: R.de K&oumlnneritz n&eacutee Heygendorf

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第17番 ロ長調 No.17 H dur op.62-16分00
2 18番 ホ長調 No.18 E dur op.62-25分00

作品解説

執筆者: 上田 泰史 

Deux Nocturnes Op.62 

この二曲1846年作曲され初版パリ(Brandus, 1846)、ライプツィヒ(Breitkopf undrtel, 1846)、ロンドン(Wessel, 1846)で出版された。彼の弟子思われるR. フォン・ハイゲンドルフ=ケンネリッツ嬢に献呈ショパン生前出版したノクターンとしては最後のものである作品55二曲比べ書法はますますポリフォニクになり、半音階によるうねりは消えて響き透明度を増す。ここに至って、彼は常に憧れ抱き続けてきたポリフォニック書法歌唱的な様式折り合いをつけ、自分なり答え見出したようである。

no.1 ロ長調
第1番は、他の多くノクターンと同様、A-B-A’と図式化される三部形式よる。作品55-2第16番)と同様、唐突なカデンツかで開始される冒頭置かれ和音は第7音が付加され和音である。この一見奇妙な出だしは、当時よく行われていた「プレリュード」と呼ばれる習慣由来するものであろう。「プレリュード」は作品演奏する前に聞き手注意演奏者に向けさせたり、タッチ確かめたりするために行われる短い即興的な前奏で、20世紀初期までは普通に行われていた。バックハウスヨーゼフ・ホフマンライヴ録音はこうしたプレリュード」を聴くことができる。しかし、なぜショパンはわざわざそれを記譜したのだろうか。これはよく検討する価値のある問題であるが、個々での議論はよすとしよう
 「プレリュード」に続く主題声部数が不定擬似的ポリフォニーである。この曲の冒頭部分は、バロックフーガにしばしば見られるように拍節一定ではない。参照説目の第3拍目に出る主題は、7小節目で再び現れるとき、第1拍目にきている。この主題下行音型は、第1114小節目にかけて、右手内声利用されるこうしたモチーフによる一貫性確保バッハ代表されるフーガ書法主要な特徴であるが、ショパンはおそらくそれを強く意識している。第1421小節右手が常に2声となり、8分音符で動く。テクニックの点からみて、こうした多声の動きクレメンティクラーマーといった19世紀初期活躍した先人用い始めた比較的古いピアノ書法である。続く経過的な第2125小節目には、Bで使用されるシンコペーションのリズム・オスティナートが現れている。その後に再び主題回帰し変イ長調中間部Bに入る。Bで初め現れるトリルは、そのままA’の主題再現(第6875小節)で利用されるトリル中に旋律織り込むこの技法は、30年代末から40年代デーラーのようなヴィルトゥオーゾ・ピアニスト作曲家によってしばしば用いられたいわば流行テクニックであったショパンは古い技法だけでなく最新流行積極的に取り込んでいるのである
 第75小節主題遠隔調ト長調の属七に落ち着くと、再びロ長調に戻るために4小節間の巧み経過部が続く(第7680小節)。ここでは、4声部とりわけ対位法的に扱われており、入念に書かれ部分である。第81小節に始まるコーダでは再び左手シンコペーションによるリズム・オスティナートが回帰しその上で右手増二度を含むいくぶん「エギゾチック」な音階漂い夢想的な雰囲気のうちに曲は閉じられる

no.2 ホ長調
第2番伴奏音型は、以前作品55-1作品48-1使用されたものと同じで、バス中声部を埋め和音からなる。これによって豊かな幅広い音響実現されている。形式は他のノクターン同じく3部形式よる。
 このノクターン二つ特徴的な和声進行によってづけられている。冒頭小節における二拍目の経過的な和音VI度(e-gis -cis)であり、それは直ちに三拍目でI度([e]-h-gis)に解決する。この二拍目の和音冒頭、しかもLentoという遅いテンポ用いられると、フランス近代響き想起させる。この冒頭進行は、最後小節カデンツにも聴くことができ、意図的に使用されているように思われる
 第32小節まで続く主題部(以下A)は、第1番のようなポリフォニー見られないが、第25小節目で主題反復されるときに見られる右手華麗な装飾音型は、第1番との共通点である。
 続く中間部(第3257小節)の開始は、右手波打つような音型で始まる。こうした左手扱いは、《12の練習曲作品10-12カルクブレンナー練習曲みられるように、30年代前後から先駆的なピアニストたちによって用いられ左手訓練のための書法である。むろん、ショパンはこうしたテクニック左手訓練というよりは、Aにおいて確立され雰囲気変化もたらしドラマ性を生み出すために使用しいているのである中間部の最も重要な特徴は続く40小節に始まるセクション見られる声部間の模倣である。それは第424951小節現れるいずれの小節でも最上声部におかれた第1、2拍目のモチーフバス声部の第2、3拍目で模倣される
 主題57小節回帰し一度だけ姿を見せたのち、第3257小節見られ左手の音型が現れコーダ導かれる曲尾の三小節カデンツ最上声のモチーフは、第40小節第1拍目から展開される動機変形である。


ヘンゼルト:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
ヘンゼルト:2つのノクターンDeux Nocturnes Op.6

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1  Schmerz im GlückNo Data No Image
2 泉 La FontaineNo Data No Image

2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
ヴォルフ, エドゥアール:2つのノクターンDeux Nocturnes Op.27
ヴォルフ, エドゥアール:2つのノクターンDeux Nocturnes Op.182
デーラー:2つのノクターン2 Nocturnes Op.25
デーラー:2つのノクターン2 Nocturnes Op.31

タールベルク:2つのノクターン


ザジツキ:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
ザジツキ:2つのノクターンDeux Nocturnes Op.10

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 変ト長調 Ges-durNo Data No Image
2 イ長調 A-durNo Data No Image

ブラックウッド:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
ブラックウッド:2つのノクターン2 Nocturnes Op.41

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 ハ長調 C major3分30秒 No Image
2 イ短調 A minor4分30秒 No Image

ルビンシテイン, アントン:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
ルビンシテイン, アントン:2つのノクターンDeux Nocturnes Op.10作曲年1848年  初版出版地/出版社Schlesinger, Ashdown, Choudens 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 ヘ長調 F-durNo Data No Image
2 ト長調 G-durNo Data No Image

マルモンテル:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
マルモンテル:2つのノクターンDeux nocturnes Op.12

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 セレナード SérénadeNo Data No Image
2 夢 RêverieNo Data No Image

ブルメンフェーリド:2つのノクターン

英語表記/番号出版情報
ブルメンフェーリド:2つのノクターン2 Nocturnes Op.6

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 アンダンテ ホ長調 Andante, E-durNo Data No Image
2 アダージョ 変ホ短調 Adagio, es-mollNo Data No Image

ショパン:2つのノクターン (第7・8番)

英語表記/番号出版情報
ショパン:2つのノクターン (第7・8番)2 Nocturnes (cis:/Des:) Op.27 CT114-115作曲年: 1835-36年  出版年1836年  初版出版地/出版社Leipzig, Paris, London 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第7番 嬰ハ短調 No.7 cis moll op.27-15分00
2 第8番 変ニ長調 No.8 Des dur op.27-25分00

作品解説

執筆者: 樋口 晃子

Deux nocturnes op. 27

 この2曲のノクターン1835年作曲され初版パリ(M. Schlesinger, 1836)、ライプツィヒ(Breitkopf und Hartel, 1836)、ロンドン(Wessel, 1836)で出版された。オーストリア駐仏公使夫人であったダッポニィ伯爵夫人献呈身分の高い彼女の捧げたことから、「貴婦人夜想曲」と呼ばれることもある。また、1組作品としてまとめられているが、これら2曲の曲想互い引き立たせるかのように著し対照をなしている。

No. 1 嬰ハ短調
 このノクターンは、他のノクターン同様、3部分(A - B - A’)からなる。AとA’で絶え伴奏音型を奏でる左手の6連符分散和音は、第13小節で2オクターヴ以上になるなど、非常に広い音域をもつ。こうした広範囲音域間のスムーズな動きは、ダンパー・ペダル(長音ペダル)の改良によって可能になった。
 冒頭第3音(e)含まない空虚5度cis, gis)という特徴的な響き前奏続いて右手方向性定まらない半音階的主題提示される初期の作品9-2第2番)や作品15-2第5番)に見られる主題反復時の華麗な装飾は、この曲では全く見られないそのかわり主題反復される際には右手旋律二つ声部加わり、「独唱」から「二重唱」へと変化している。旋律は他のノクターン比べ、非常に簡素起伏少ないが、ダンパー・ペダルの使用によって伴奏音型と見事に溶け合う。第29小節からは、雰囲気一転しドラマチックな中間部B(第2983小節)にはいる。2小節単位の短いフレーズせき立てるような同音連打、そして20小節間にわたる左手の符点二分音符の上音階半音によるトレモロによって、音域ダイナミックス一気押し広げられ、第46小節一度頂点に達する。再び第53小節から半音階的進行現れ中間部一つ情景収束する。第67小節目には作品15-3第6番)と同様、マズルカ登場するが、踊り長続きせず半音階的転調はぐらかされ、第81小節強烈な和音連打遮られる30年代ノクターンにおけるこうしたマズルカ使用は、30年勃発した11月蜂起によって掻き立てられ民族的感情表れとも解釈できる主題回帰直前長いフェルマータの中で、左手レチタティーヴォ性の強いパッセージオクターヴ奏する
 A’はAの大幅な縮小形で、第 94小節で同主調嬰ハ長調転調するが、これ以降コーダとみなすこともできる音量速度緩みながらAdagioへと向かい嬰ハ長調のまま曲を閉じる。

No. 2
 この曲は、ショパン唯一ロンド風(A, B, A’, B’, A’’, B’’, Coda)の形式書いたノクターンで、AとBの2つ主題交互に3度繰り返されるという構造をもつ。Aの甘美な旋律全体優美な曲想ゆえに、作品9-22番)や作品15-25番)と並んで演奏される機会の多い曲である。
第2番第1番同様に左手には曲全体通してフィールド好んで用いた大きな跳躍を含む分散和音伴奏型が用いられている。A(A’, A’’)は常に変イ長調現れる。A’(第26小節~)とA’’(第46小節~)はAとほぼ変わらないが、その都度右手の単旋律装飾的変化加えられている。例えば、A’ではピアノという楽器でこそ可能な速いパッセージ(m. 32)や、A’’では非和声音ふんだんに盛り込んだ即興的なパッセージ(第5152小節)が挙げられるこのように回数重ねるごとに装飾使用程度高くなり、それに比例して高音きらめき際立つ。これらの装飾音は、ダンパー・ペダルを踏みっぱなしにしても高音部は濁ることなく、むしろ透明で輝きのある音響得られ当時楽器の特性十分に考慮して作曲されている。
 Bでは、Aの単旋律主題対し3度6度といった重音からなるもう1つ主題現れる。第10小節に始まるBでは、転調による気分高揚合わせて音量が増すと、その音程オクターヴにまで拡大される(第18小節)。最終的には、fz左手バス声部アクセント手伝って、B’の第 4245小節クライマックス迎える。続くA’’へはAの再現として主題静かに戻るのではなくffのままA主題回帰し直前曲想はしばらく保たれる主題Aのこの再現法は、作品32-210番)にも見られる
 そして、このノクターンで特に注目したいのは、異名同音使用である。例えば、第24小節では右手cisdes読み替えることで、変イ長調のA’への移行スムーズにしている。また第34小節では、前の小節右手descis読み替え変イ長調からイ長調への瞬時遠隔転調可能にしている。こうした移ろいゆく調性は、鍵盤上で即興的に手を動かす過程見出されたものであろう


ショパン:2つのノクターン (第9・10番)

英語表記/番号出版情報
ショパン:2つのノクターン (第9・10番)2 Nocturnes (H:/As:) Op.32 CT116-117作曲年: 1836-37年  出版年1837年  初版出版地/出版社Berlin, Paris, London  献呈先: Baronne de Billing n&eacutee de Courbonne

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第9番 ロ長調 No.9 H dur4分00
2 第10番 変イ長調 No.10 As dur4分30秒

作品解説

執筆者: 樋口 晃子

Deux nocturnes op. 32

 この2曲のノクターン1837年作曲され初版パリ(M. Schlesinger, 1837)、ベルリンA. M. Schlesinger, 1838)、ロンドン(Wessel, 1837)で出版された。

No. 1 ロ長調
 このノクターンは他の多くノクターンとは違って三部形式をとっておらず、全体図式は以下のよう示される



ショパン2部形式3部形式ロンド形式以外で作曲したのは、このノクターン初めてである。
 主題Aは6小節終わりフェルマータ挿入によって、考え込むような一瞬休止生み出されるフェルマータ前後配置されgis(第6小節右手)とg(第7小節左手)は、和声学においては回避されるべきとされる対斜関係をなしているが、ショパン旋律中断際立たせるためにあえてこのような和声進行選んでいる。この休止はCにも現れ何度も繰り返されるので、この曲を強く印象づけるのに一役買っている(譜例1)。

譜例1 第5~7小節



Bでは旋律右手、左手音符の旗が上付き成っている声部)に追加され3声部ポリフォニー形成する。A’はAと大きな変化はないが、第16小節にはより細分され装飾施されている。以下、B’、B’’、C’はそれぞれB、Cにわずかに装飾加えられ変化形である。
 第62小節からは、曲想一変し不気味な低音連打レチタティーヴォ風の音型に特徴づけられる劇的なコーダにはいる。第61小節ロ長調のⅤ度は主和音(h-dis-fis)に解決するではなくト長調の属七の第三転回形へと進み、同主調ロ短調へ移る。ショパンノクターンにおいて、短調の曲が同主長調で終わるという手法はよく用いられるが、このノクターンのように、長調ロ長調)の曲が同主短調ロ短調)で終わるという逆のパターンは珍しい。

No. 2 変イ長調
 第1番例外的な形式対し、このノクターン簡潔な3部形式(A, B, A’)からなる。それに加えて、Aを導く序奏と、A’の後に終結部曲尾の二小節)がついているが、この序奏終結部コラール風の全く同じ2小節である。レント速度指示があるものの、ショパンノクターン中、とりわけ明るく軽快、かつ感傷的な作品である。
 Aの主題は、夕暮れ時、ギターマンドリンなどを片手窓辺歌われるセレナード雰囲気まとっている。実際素朴な歌をささえる伴奏軽快ギターつまびき思わせる主題は、A中で何度も繰り返されるが、その音域や音型は、ソプラノ歌手のためのオペラ・アリアに非常によく似ている
中間部Bの主題はAの主題から派生しているが、Aとはきわめて対照的な曲想である。Bに入って調性平行調のへ短調に、拍子4/4拍子12/8拍子変化し両手8分音符単位同一リズム和音を刻む。第35小節からは音の層と動き増し右手半音階的進行あいまって情熱的な高まり見せる。第39小節からは第2738小節半音上の嬰へ短調繰り返し、この半音上への転調によって、中間部Bはより一層激しさ増しff達するが、その後クレッシェンド続ける。
 A’ではAがそっくりそのまま回帰するが、中間部Bの激しさ引き継ぐかのように情熱的にAppassionatoという指示のもと、ff主題戻ってくる。そして、終結部へと向かう第71小節からの非和声音を含む5連符揺れによって、ようやく激しさ緩和され静かに曲を閉じる。




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「2つのノクターン」の関連用語

2つのノクターンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



2つのノクターンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
社団法人全日本ピアノ指導者協会社団法人全日本ピアノ指導者協会
Copyright 1996-2024 PianoTeachers' National Association of Japan

©2024 GRAS Group, Inc.RSS