必殺からくり人 必殺からくり人の概要

必殺からくり人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/28 15:04 UTC 版)

必殺からくり人
ジャンル 時代劇
脚本 早坂暁
中村勝行
保利吉紀
監督 蔵原惟繕
工藤栄一
大熊邦也
松野宏軌
出演者 緒形拳
森田健作
芦屋雁之助
ジュディ・オング
間寛平
山田五十鈴
オープニング 作曲:平尾昌晃「許せぬ悪にとどめさす」「万事解決」
エンディング 川谷拓三負犬の唄
時代設定 天保年間
製作
プロデューサー 山内久司(朝日放送)
仲川利久(朝日放送)
櫻井洋三(松竹
制作 朝日放送
放送
放送国・地域 日本
放送期間1976年7月30日 - 10月22日
放送時間金曜日22:00 - 22:54
放送分54分
回数13
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必殺シリーズの第8作、必殺からくり人シリーズの第1作である。また、必殺シリーズ初の1クール(全13回)物でもある。

概要

当時、NHKドラマで高い評価を受けていた早坂暁をメイン・ライターとして迎え、キャストも映画、演劇界の大物だが、テレビの露出は少なかった山田五十鈴[1]、青春スターのイメージが強かった森田健作ジュディ・オング[2]、必殺シリーズの出演は3作目となる緒形拳がキャスティングされた。

鼠小僧蛮社の獄といった史実を下敷きとし、現代の風景から物語が始まる基本フォーマットなど、時代劇としては挑戦的な試みが随所に見られた。また、必殺シリーズとしても、全話を通して巨悪を登場させたり、頼み人から金を受け取らないなど、それまでの作品とは異なる要素を含んでいる。

劇中における「からくり人」は裏稼業と言っても必ずしも殺しを専門としているわけではなく、『必殺必中仕事屋稼業』の「仕事屋」と同じように、必要に応じて殺しも行うトラブルシューターとしての存在である。また「涙としか手を組まない」と言い放った仇吉の台詞に象徴されるように、より弱者に対して寄り添うエモーショナルな姿勢が強い。結果として、この姿勢を貫いたことが曇り一家との対立を決定的にした。

本放送当時、出演者のスケジュールは多忙を極めており、天平ととんぼは第1話では一言しかセリフがなく、メンバーが一堂に会するシーンもない。

プロの殺し屋でありながら、同時に家族的な濃密な人間関係を持った「からくり人」と脚本はドラマとしても高い評価を受け、第2話「津軽じょんがらに涙をどうぞ」は優れたテレビ・ラジオ番組に贈られる、ギャラクシー賞放送批評懇談会)の選奨を受賞した[3]。早坂は全13話中、10話を執筆しており、必殺シリーズにおける執筆数で見ても、そのほとんどを本作が占める[4]

仕事人大集合』(1982年秋)では山田五十鈴、緒形拳、森田健作の「からくり人トリオ」が再結集した。もっとも、本作品からのキャラクターとして復活したのは森田健作の天平のみで、山田五十鈴は『新・必殺仕事人』の三味線屋のおりく、緒形拳は『仕事屋稼業』の半兵衛役だった。

劇場版映画『必殺! THE HISSATSU』では別の役柄だが、山田五十鈴と芦屋雁之助が再共演を果たしている。

しかし、こうした斬新かつ意欲的な試みが、従来の必殺シリーズを見慣れた視聴者にはなかなか受け入れられなかったらしく、視聴率的には苦戦したという。チーフプロデューサー山内久司は洋泉社「必殺シリーズを創った男」のインタビューで「この時期の作品は、どれも高い視聴率がなかなか取れなかった」とコメントしている。この結果、『新・必殺仕置人』以降は「金を受け取らなければ、頼み人のいかなる頼みも受けない」「頼み人との密接なかかわりを避け、任務遂行のために見殺しにする」など、突き放した視点での非情な殺し屋たちの物語が堅持されていくこととなる。

また、後続番組の『必殺からくり人・血風編』『新・必殺からくり人』『必殺からくり人・富嶽百景殺し旅』と合わせて「からくり人シリーズ」として扱われる場合もある。4作品ともに共通する要素としては、「グループの元締めが女性である」「史実上の人物・事件が物語に大きな関わりを持つ」という点がある。

オープニングナレーションは「からくり人」一同が写った白黒写真とあやとりをしている手元のカラー映像にからくり人役の山田・芦屋・ジュディ・森田・緒形(登場順)が一人づつナレーションを行う趣向がとられた。

あらすじ

芸者置屋の「花乃屋」一家は、世間に決して言えない秘密が二つあった。それは彼らが八丈島を島抜けした罪人であること。もう一つは彼らが弱い者の恨みを晴らす、からくり人であるということ。

からくり人のメンバーは花乃屋の女主人、仇吉、船頭の藤兵ヱ。仇吉の娘のとんぼ、藤兵ヱの息子のへろ松。花火職人の天平、枕売りの時次郎。彼らを率いる元締は表では骨董商を営む、蘭兵衛。

しかし、別のからくり人組織の元締「曇り」によって、元締の蘭兵衛が殺される。「曇り」は裏で幕府と結び付いており、格安で弱い者の依頼を請け負う彼らを快く思っていなかった。仇吉は蘭兵衛の遺志を引き継ぎ、元締となり、弱者の涙のために恨みを晴らしていく。

時代設定は天保年間[5]で、天保の大飢饉蛮社の獄などが、物語に織り込まれる。


  1. ^ シリーズ 第6作『必殺仕置屋稼業』第15話に、被害者役でゲスト出演をしている。
  2. ^ ジュディはシリーズ 第5作『必殺必中仕事屋稼業』第2話に、被害者役でゲスト出演し、必殺シリーズのスタッフが制作した『おしどり右京捕物車』(1974年)に、『からくり人』の前作『必殺仕業人』で赤井剣之介役を演じた、中村敦夫扮する神谷右京の妻 はな役で、レギュラー出演をしている。
  3. ^ 第14回ギャラクシー賞受賞作品 放送批評懇談会 2015年3月3日閲覧。
  4. ^ 早坂が執筆した脚本は『必殺仕掛人』を2回(全33話)、『必殺からくり人』は10回(全13話)、『新・必殺からくり人』は3回(全13話)、『必殺からくり人・富嶽百景殺し旅』は1回(全14話)を書いている。また、上記のからくり人シリーズでは、いずれも第1話を書いている。他に、『必殺仕掛人』から『必殺仕事人』まで(『暗闇仕留人』は除く)のオープニングナレーションを手掛けている。
  5. ^ 第1話で鼠小僧が処刑される日(天保3年)の出来事が描かれ、第12話で、蛮社の獄(天保10年)を扱っていることから、劇中では7年が経過していることになる。
  6. ^ 第1 - 8、10 - 12話
  7. ^ 第9、13話はトップ クレジット
  8. ^ 劇中では名前を「のぶじゅ」と読んでいる。実際の清元節上方ではなく江戸浄瑠璃で、宗家名跡である清元延寿太夫は「きよもとえんじゅだゆう」と読む。初代から当代まで延寿太夫は男性が襲名しており、劇中の設定は史実とは全く異なる。また本作品に先んじて1975年10月10日に放映された必殺仕置屋稼業第15話 「一筆啓上 欺瞞が見えた」において、ゲスト出演した山田五十鈴の演じた清元節の師匠の芸名が「清元延寿(きよもとのぶじゅ)」(本名・たか)であった。
  9. ^ 第1 - 10、12 - 13話
  10. ^ 第1話のみ
  11. ^ キャスト表示のテロップはズーム アップ
  12. ^ 第1、3、12、13話
  13. ^ 原は後年『必殺仕舞人』シリーズに善行尼役で出演。
  14. ^ 鉄べらは手首に巻いた革紐に差しており、それを抜いて、手の中でさばく時に鳴る金属音は『必殺仕事人』で、飾り職人の秀が簪の房を鳴らす効果音として流用されている。『美少女戦士セーラームーン』で、セーラームーンがティアラを装着する際の効果音にも流用された。  
  15. ^ 「まけいぬのブルース」と読む。映像では「負け犬の唄」と表記
  16. ^ 元締の蘭兵衛が死亡。冒頭部分で、放送当時(1976年)の銀座朝日放送本社社屋が登場。
  17. ^ ギャラクシー賞受賞作品。冒頭の現代のシーンでは、山田が本人役で出演している。
  18. ^ 第11話と矛盾する要素が多数、存在する。
  19. ^ 殺しのない話。
  20. ^ 時次郎が死亡。この回は早坂の脚本が撮影開始に間に合わず、時次郎死亡場面から順に原稿が渡されて繋いでいったという。


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