ソウギョ ソウギョの概要

ソウギョ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 02:33 UTC 版)

ソウギョ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
上目 : 骨鰾上目 Ostariophysi
: コイ目 Cypriniformes
: コイ科 Cyprinidae
亜科 : クセノキプリス亜科 Oxygastrinae
: ソウギョ属 Ctenopharyngodon
: ソウギョ C. idellus
学名
Ctenopharyngodon idellus
(Valenciennes,1844)
和名
ソウギョ
英名
Grass carp

概要

原産地・中国では、淡水魚の中で最も多くの量が養殖・出荷されている[1]。植物プランクトン食のハクレン、動物プランクトン食のコクレン淡水巻貝類などを食べるベントス食のアオウオとともに「中国四大家魚」と称される。名のとおり草食で、水草や水辺のを摂食する。もともと大陸性の長大な大河とそこに連なる湖沼群に生息し、そうした環境に適応した生態を持つ。特に中国南部では、他の四大家魚とともに農業と有機的に結びついた伝統的養魚システムで養殖され、農村地帯の重要な蛋白源となってきた。ベトナムからアムール川流域まで、中国を中心に東アジアに広く分布するが日本を含む世界各地に移入され定住している外来種である。

名称

広東省などでは鯇魚(ワンユイ、広東語waan5 jyu4)と呼ばれる。ベトナムでは草のコイを意味する Cá trắm cỏ(カー・チャム・コー)と呼ばれる。

特徴

体長は2mに達する大型魚だが、日本で見られるのは殆どが体長1.2m程度の個体である。体は一様に緑灰色で、腹面は黄白色をしており、特に目立つ模様はない。コイに似ているが、コイの背びれは前後に細長いのに対し、ソウギョの背びれは小さくて丸っこい。

食性

浮上期から体長 30mm 程度までの間は、雑食性で植物性プランクトンのランソウ類、ケイソウ類、緑藻類、ベンソウ類等のほか動物性プランクトン[2]ワムシミジンコを餌としている。体長 30mm程度から130mm程度までの間は、植物性プランクトン以外に浮遊する動物性ものやユスリカをエサとしている[3]。体長 130mm程度を越えた個体は草食性で、水中で成長する藻や水面で成長するウキクサヒシなどの他、マコモヨシなどの抽水植物や水面上に垂れ下がった雑草なども食べる。口に歯はないが、喉に丈夫な咽頭歯をもち、これで植物を刈り取って摂食する。緑色をした1cmくらいの丸い糞が新鮮な状態で水面に浮いているのを確認できたらソウギョが近くにいる可能性が高い。

繁殖

繁殖期の初夏になると、成魚は大河に集まって上流に向けて遡上し、水温18℃以上で産卵活動を行い[2]浮遊性の大型卵を産み落とす。産み出されると水を吸い受精卵は5mm程度に膨らみ大河の流れに乗ってゆっくりと下り、約50時間から70時間で卵黄を持った仔魚が孵化する。卵は海まで流されると死んでしまうため、日本列島では海まで距離があり、勾配が弱く流れが緩やかな利根川水系以外では自然繁殖が成功しない要因とされている。この繁殖行動と浮遊卵という特性はハクレンなど他の四大家魚にも共通する。利根川でも水門が相次いで建設された結果、20世紀末頃には利根大堰より上流へはソウギョやハクレンの遡上も困難になっている[4]。埼玉県では、種苗養殖が行われている。

昭和30年代には埼玉水産試験場が人工受精に成功[5]、種苗育成の際にはホルモン注射による採卵も行われている[6]

養殖

中国では華南を中心に、四大家魚を同じ養殖池を使って養殖することが行われてきた。現代の大規模な養殖法では別々に養殖されるが、四大家魚を含む全淡水魚の内で最も出荷量が多く、2010年には中国全体で422.2万トンが出荷された。省別では、湖北省(77.2万トン)、広東省(61.1万トン)、湖南省(54.5万トン)、江蘇省(38.1万トン)、江西省(37.9万トン)、広西チワン族自治区(23.1万トン)、安徽省(23.0万トン)、山東省(20.1万トン)の順であった[1]

寿命

一般に、寿命は7年-10年ほどと言われているが、条件が揃えば、20年以上[7]とされている。

長野県の野尻湖では水草除去目的で1978年に5000匹ほど放流された[8]が、2017年時点では100匹程度にまで減少したと推定されている[8]

中国安徽省休寧県には、個人宅の池で1970年から飼育されている個体「魚王」がおり、人々に親しまれている[9]


  1. ^ a b 農業部漁業局編、『2011 中国漁業年鑒』p188、2011年、北京・中国農業出版社、ISBN 978-7-109-16084-2
  2. ^ a b c 埼玉県水産試験場 土屋 実 : ソウギョの生態およびソウギョによる水性雑草防除の展望 雑草研究 Vol.22 (1977) No.1 P1-8
  3. ^ 橋本徳蔵:ソウギョおよびレンギョの稚魚の天然餌料 水産増殖 Vol.9 (1961-1962) No.2 P61-66
  4. ^ 昭和44年行田市に利根大堰ができるまでは、その上流の熊谷市妻沼地先でもハクレンの産卵が見られた。ハクレンジャンプ(巨大魚のジャンプ).埼玉県久喜市HP 2020年7月26日閲覧。
  5. ^ ソウギョ類のフ化装置と活卵率の経時的変化 埼玉県水産試験場研究報告 41号, p.18-28(1982-03)
  6. ^ ソウギョの人工採苗について 埼玉県水産試験場研究報告 42号, p.17-28(1983-03)
  7. ^ 京都府外来生物データ(ソウギョ):京都府 外来生物情報
  8. ^ a b 遊佐暁、Gaston Guido San Cristobal、鄭紫来 (2017). “野尻湖における外来魚の受容過程と資源利用” (PDF). 地域研究年報 (筑波大学人文地理学・地誌学研究会) 39: 113–124. ISSN 1880-0254. http://www.geoenv.tsukuba.ac.jp/~chicho/nenpo/39/06.pdf 2018年9月16日閲覧。. 
  9. ^ 張應松 (2020年10月3日). [big5.xinhuanet.com/gate/big5/m.xinhuanet.com/gd/2020-10/03/c_1126571417.htm “頭一遭,50歲“魚王”過生日”]. 新華網. big5.xinhuanet.com/gate/big5/m.xinhuanet.com/gd/2020-10/03/c_1126571417.htm 2021年3月14日閲覧。 
  10. ^ 青鉛筆『朝日新聞』1978年(昭和53年)1月28日朝刊、13版、21面
  11. ^ 野尻湖・近鉄前水草復元区にソウギョ侵入 野尻湖水草復元研究会
  12. ^ 木崎湖における車軸藻類の分布(2001~2002) 長野県環境保全研究所研究報告 (1), 29-37, 2005
  13. ^ 江戸川は利根川の分流(派川)で利根川水系である。
  14. ^ 中国綜合養魚の生態・生理学的研究-I 好気的実験条件下におけるソウギョの糞の分解過程 陸水学雑誌 Vol.53 (1992) No.4 P341-354


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