スタジオジブリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/14 07:12 UTC 版)
歴史
社歴
1985年6月15日、東映アニメーション出身の原徹が設立したトップクラフト[注 2]を前身に、徳間書店の出資によって子会社として株式会社スタジオジブリ設立[3][4]。当時の同社社長である徳間康快が、初代代表取締役社長に就任した。ただし、実質的な経営財務責任者はトップクラフトに引き続き原のままであった[注 3]。当時はスタジオジブリ関連書籍の大半が徳間書店から出版され、同社の他メディア展開推進の中核的存在でもあった。
設立当初からしばらくの間は、映画の興行収入が水物であることを鑑みて、いつでも終わりにできるよう社員の雇用はせず、作品ごとに70人ほどのスタッフを集めて完成すると解散する方式を取っていた[3]。アニメーターは他社同様に業務委託契約による歩合制で、場所も吉祥寺の貸しビルのワンフロアーだった[3]。しかし、1989年公開の『魔女の宅急便』のヒットを機に、宮崎駿の提案によってスタッフの社員化と固定給の導入、新人の定期採用と育成という方針に転換し、スタジオの安定経営のために、宣伝にも積極的に取り組むようになった[3]。同年7月の映画公開のタイミングで発売された『アニメージュ』に、研修生採用試験の募集広告[注 4]を掲載[5]。一次試験はオリジナルの企画書による書類選考、二次試験は宮崎と高畑勲の設問による記述式で東京都で行われた[5]。合格者のうち、10月に入社した者は1期生、1990年に入社した者は2期生と数えられ、1期生には小西賢一、村田和也、2期生には安藤雅司、笹木信作、吉田健一らがいる[5][6]。また、細田守もこの試験を受けており、結果は不合格だった[7]。この研修制度はこの1回限りで終了し、その役割は1995年と1998年に開催された東小金井村塾に引き継がれた[8][9]。
1997年に、徳間書店の社内カンパニー導入により一旦は徳間書店に吸収合併されるが、2005年に宮崎、高畑、鈴木敏夫が取締役である株式会社スタジオジブリが、過去の作品も含めたスタジオジブリ作品の営業権を、100億円から200億円の対価で徳間書店から譲渡されることで、再び分離・独立する[4][10]。
2014年に制作部門を解体し、一時アニメーション制作から撤退[11]。以降、会社本体は存続させるが、主な事業形態を三鷹の森ジブリ美術館の運営管理や作品関連グッズや版権の管理事業に移行し、新たに作品制作に動き出す際に再びスタッフを集めるという体制となる[11]。
2022年、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園にジブリパークを開園した[12][13]。
沿革
1980年代
- 1985年6月15日 - 株式会社スタジオジブリ設立。当初の場所は、吉祥寺駅付近の4階建ての第2井野ビルの2階。
- 1987年 - スプリングハウスが完成し、同ビル2階に第2スタジオが入居する[14]。
- 1989年10月 - 徳間書店を退社した鈴木が、スタジオジブリ専従の制作部長に就任。
- 1989年11月 - スタッフの社員・常勤化、研修生制度、定期新人採用の開始。
1990年代
- 1991年 - 宮崎の新スタジオ建設案で、経営方針の対立が勃発。原が常務を辞任して退社し、後任に鈴木が就任。
- 1992年 - 東小金井駅付近に、宮崎設計でジャストホームの清川実が請け負った地上3階地下1階の新社屋が完成。
- 1997年 - 経営悪化した徳間書店の収益確保の一環で徳間書店に吸収合併され、株式会社スタジオジブリは解体。徳間書店の社内カンパニー株式会社徳間書店スタジオジブリ・カンパニーに改組。同年『もののけ姫』完成後、宮崎が退社。
- 1999年 - 徳間書店が事業部制を導入し、株式会社徳間書店スタジオジブリ事業本部に改称。さらに、宮崎がスタジオジブリ所長として復帰。
2000年代
- 2004年 - 株式会社徳間書店スタジオジブリ事業本部を、有限会社スタジオジブリに分割。
- 2005年 - 徳間書店からの分離・独立により[4][10]、組織形態を有限会社から株式会社へ変更[15]。株式会社スタジオジブリが、株式会社徳間書店スタジオジブリ事業本部の業務すべてを継承。鈴木が代表取締役社長に、宮崎とスティーブン・アルパートがそれぞれ取締役に就任した。
- 2008年 - 鈴木が社長を退任し、代表権を持つプロデューサーに就任。後任の代表取締役社長には、元ウォルト・ディズニー・ジャパン社長の星野康二が就任した。
- 2009年 - トヨタ自動車[注 5]本社内に、新スタジオとして西ジブリを開設[16][17]。
2010年代
- 2010年 - 西ジブリを閉鎖。
- 2014年 - 制作部門の解体を発表。社内では、年内をもって制作部門スタッフ全員の退職が発表される[18]。
- 2015年 - 第20回釜山国際映画祭において、アジア映画人賞を受賞[19]。
- 2017年 - 宮崎の新作長編アニメーション映画の本格的な始動にともなう制作部門の活動再開、および新人スタッフの募集開始を発表。代表取締役社長に三鷹の森ジブリ美術館館長を務めていた中島清文が就任し、2008年から社長を務めていた星野は代表取締役会長に就任した[20]。また、現在、宮崎の長編アニメーション映画『君たちはどう生きるか』と、宮崎吾朗のテレビアニメーション『アーヤと魔女』を2本同時で制作していることを発表[21]。
- 2018年 - マンマユート団を吸収合併。
- 2019年 - 中日新聞社と共同で、ジブリパークの管理運営を担う株式会社ジブリパークを設立[22]。
2020年代
- 2021年 - 新型コロナウイルス禍に対応するため、社長の中島が退任し、三鷹の森ジブリ美術館の専従の総責任者として第2代館主に就任[23]。会長の星野が社長を兼任することとなった[23]。同美術館の設立時から館主であった宮崎は、名誉館主となった[23]。
- 2023年3月 - 星野が会長兼社長を退任し、鈴木が社長に復帰[24]。星野は6月末をもって退社した。
- 2023年9月 - 日本テレビホールディングス子会社の日本テレビ放送網が、スタジオジブリを子会社化することが発表された。同年10月6日付けでの株式取得および同月30日のスタジオジブリ株主総会決議をもって、日本テレビ放送網の福田博之が代表取締役として就任し、鈴木は代表取締役議長、宮崎は取締役名誉会長となる[25]。
- 2023年10月 - 日本テレビ放送網の子会社となり、これに伴い福田社長、鈴木議長の体制となる[25]。
- 2024年 - 第77回カンヌ国際映画祭において、名誉パルム・ドールを受賞[26]。
注釈
- ^ 由来などについては、#名称も参照。
- ^ 『風の谷のナウシカ』を制作。
- ^ 原は、初代常務に就任。
- ^ アニメーターと演出の候補生を研修生として若干名募集するという内容の、宮崎直筆の漫画による広告。
- ^ 2022年開園のジブリパークにも、グループ企業の豊田通商およびトヨタホームと共に、オフィシャルパートナーとして関わる。
- ^ これも、サハラ砂漠に吹く風に由来。
- ^ 鈴木は、「『ジブリ』という名称を捨てるのは、もう全然気にならない」と記している。
- ^ 『シンデレラマン』、『すべてはその朝始まった』、『最終絶叫計画4』、『こわれゆく世界の中で』の4作品を含む。
- ^ レンタルDVD仕様は、本編ディスクのみ。
- ^ 販売元は、エイベックス・エンタテインメント。
- ^ 2013年公開の『風立ちぬ』主題歌の松任谷由実による『ひこうき雲』は、ユニバーサルミュージック。
- ^ 過去に、徳間書店のシネマ・コミックや、同アニメージュ文庫などで出版された書目。
- ^ 制作はトップクラフトであり、厳密にはスタジオジブリ作品ではないが、同社の公式サイト内の作品一覧に記載されているなど、スタジオジブリ作品として取り扱われることが非常に多い。また、社会一般からもスタジオジブリ作品の1つとして幅広く認知されている。
- ^ 監督は存在しないが、宮崎が構成を、稲村武志が演出アニメーターをそれぞれ担当している。
- ^ 『千と千尋の神隠し』が受賞。
- ^ スタジオジブリの技術に対する評価。
- ^ 『風の谷のナウシカ』の#米国版も参照。
- ^ 朝日新聞の記事によれば、ロサンゼルス国際アニメーション映画祭の長編部門で1位になるなど、オリジナル版の評価はされていた。
- ^ 『借りぐらしのアリエッティ』が1522館、『崖の上のポニョ』が927館、『千と千尋の神隠し』が714館。
- ^ カナダについては、6月から8月にかけて順次配信している。
- ^ 当時の日本テレビ放送網専務。
- ^ 寺田農など。
- ^ 『おもひでぽろぽろ』・『耳をすませば』の本名陽子、『千と千尋の神隠し』の入野自由は、現在は専業声優だが、出演当時は子役だった。
- ^ つかもと景子、斉藤志郎、山像かおり、山田里奈、八十川真由野、山本道子、山本郁子など、洋画から韓国ドラマの吹き替えで活躍している顔ぶれが並ぶ。
- ^ 宮崎は、1987年公開の『紅い眼鏡/The Red Spectacles』のパンフレットに、自身が脚本で押井が監督するはずだった長編アニメーション映画がつぶれてスケジュールが空いたときに、2人で知床まで自動車旅行をした話を寄稿している。
- ^ 脚本は宮崎。宮崎の構想によると、舞台は当時の東京。お姫様のような不思議な少女が何者かに追われて、偶然に出会った少年がその少女を逃がすためにある場所まで送り届けると、また違う人間が別の場所まで送り届けるという、恋愛要素を含んだ冒険もの。
- ^ 宮崎・高畑も東映アニメーションからキャリアをスタートしており、後輩にあたる。
- ^ これ以前に、スタジオジブリと合併した二馬力で、製作が宮崎、監督が高畑で、1987年公開の実写映画『柳川堀割物語』を制作している。
- ^ 東映アニメーションでの宮崎・高畑の先輩であり、数多くの作品で共に仕事をしてきた。また、宮崎・高畑の指導者的な立場でもあった。
- ^ 企画と脚本だけは宮崎が用意。
- ^ ただし、のちに撤回している。
- ^ これは、『君たちはどう生きるか』公開時にスタジオジブリがXにて投稿したモールス信号であり、同作に登場する青サギ/サギ男の鳴き声を表したもの。
- ^ 2010年頃の会場からは『借りぐらしのアリエッティ』も。
- ^ 札幌シネマフロンティア、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズ名古屋ベイシティ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズ天神。
- ^ この5作品は、全て宮崎駿監督作品である。
- ^ 宮崎市にもあったが、閉店した。
- ^ アニメイトでは、グループ企業のムービックが関わるグッズのみ販売。
出典
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