シソ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 14:18 UTC 版)
食材
通常、食用にするのは青ジソと赤ジソで、青ジソは「大葉」の名でも知られている[11][26]。ペリルアルデヒドに由来する特有の香りと辛味を持った、和風ハーブの代表格とされる。葉はもとより、若芽、花穂、実も食用にされ、主に刺身や手巻き寿司、冷奴などの料理の香味付けや彩りなどの添え物、魚の臭み消しなどに使われる[27][26]。野菜としての旬としては、青ジソは夏から秋(7 - 10月)、赤ジソは初夏(6 - 7月)とされる[26]。青ジソは、緑色が濃くて軸の先が新鮮で変色していないものが良品とされる[26]。
保存方法は、湿らせたペーパータオルなどで包んでビニール袋に入れて乾燥を防ぎ、冷蔵庫で数日ほど持つ[3]。
- 赤ジソ(赤紫蘇)
- アントシアン系の赤橙色のシアニジンと言う色素成分を含み、日本では梅干しを作る際に、梅の成分であるクエン酸によってシアニジンが強く赤く発色することで、梅干しの発色や[28]漬物の色づけに使う[3]。葉を乾燥させたものは七味唐辛子に配合されることもある他、ふりかけなどにも用いられる[3]。湯で煮て砂糖を加えシソジュースにする利用法もある[9]。居酒屋などで、焼酎などの酒類の割物として提供されるバイスも、赤紫蘇エキスを原料としている。
- 赤ジソは酸に触れると鮮やかな紅色に発色する性質があるが、灰汁(アク)が強いため、最初に塩揉みをして出てくる黒いアク汁だけを捨てる[10]。梅干しづくりで梅の実と一緒に漬けるときは、アク汁を出したあとの赤ジソに、梅酢を少量かけると美しい赤色が得られる[10]。
- 青ジソ(青紫蘇)
- 日本では葉や花を香味野菜として刺身のつまや天ぷらなどにする[10]。青ジソの若葉を摘んだものは「大葉(おおば)」とよび[7]、麺類の薬味として用いられることも多い[11]。西日本の一部では「青蘇(せいそ)」とも呼ぶ。香りがよく、ほのかに苦味がある[3]。
- 穂ジソ
- 熟さない実を付けた「穂ジソ」、花が開き掛けの「花穂ジソ」は刺身のつまに用いる。花穂のつぼみ、または花が落ちて実が未熟なうちに摘んだものを「穂ジソ」と呼び[7][10]、刺身のつまなどに使われ、種子が熟しかけたシソの実は摘み取ってから塩漬け、醤油漬け、佃煮に使われる[3][10]。穂ジソのつぼみが開いたものは「花穂ジソ」で、主につまや飾りに使われる[3]。箸または手指で茎からこそげ落として使用する。日本では萼ごと食用とし、乾燥させて茶漬けなどの風味付けに用いたり、食塩や醤油で漬物にしたり、また穂ごと天ぷらにしたりする。実は、茶漬けの風味付けのほか、砂糖・酒・醤油で佃煮にする[11]。赤紫蘇のプチプチした食感と独特の風味がある。
- 芽ジソ
- 発芽して間もない双葉の状態の若芽(スプラウト)のことで、赤ジソの芽は「紫芽(むらめ)」、青ジソの芽は「青芽(あおめ)」という[10]。刺身のつまやあしらい、天ぷら、吸い物にする[11][10]。
漬物
柴漬(紫葉漬)は、ナスを主体に、キュウリ、ミョウガなどとともにシソを加えて漬け込んだ漬物である[29]。
また、紫紅色のシソを塩漬けしたものに梅酢を加えたものは「もみじそ」などといい、梅干し(シソ漬け梅干し)に用いられる[30]。このもみじそ(しそ漬け梅)を数日間天日干しし、すり鉢で細かくしてから、ふるいにかけたものを「ゆかり」という[30]。開花後の実も、醤油漬けや塩漬けなどの漬物に利用できる[9]。
生のシソは10%の塩水に重しをして一晩つけておき、黒いアク汁を捨ててから、さらに20%の塩で漬け直しておくと保存でき、塩抜きしてから使用する[11]。
シソ油
シソの種子からは、シソ油が取れる。シソ油には抗酸化作用のあるα-リノレン酸を多く含む[27]。このため最近では健康食品としても注目されている。リノレン酸は酸化され易いため、同食用油の開封後は早めに消費する事が勧められる。また2004年には国民生活センターが、また2008年に日本即席食品工業協会がスチロール製容器を使用するカップ麺に入れた場合、容器が溶ける事があるとして注意を呼びかけている[31][32]。
なお、シソ科シソ属のエゴマの種から得られた精油も、「シソ油」と呼ばれることがある。よって、「シソ油」という名称の商品が、シソの実から作られた油なのか、エゴマの実から作られた油なのかを判別するのは多少の注意を要する。通常、エゴマから作られた油であれば、食品表示法に違反しないようその旨の記載が存在するはずである。
栄養価
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 155 kJ (37 kcal) |
7.5 g | |
食物繊維 | 7.3 g |
0.1 g | |
飽和脂肪酸 | 0.01 g |
多価不飽和 | 0.01 g |
3.9 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(110%) 880 µg(102%) 11000 µg |
チアミン (B1) |
(11%) 0.13 mg |
リボフラビン (B2) |
(28%) 0.34 mg |
ナイアシン (B3) |
(7%) 1.0 mg |
パントテン酸 (B5) |
(20%) 1.00 mg |
ビタミンB6 |
(15%) 0.19 mg |
葉酸 (B9) |
(28%) 110 µg |
ビタミンC |
(31%) 26 mg |
ビタミンE |
(26%) 3.9 mg |
ビタミンK |
(657%) 690 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 1 mg |
カリウム |
(11%) 500 mg |
カルシウム |
(23%) 230 mg |
マグネシウム |
(20%) 70 mg |
リン |
(10%) 70 mg |
鉄分 |
(13%) 1.7 mg |
亜鉛 |
(14%) 1.3 mg |
銅 |
(10%) 0.20 mg |
セレン |
(1%) 1 µg |
他の成分 | |
水分 | 86.7 g |
水溶性食物繊維 | 0.8 g |
不溶性食物繊維 | 6.5 g |
ビオチン(B7) | 5.1 µg |
硝酸イオン | 0.1 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[34]。試料: 青じそ(別名 : 大葉)
廃棄率: 小枝つきの場合 40 % | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
シソはβ-カロテン、ビタミンB群、ビタミンC、食物繊維や、カルシウム、鉄、カリウムなどのミネラルを多く含む[7]。特に、β-カロテン、カルシウム、ビタミンB1の含有量は、野菜類の中でも群を抜いて優れている[26]。ただし、シソを多量に摂取することは日常ではまずないが、栄養量が豊富な野菜であることから、一般書の紹介などでは食べる機会を増やすことを勧めている[26][10]。シソ特有の香りの元である精油成分のペリルアルデヒドは、臭覚神経を刺激して胃液の分泌を促し[27]、食欲を増進させる他、健胃作用や強い殺菌作用により食中毒の予防にも効果がある[3][10]。また、ポリフェノールの一種である香り成分には、強い抗酸化作用がある[26]。
防腐・細菌の増殖抑制・殺虫効果
シソの香り成分にもなっている精油は、ペリルアルデヒドを約55%含み、この成分が防腐作用と殺菌作用を持っている[28]。防腐効果は、5–10%の食塩との併用によって得られると報告されている[35]。この性質を利用して梅干しが作られる。そのまま使用した場合には、防腐効果や食中毒原因細菌の増殖抑制効果は無い[36]。
刺身などの生もの料理にシソが添えられているのは、昔から続いている食べ合わせの経験の知恵に基づいたものである[7]。粕谷らによる1988年の報告によれば[37]、カツオやアジなどの青魚に寄生している線虫のアニサキスに対する殺虫作用があることが報告されており、昔から刺身を食べる際は青ジソの葉や穂ジソなどを薬味として用いているが、このときアニサキスが胃壁などに絡みつくために起こる胃痛を防ぐという効果もあったことを示している[28]。
血糖値上昇抑制作用
ラットを対象とした動物実験で、シソに含まれるロスマリン酸にα-グルコシダーゼ阻害作用による血糖値上昇抑制作用があり、また、シソに含まれる成分にブドウ糖吸収抑制作用があるとする報告がある[38]。
アミロイドβ凝集を抑制
シソにはロスマリン酸が含まれている。ロスマリン酸を摂食したマウスの脳内において、ドーパミンをはじめとするモノアミンの濃度が上昇し、それらがアルツハイマー病の主病態であるアミロイドβ凝集を抑制した[39]。
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