複素線積分
(contour integration から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/30 22:43 UTC 版)
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解析学 |
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複素解析における線積分(せんせきぶん、英: line integral)とは、複素平面内の道に沿った積分であり[1][2][3]、特に道が単純閉曲線の場合の線積分を周回積分(しゅうかいせきぶん、英: contour integral)ということがある。
線積分は複素解析の手法である留数計算と密接に関連している[4]。
線積分のひとつの使い方として、実変数だけの方法を使うことでは容易には分からない、実数直線に沿った積分の計算がある[5]。
線積分の方法は以下を含む。
これらの積分や和を求めるために、これらのうちのひとつ、あるいは、複数を組み合わせた、また、極限をとる様々な方法を使うことができる。
複素平面内の曲線
複素解析において、積分路は複素平面内の曲線の一種である。路に沿う積分では、積分路がその上で積分が適切に定義できる曲線の正確な定義を与える。複素平面内の曲線は、実数直線の閉区間から複素平面への連続関数 z: [a, b] → C として定義される。
曲線のこの定義は、直感的な概念と一致するが、閉区間からの連続関数による径数付けを含む。このより正確な定義により、曲線が積分に有用なためにもたなければならない性質が何であるかを考えることができる。以下の小節では、積分できる曲線を、向きを与えることができる有限個の連続曲線から作ることのできるものだけに絞る。さらに、「断片」は互いに交わらない場合だけを考え、各断片は有限の(消えない)連続微分を持つと仮定する。これらの仮定は次のような曲線だけを考えることと対応する。例えばペンによって、切れ目なく一筆書きで、曲線の新しい断片を始める時だけ止まり、ずっとペンは持ち上げないように、たどることができる[6]。
向き付けられた滑らかな曲線
積分路はしばしば向き付けられた滑らかな曲線のことばで定義される[6]。これらは、滑らかな曲線の「断片」の正確な定義を与え、積分路は断片からなる。
滑らかな曲線とは、曲線 z: [a, b] → C であって、微分が消えず連続で、各点が一度だけ通過される(z が単射である)ものである、ただし終点が始点と一致する場合 (z(a) = z(b)) だけは例外である。終点が始点と一致するような場合には、曲線は閉曲線と呼ばれ、関数は他のいたるところ単射でなければならず、微分はその一致する点で連続でなければならない (z'(a) = z'(b))。閉でない滑らかな曲線はしばしば滑らかな弧と呼ばれる[6]。
曲線の径数付けにより曲線上の点に自然な順序が入る:x < y のとき z(x) は z(y) より"小さい"。このことは向き付けられた滑らかな曲線 (directed smooth curve) の概念を導く。特定の径数付けに依存しない曲線を考えるのが最も有用である。このことは同じ方向を持つ滑らかな曲線の同値類を考えることによってなされる。すると方向をもつ滑らかな曲線は、ある滑らかな曲線の像である複素平面の点の集合に(径数付けから定まる)自然な順序をいれたものとして定義できる。点のすべての順序付けが滑らかな曲線の自然な順序であるわけではないことに注意。実は、与えられた滑らかな曲線は、そのような順序付けを2つしかもたない。また、ひとつの閉曲線は任意の点を終点として持つことができるが、滑らかな弧の終点となるのは2点のみである。
積分路
積分路はその上で路に沿う積分を定義する曲線のクラスである。積分路は向き付けられた滑らかな曲線の有限列 γ1, ..., γn からなる向き付けられた曲線であって、すべての 1 ≤ i < n に対して γi の終点が γi+1 の始点と一致するようなものである(そうすると向きが上手く定まる)。積分路はすべての向き付けられた滑らかな曲線を含む。また、複素平面の一点も積分路と考える。記号 + が曲線をつないで新しい曲線を作ることを表すためにしばしば用いられる。したがって n 個の断片からなる積分路 Γ を
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(確率論においてコーシー分布の特性関数のスカラー倍として生じる)は初等解析学のテクニックでは困難である。それを次の積分路 C に沿った線積分の極限として表示することにより計算しよう:実数直線を −a から a まで沿って行き、0 を中心とする半円に沿って a から −a まで反時計回りに行く。a を 1 よりも大きく取って、虚数単位 i が曲線の内側に入るようにする。線積分は
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右の図は
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問題となる留数の値を得るため、再びコーシーの積分公式もしくは留数定理を用いることができる。しかしここで注意すべき重要なことは、z1/2 = e(1/2)Log(z) であり、z1/2 には分岐切断があるということである。このことは、積分路 C の選び方に影響してくる。
対数関数の分岐切断は、普通は実軸のうち負の部分と定めることが多いが、こうすると計算がやや面倒になる。そこでここでは、実軸の正の部分と定めることにする。
ここで、次のような経路を順にたどって得られる、いわゆる「鍵穴積分路(keyhole contour)」を用いる。
- 原点を中心として時計回りにほぼ1周する半径 ε の小さな円
- 実軸に上半平面側から接近して(接触はしていない)平行な線分
- 反時計回りにほぼ1周する半径 R の大きな円
- 実軸に下半平面側から接近し平行な線分
z = −2 と z = −4 は大円が囲む内部にあることに注意する。被積分関数の分母を因数分解すれば、これらが2個の極だとがわかる。分岐点は z = 0 だが、これは原点を迂回したことによって避けられている。
γ を半径 ε の小円、Γ を半径 R の大円とする。このとき積分路は
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この節では、
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次の積分を計算したい。
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この節の加筆が望まれています。 (2013年11月)
関数の積分表現 (integral representation) とは路に沿う積分を含む関数の表示である。様々な積分表現が多くの特殊関数に対して知られている。積分表現は理論的な理由で重要となり得る。例えば解析接続や関数等式やときには数値評価を与える。
例えば、リーマンのゼータ関数 ζ(s) のディリクレ級数を用いたもともとの定義
は Re(s) > 1 に対してのみ有効である。しかし
(ただし積分はハンケルの積分路 H 上する)はすべての複素数 s に対して有効である。
関連項目
参考文献
- ^ John Stalker (1998). Complex Analysis: Fundamentals of the Classical Theory of Functions. Springer. p. 77. ISBN 0-8176-4038-X
- ^ Joseph Bak & Donald J. Newman (1997). Complex Analysis. Springer. Chapters 11 & 12, pp. 130–156. ISBN 0-387-94756-6
- ^ Steven George Krantz (1999). “Chapter 2”. Handbook of Complex Variables. Springer. ISBN 0-8176-4011-8
- ^ Dragoslav S. Mitrinovic & Jovan D. Keckic (1984). “Chapter 2”. The Cauchy Method of Residues: Theory and Applications. Springer. ISBN 90-277-1623-4
- ^ Dragoslav S. Mitrinovic & Jovan D. Keckic (1984). Chapter 5. ISBN 90-277-1623-4
- ^ a b c d e Edward B. Saff & Arthur David Snider (2003). Chapter 4. ISBN 01-390-7874-6
注釈
- ^ (訳注)実軸に平行な路に沿った複素線積分の収束性については、厳密にはもう少し議論が要るように思われる(これに続く例でも同様)。 この箇所の実軸下側の複素線積分について述べれば、例えば、n を自然数、x ∈ [0, +∞)、1A(・) を指示関数として
関連文献
- Titchmarsh, E.C. (1939), The Theory of Functions (2nd ed.), Oxford University Press, ISBN 0-19-853349-7
- Jean Jacquelin, Marko Riedel, Branche univalente, Les-Mathematiques.net, in French.
- Marko Riedel et al., Problème d'intégrale, Les-Mathematiques.net, in French.
- Marko Riedel et al., Integral by residue, math.stackexchange.com.
- Various authors, sin límites ni cotas, es.ciencia.matematicas, in Spanish.
- W W L Chen, Introduction to Complex Analysis
外部リンク
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Complex integration, method of”, Encyclopaedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4
- A collection of examples
- Residue Calculus Module by John H. Mathews
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