Variance
ポーカーではないけれども、簡単な例をあげる。2枚のクォーター(=$0.5)を投入するごとに「必ず」$1がペイアウトされるスロットマシンにおいては、分散は全くない。1回勝負する毎の平均収益は$0.5であり、また回す毎に確実に0.5$の収益がある訳である。これに対し、同じく毎回0.5$を投入するスロットマシンで、普段は単にこれを吸い込むだけだが、1万スピン毎に $10,000のジャックポットを吐き出すマシンも、1回勝負する毎の平均収益は0.5$であり両者は全く同じである。即ち、どちらのマシンで勝負しようとも十分大きなプレー数があれば、実際のプレーにおける収益も0.5$/プレーに近づいていく訳である。しかし、 後者のマシンでは、実際の結果を平均的な収益に近づけるためには、ものすごく大きい数のプレー数が必要な訳であるから、分散も非常に大きいということになる。
分散があることによって、ポーカーの結果も実力を反映したものになることは実はそれほどない。これによって、良いプレーの大切さということが忘れ去られがちになってしまう。ベストプレーヤーが毎回ベストハンドでスタートしたとしても、50%をはるかに下回る勝率しか残せないこともあるのである。熟練のプロが何日も、何週間も特にミスプレーをしなくとも負け続けることだってありえるのである。逆に、下手なプレーはnegative expectation(平均すれば損をする)訳ではあるが、短期間の間ではこの下手なプレーで儲かることだってあるのである。例えば、プレーの判断としては非常にお粗末であったとしても、とんでもなく確率の低いドローを成功するという幸運に恵まれることはいくらでもありえる。しかし分散があることによって、負け組プレーヤーも「「長く」プレーしてれば儲かる」という錯覚に陥るのである。もちろん、実際には分散があることによって、負け組プレーヤーでも「短期間」のプレーでは儲かることもあるのではあるが。。
ポーカーにおいては、ある特定のプレーを高い分散(荒れの大きい)プレーと、低い分散(荒れの小さい)プレーに分類することがある。例えば、ものすごく確率の低いドローで最後までついていくために何ベットか必要ではあるが、ポットが十分大きいのでコールが正解であるような状況を、平均としてとらえれば一応コールすることにより儲かる訳であるが、コールする気になれないほど分散が大きいということになる。このような状況は、典型的なhigh-variance bet(ハイバリアンスベット:リスクの大きいプレー)、即ちうまく行ったときの見返りは大きいが、成功する確率が小さいプレーである。一方、他のプレーヤーのプレースタイルが自分の結果の分散に与える影響も見逃せない。 例えば、同じテーブルのプレーヤーの多数が、cap(キャップ)をしたがり、またどんな2枚のカードでもflop(フロップ)を見に行きたがるmaniac(マニアック)であれば、このテーブルにおいて勝負の結果の分散は高くなる。 逆に、レイズされたときに非常に高い確率でフォルドするような極めてweak(ウイーク)でpassive(パッシブ)なプレーヤーが多ければ、自分の結果の分散は小さくなる。分散(ゲームの荒れ具合)が、ゲームそのものの性質だけでなく、自分と他のプレーヤーのプレースタイルに影響されることは極めて明らかである。
このようにポーカーの中では、"variance"という言葉はあいまいに使われているが、本来は、統計学の分野で正確に数学的な定義がされている用語である。もし、分散と期待値の推定値が与えられれば(そして結果についての分布の仮定があれば)、ある時間プレーした後の自分の儲け額の信頼区間(期待しうる儲け額の幅)を計算することは容易である。もしこのような説明の意味が分かりくければ、統計学についてちょっと勉強してみるのもシリアスポーカープレーヤーに取っては決して無駄なことではない。
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