JIS規格に基づかない分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/04 23:30 UTC 版)
「グリース」の記事における「JIS規格に基づかない分類」の解説
シャーシーグリース 自動車のシャーシーの軸受や摺動部に用いられるグリースをシャーシーグリースと呼ぶ。シャーシーグリースには高い耐水性が要求される一方、高い耐熱性は必要とされない。一般的にシャーシーグリースにはカルシウムグリースやリチウムグリースなどが用いられている。一方、ブレーキ用のグリースにはゴムに対する潤滑性や化学的安定性が必要とされるため、ラバーグリースが採用される。 ラバーグリース ゴム用のグリース。特徴として、ゴムの潤滑性を特に高めることと、化学的にゴムを侵さない。シリコーングリースやグラファイトグリースなどである。自動車のブレーキなど、特に荷重が大きい箇所へのラバーグリースには二硫化モリブデンや有機モリブデンなどの極圧剤が配合される。 耐樹脂性グリース 樹脂への影響が小さくなるよう設計されたグリース。樹脂と接触する(樹脂-樹脂、樹脂-金属の潤滑)、あるいは接触する可能性のある個所での潤滑に使用される。耐樹脂性がないグリースでは樹脂の潤滑においてスティックスリップ、異音、摩耗が生じやすい。特にエステル系グリースの場合、エステル系の基油は樹脂組織に浸透しやすく、樹脂折れやひび割れを起こす。耐樹脂性グリースは塗布面近傍への基油の拡散が少なく(このことを、耐拡散性が高いと表現する)、AV・OA機器等の光学部品やテープの汚染防止につながる。また、手触りが滑らかかつべたつきがない(このことを、フィーリング性が高いと表現する)。フィーリング性は、ステレオボリューム等、手動操作時の滑らかさが必要な摺動部品で必要とされる。耐樹脂性グリースの例として、基油として合成炭化水素油、増稠剤として汎用型のリチウム石けん系と耐熱性型のジウレア系が採用されている。 実験室用グリース アピエゾン (Apiezon)、シリコングリース、フルオロエーテルグリースがコックやガラス器具のすり合わせ用の潤滑剤として一般的に用いられる。グリースはすり合わせが固まって取れなくなることを防いだり、高真空系での空気漏れを防ぐ。 アピエゾンや類似の炭化水素を主成分とするグリースは高真空を作る際に最も適している。また、大部分の有機溶媒に可溶である。そのためペンタンやヘキサンを使ってふき取ることが容易であるが、反応混合物を汚染しやすい。 シリコングリースはアピエゾンやフルオロエーテルグリースよりも安価である。比較的不活性であり、普通は反応に影響を及ぼすことはないが、これも反応混合物を汚染しやすく、化合物の構造決定に用いられる 1H NMR で δ 0 付近のピークとして検出される。溶媒を使ってふき取るか、細かい構造を持つ器具の場合はアルカリバスに浸すことによって除去できる。 フルオロエーテルグリースは溶媒、酸、塩基、酸化剤に対して安定である。しかしながら高価であり、また除去することが困難である。 水溶性グリース類 グリースが持つ潤滑剤としての性能や高い粘度を有し、かつ毒性が無く油を主成分としない物質が必要とされる場合がある。カルボキシメチルセルロース (carboxymethyl cellulose, CMC) はそのような場合に用いられる水溶性グリース類の1つである。CMC は溶液のけん濁剤および潤滑剤として使われ、さらに潤滑能が求められる場合はシリコングリースが添加される。外科的処置等に用いられるこの種の潤滑剤のうち、最も一般的なものはKYゼリーである。 接点用グリース 電気・電子部品の摺動接点部や接続部などに用いるグリース。導電性を安定させ、火花の発生を防ぎ、摺動接点部や接続部の酸化や摩耗を抑制する。熱で流出せず安定した粘性を保つなどの要件が求められる。あえて導電性を持たせていないものを一般に用いるが(写真のものはその一例)、カーボンファイバーなどの導電性物質を含み、グリス自体に導電性を持たせることで、接点抵抗の低減を図ったものもある。後者は隣接する接点を不用意に導通させ、電気回路の短絡を招く場合があるので、使用場所に留意する必要がある。
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