BOからCOSCへ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 01:11 UTC 版)
「クロノメーター」の記事における「BOからCOSCへ」の解説
さらに時代を経ると国際的に統一された精度基準としてクロノメーターの基準が求められるようになった。スイス時計製造業者組合連合会(Federation de l'industrie horlogere suisse 、F.H.)は1939年に「クロノメーターは時計歩度公立検定所の名を持った権限により定められた若干の規定に合格しなければならない」と規定し、1952年にはスイスとフランスによって組織されたクロノメーター作業調整国際委員会が公認機関により公認歩度証明書を交付することを決めた。この協定には後にドイツとイタリアが参加し、コンクールと特別調整時計を担当する天文台はスイスのジュネーヴ、ヌーシャテル、イギリスのキュー、フランスのブザンソンが、一般時計を検定する時計歩度公認検定局(Bureaux Official 、B.O.)としてはスイスのラ・ショー=ド=フォン、ビール、ル・ロックル、サンティミエ(Saint-Imier )、ジュネーヴ、ル・サンティエ(Le Sentier )、ル・ルソール(Le Ressort )、イタリアのミラノ、ドイツのハンブルク、シュトゥットガルト、ブラウンシュヴァイクが公認を受けた。 1961年には上位規格として優秀級が定められた。1965年には国際標準化機構でクロノメーター規格について論ぜられるようになり、1976年にはクロノメーター規格がISO規格として定められた(ISO 3159)。1973年にスイスの時計歩度公認検定局はスイス公式クロノメーター検定機関(Contrôle Officiel Suisse des Chronomètres 、C.O.S.C.)として新たに設立。現在機械式ムーブメントは次のような条件により15日の時刻の遅れや進みを測定・記録し、値を算出する。 姿勢差 垂直・12時位置下向き(0-2日目) 垂直・12時位置右向き(3-4日目) 垂直・12時位置左向き(5-6日目) 水平・文字盤側下向き(7-8日目) 水平・文字盤側上向き(9-13日目) 再び垂直・12時位置下向き(14-15日目) 温度差 温度23℃(0-10日目) 温度8℃(11日目) 再び温度23℃(12日目) 温度38℃(13日目) 再び23℃(14-15日目) 基準項目 平均日差 - 1日を経過しての進み遅れの最初の10日の平均 平均日較差 - 同じ姿勢と温度で測定した2日間の日差の差(日較差)の平均 最大日較差 - 最初の10日の5姿勢の日較差の最大値 垂直・水平の姿勢差 - 垂直姿勢での平均日差から、水平姿勢での平均日差を差し引いた値 最大姿勢偏差 - 最初の10日の各日差と平均日差との最大値 温度係数 - 温度が8℃の日の日差と38℃の日の日差の差を温度差で割った値 復元差 - 14-15日の日差から、0-1日の日差および1-2日の日差の平均値を差し引いた値 認定基準(機械式時計の場合) 【ムーブメントの直径20mm以上で面積314mm2以上の場合】 平均日差=-4〜+6秒 平均日較差=2秒以内 最大日較差=5秒以内 垂直・水平の姿勢差=-6〜+8秒 最大姿勢偏差=10秒以内 温度係数=-0.6〜+0.6秒 復元差=+5〜-5秒 【ムーブメントの直径20mm未満で面積314mm2未満の場合】 平均日差=-5〜+8秒 平均日較差=3.4秒以内 最大日較差=7秒以内 垂直・水平の姿勢差=-8〜+10秒 最大姿勢偏差=15秒以内 温度係数=-0.7〜+0.7秒 復元差+6〜-6秒 クォーツ・ムーブメントにもクロノメーター規格はあるが、検定数は数万個と微々たるもので(機械式は年間140万個以上にのぼる)その9割以上がブライトリングのクォーツムーブメントで占められているという現状である。 かつて1990年代までは機械式ムーブメントがCOSC検定をパスして認定を受けるのは難しく、一部の高精度モデルのみに限られた狭き門であった。2010年代に入ってからは技術の進歩により、汎用ムーブメントを採用した普及品でもCOSC認定を取得または同等以上の精度を持つモデルは珍しくない。(実際には検定料が高額なため、10万円未満でCOSC認定取得した腕時計は限られる) 2015年にはオメガとスイス連邦計量・認定局(METAS)の協業によりマスタークロノメーター検定が開始された。COSCとの違いは検定対象がムーブメント単体ではなく完成品の時計であり、より高度な精度基準・耐水性・耐磁性・パワーリザーブについても検定を受ける。現時点で認定取得しているのはオメガとチューダー(一部のモデル)に限られる。 ロレックスが誇る高精度クロノメーター(superlative chronometer)は宣伝用の造語であり公的にはCOSC認定に過ぎないが、METAS検定のようにムーブメント単体ではなく完成品の状態で検定を受け(基準達成が難しくなる)、合格品の中でもロレックスが定めた更に厳しい精度基準を達成した物しか販売されない所に特徴がある。 なおクロノメーター認定はあくまで検定時の静的試験における精度を評価したもので、実用上の精度や経年時の狂いの少なさを示す規格ではない。オーバーホールする時などに再度クロノメーター認定を受けるにはスイスに送りCOSCの試験場で検定を受け直す必要がある。
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