3度目のタイトルと引退
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 15:51 UTC 版)
「ニキ・ラウダ」の記事における「3度目のタイトルと引退」の解説
1984年 前年ルノーでランキング2位を獲得しこの年マクラーレンに移籍してきた、ラウダにとって最後のチームメイトとなったアラン・プロストと年間を通じてチャンピオン争いをすることになる。ラウダ5勝、プロスト7勝で、予選もプロストの15勝1敗と純粋な速さではプロストに分があったものの、プロストがリタイアしたり、マシントラブルが起きたレースなどで着実に上位で生き残ってチャンピオン争いに絡んだ。このシーズンで唯一予選でプロストを上回った第2戦南アフリカグランプリではプロストを従えての1-2フィニッシュで勝利。第5戦フランスグランプリではプロストのタイヤトラブルでのピットインに乗じてリードを奪い勝利した。第9戦アメリカグランプリ終了時点では2勝する一方でリタイアも6回あり、プロストに10ポイント以上リードされたが、第10戦イギリスグランプリ以降は7戦連続で入賞した。 その中でラウダにとっては最初で最後となる地元オーストリアグランプリでの優勝も経験した。トップを走っていたブラバムのネルソン・ピケがスピンし、再出走はしたもののタイヤ摩耗が進んだのを見抜いたラウダはじわじわと差を詰めて残り10周ほどでトップに立つ。その後でラウダのマシンに変速ギアのひとつが砕けるトラブルが起きたが、ラウダのテクニックによりラップタイムを大きく落とさず、トラブルが起きているそぶりも見せなかった。2位のピケは縮まらないラウダとのタイム差を考えてポジションキープに移行し、優勝を勝ち取った。イギリスグランプリ以降、プロストは4勝3リタイアという結果だったが、ラウダはプロストがリタイアした3レースを全て制し、逆にプロストが勝利したレースでも2位3回、4位1回と着実にポイントを稼いだ。 ラウダとプロストとのチャンピオン争いは最終戦ポルトガルグランプリまでもつれ込んだ。ラウダは予選11位スタート。プロストが1周目でトップに立ち独走したが、ラウダは20周目で6位まで浮上するとその後も順位を上げ、最後は2位で走行中のナイジェル・マンセルのブレーキ不調によるペースダウンに乗じて2位を確保し、プロストにわずか0.5ポイントの差で、3度目のワールドチャンピオンに輝いた。この年間2位との差0.5ポイントはF1史上最小得点差でのワールドチャンピオンであり以後も更新されていない。全16戦中12勝を得たマクラーレンはコンストラクターズタイトルでも圧勝。ラウダは「今までチームメイトとこんなバトルをやったことはなかった。常に少しでも速く、少しでも上手に運転して、彼(プロスト)との競争で優位に立たなくてはならなかった」と喜びを語った。また、2年連続で最終戦でチャンピオン獲得を逃した後輩プロストへは「気にするな。来年は君がタイトルを取るよ」と声をかけている。この最終戦には1976年の事故以来サーキットへ一度も訪れなかったマルレーネ夫人も姿を見せ表彰式ではラウダと抱擁して喜びを分かち合った。 ラウダはマクラーレン在籍中の4年間、ポールポジションを1度も獲得していない(この1984年に限ればオーストリアグランプリの4位が予選最高位)が、ポールポジションを1度も獲得せずにワールドチャンピオンとなったドライバーはこの1984年のラウダを最後に出ていない。このように決勝レースで強さとしぶとさを誇示するラウダのレーシングスタイルは、これまで予選でも速さに拘る傾向が見られたプロストがそのドライビングスタイルを変えるきっかけとなる。 1985年 ラウダのマシンにトラブルが多発し、チャンピオン争いから脱落。自身が前年に予言したとおりプロストが初のF1ワールドチャンピオンを獲得した。第10戦オーストリアグランプリでこの年限りでのF1引退を発表。ラウダは「昨年の私のモチベーションはアラン・プロストだった。彼とワールドチャンピオンシップで闘い、破る事だった。今年はプロストがワールド・チャンピオンを勝ち取ることを確かめたいと思った。1986年を走るための新鮮な動機を見つけようとしたが見つからなかった。もし今年がよい成績だったとしても同じ決断をしていたと思う」と語った。次戦オランダグランプリでF1通算25勝目(1985シーズン唯一の優勝)を果たし、これがラウダのF1最後の優勝となった。同グランプリは予選10番手スタートながら終盤プロストの追い上げを巧みにブロックし0秒232の微差で抑え込んで勝っている。最終戦のオーストラリアグランプリでは一時トップを走行したが、ブレーキトラブルでリタイアとなりレーサーとしてのキャリアを終えた。ラウダはその10日後にはボーイング737の機長養成トレーニングに姿を見せ、新しい人生を開始していた。
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