桃
『漢武故事』14・17 天界から降りた西王母に、漢の武帝が不死の薬を請う。西王母は「帝は欲心が多いゆえ、不死の薬はまだ得られぬ」と告げ、7つの桃の2つを自らが食べ、5つを武帝に与えて去った。後、西王母の使者が来て、3つの桃を武帝に渡し、「これを食べれば、人寿の極限まで生きられる」と教える。しかし武帝は60余歳で死んだ。
『西遊記』百回本第5回 蟠桃園には3千6百株の桃があり、手前の千2百株は3千年に1度熟し、食べれば仙人になる。中の千2百株は6千年に1度熟し、食べれば不老長生する。奥の千2百株は9千年に1度熟し、食べれば天地日月と寿命を同じくする。玉帝から蟠桃園の管理を命ぜられた孫悟空が、奥の林の桃を食べ尽くし、様々な乱暴をして天宮を騒がす。
*爺と婆が桃を食べて、若夫婦になった→〔若返り〕1bの『桃太郎昔語(ももたろうむかしがたり)』。
『酉陽雑俎』巻2-68 燕(えん)の世(398~410)、僧が山東省の長白山に登り、山寺を訪れて中食を求める。1人の沙弥が、桃の木から実を1つ摘んで僧に与え、まもなくもう1つ与えて、「長く逗留しているから、もう帰りなさい」と告げる。僧が自分の寺へ戻ると、弟子が「2年間、お帰りにならなかった」と言う。僧は、2つの桃は2年のしるしであることを悟った。
『日本書紀』巻1・第5段一書第9 黄泉国から逃げ帰るイザナキを、雷(いかづち)たちが追って来る。イザナキは桃の樹の下に隠れ、その実を投げつける。雷たちは皆、逃げ去る。これが桃をもって鬼を追い払う起源である〔*『古事記』上巻では、イザナキは桃子(もものみ)に、「私を助けてくれたように、葦原中国(あしはらのなかつくに)の青人草(あをひとくさ=人間)をも、助けてやってくれ」と頼む〕。
*桃は、その形状が女性器を連想させるので、女性器を露出して魔物などを追い払う物語と関係があるだろう→〔性器(女)〕3。
*桃の枝を用いて貧乏神を追い出す→〔貧乏神〕2aの『沙石集』巻9-22。
『太平広記』巻325所引『甄異記』 夏侯文規は死後1年して家に現れ、庭の桃樹を見て、「私が植えた樹で、実は美味だ」と言う。妻が「亡者は桃を畏れると聞くが」と訝(いぶか)ると、夏侯文規は「桃の東南の枝が2尺8寸にも伸びて日に向かうのは嫌だが、畏れないばあいもある」と答える。
『封神演義』第5回 仙人・雲中子が紂王のもとを訪れ、「宮殿から妖気が立ち昇っている。この宝剣で邪気を鎮めよ」と言って、桃の枝を削った5寸ほどの玩具のような剣を渡す。紂王が宝剣を分宮楼上に置くと、たちまち妲妃(だっき。千年の女狐の化身)が眩(めま)いを起こして倒れる。いそいで宝剣を下ろして焼き、妲妃は回復する。
『聊斎志異』巻8-300「鬼妻」 聶鵬雲は先妻の病死後、年余を経て後妻を娶るが、夜ごとに先妻の亡霊が現れ、「私の寝台に寝かせるものか」と罵って後妻を殴る。困り果てた聶の依頼で、術者が桃の木を削って杙を作り、墓の四隅に打ちこむと、ようやく怪異は絶える。
★5.桃の木の化身。
『夢』(黒澤明)第2話「桃畑」 雛祭りの日。「私(10歳ぐらいの男児)」は、桃の精である少女を追って桃の木畑へ行く。雛人形姿の男女が数十人現れ、「雛祭り(桃の節句)は桃の木のお祭りで、雛人形は桃の木の化身だ」と説き、「私」の家が桃畑の木を全部切ってしまったことを責める。雛人形たちは音楽を演奏し、舞いを舞って、桃の花盛りを見せてくれるが、それが終わると、畑にはたくさんの切り株があるだけだった。
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