黒島教会とは? わかりやすく解説

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くろしま‐きょうかい〔‐ケウクワイ〕【黒島教会】

読み方:くろしまきょうかい

黒島天主堂


黒島天主堂

(黒島教会 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/09 13:37 UTC 版)

黒島天主堂
カトリック黒島教会
所在地 長崎県佐世保市黒島町3333
日本
教派 カトリック教会
歴史
守護聖人 イエスの御心
管轄
教区 カトリック長崎大司教区
教会管区 カトリック長崎教会管区
聖職者
大主教
(大司教)
ペトロ中村倫明
主任司祭 ミカエル山添克明
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黒島天主堂(くろしまてんしゅどう)は、長崎県佐世保市黒島にあるキリスト教 カトリック長崎教区教会およびその聖堂である。正式名称を黒島教会(くろしまきょうかい)といい、至聖なるイエズスの聖心教会イエスのみ心教会の別名もある。国の重要文化財に指定されている。

概要

佐世保市本土から西へ約10km離れた九十九島最大の島である黒島には、江戸時代の迫害を逃れて移住してきた隠れキリシタンが多く住んでいた。1865年に大浦天主堂で「信徒発見」がなされた知らせは黒島にも伝わり、2か月後には信者の代表20名が長崎へ赴き、プティジャン神父に約600人の潜伏キリシタンが黒島にいることを伝えている。その後、禁教解除よりも前に島の信者全員がカトリックへと復帰した[1]

1878年に赴任したペルー神父が名切地区の土地を購入して和洋折衷の小規模な教会を建設するが[2]、やがて手狭となり本格的な教会の建設が必要となった[3]。マルマン神父が1897年に新しい聖堂の建設を目的に着任、自ら教会堂の設計を行なった。新しい聖堂は旧聖堂を取り壊して同じ場所に建設を行っている。1902年6月に献堂式が行われており、この頃が完成と見られている[4]

以降は1982年(昭和57年)から翌年にかけてレンガの張り替えや屋根の葺き替え、雨漏りで汚れた漆喰の補修[5][6]、1991年には畳敷だった聖堂内を椅子式に変更する[6]など様々な修理を施されながら維持されていた。2008年(平成20年)頃から各部の老朽化が目立つようになり、本格的な修理が検討されるに至る[7]。その過程で2013年(平成25年)から翌年にかけて耐震診断を実施したところ耐震基準を満たさないことが判明したため、耐震補強工事と合わせて保存修理工事が実施された[7]

沿革

建築概要

黒島天主堂正面
天主堂内

黒島のほぼ中央に北面して建つ三廊式バシリカ型教会堂である。屋根は切妻造および瓦葺き、建物上層部分側面は木造下見板張り、下層部分は煉瓦造からなる[12]。側面は下から順にアーケード(柱で支えられた連続したアーチ構造)・トリフォリウム(ギャラリー式の廊下)・クリアストーリー(高窓)の三層構造となっている[13]。規模は間口15.0メートル、奥行32.6メートル。外観はロマネスク様式を基調とし、ファサードにはペディメント下にバラ窓が設けられている。正面にはバラ窓以外の窓はなく、壁面にブラインド・アーケードやブラインド・アーチ(壁面にアーケードやアーチ形の装飾を造るのみで、開口していないもの)を設けている[12]。入口上には四角錐形屋根をもつ鐘塔が立つ。側廊の壁面にはステンドグラスを嵌めた半円アーチ滑り出しガラス窓と円形はめ殺し窓を組み合わせた構造の窓が設けられている。クリアストーリーには同じくステンドグラスを嵌めた半円アーチ窓と円形窓を組み合わせているが、外から見ると二種類のステンドグラスが組み合わさった半円アーチはめ殺し窓とであることがわかる[14]。会堂部は当初板張りに畳敷であったが、1991年(平成3年)に椅子式へ変更されている[15]。この天主堂は保存状態がよく、明治時代に、外国人神父の指導によって建設された、様式的にも整った本格的な教会堂建築として貴重な遺構である。[16]

  • 様式 - ロマネスク様式
  • 設計 - マルマン神父[2]
  • 棟梁 - 前山佐吉[2]
  • 竣工 - 1902年[2]
  • 構造 - 煉瓦造および木造、瓦葺き平屋建て[17]
    • 煉瓦は経費節減のため島内で焼き上げ、不足分を島外から買い出している[3]
    • 基礎には黒島特産の御影石 [3]、祭壇の床には有田焼のタイルが使われている[18]

所在地

〒857-3271 長崎県佐世保市黒島町3333番地

アクセス

その他

  • 天主堂に使われているレンガの一部は黒島で作られ、あとの残りは島外から持ち込まれたものである。レンガ造の教会は全国で17棟しかなく、その全てが九州(うち16棟は長崎県)にあり、黒島天主堂はそのうち4番目に古い建物である。
  • 建物の構造についても、レンガ造の一般的な教会の多くが単層構造(層が多いほど屋根が高くなり、建設に高い技術が必要となる)であるのに対し、黒島天主堂は長崎の大浦天主堂(国宝)と同じく3層構造になっている。建築当時はまだ単層構造が主流であった時代に、多層構造をいち早く取り入れた教会建築物として重要な存在である。
  • 天主堂建造に使われたレンガの総数は40万個ともいわれている。
  • マルマン神父は手先が器用だったという話が残されている。天主堂の説教台シャンデリア、洗礼台の彫刻は神父自らの手によるものである。
  • 天主堂に飾られている像の多くはマルマン神父が資金調達のため、フランスに戻った際に購入してきたものと言われ、上海製の像がおいてある。聖鐘はフランス製である。
  • 現在は絨毯敷きに礼拝椅子のフロアとなっているが、昔の資料によると畳敷きであったことがわかる。また、タイルは有田焼を使用し、当時としては豪華な造りであった。
  • クリスマス・イヴには島中のカトリック信徒が天主堂に集まり、入りきれずに外で覗いている人までも祈りをささげている。ミサが終わると婦人会による炊き出しが行われ、ぜんざいとケーキが振舞われる。

登場作品

脚注

  1. ^ 教会群, p. 69.
  2. ^ a b c d 調査報告, p. 3-73.
  3. ^ a b c 教会群, p. 70.
  4. ^ 調査報告, p. 3-73, 3-79.
  5. ^ 調査報告, p. 3-74.
  6. ^ a b 教会群, p. 72.
  7. ^ a b 研究紀要, p. 18.
  8. ^ 「新指定の文化財」『月刊文化財』416号、p.30
  9. ^ “長崎、天草の「潜伏キリシタン」が世界文化遺産に決定 22件目”. 産経新聞. (2018年6月30日). https://www.sankei.com/article/20180630-KZXLQSC53BNLTO34UH3O2ZEDXE/ 2018年6月30日閲覧。 
  10. ^ “長崎と天草地方の「潜伏キリシタン」世界遺産に”. 読売新聞. (2018年6月30日). https://web.archive.org/web/20180630133218/http://www.yomiuri.co.jp/culture/20180630-OYT1T50066.html 2018年6月30日閲覧。 
  11. ^ 長崎新聞(2019年3月15日)
  12. ^ a b 調査報告, p. 3-75.
  13. ^ 調査報告, p. 3-77.
  14. ^ 調査報告, p. 3-75, 3-83.
  15. ^ 調査報告, p. 3-76.
  16. ^ 「新指定の文化財」『月刊文化財』416号、pp.30 - 31
  17. ^ 調査報告, p. 3-73, 3-75.
  18. ^ 調査報告, p. 3-80.

参考文献

  • 「新指定の文化財」『月刊文化財』416号、第一法規、1998
  • 脇田安大『探訪 長崎の教会群 平戸・佐世保編』2018年5月。ISBN 9784905026853 
  • 長崎県世界遺産に係る建造物調査委員会『「長崎の教会軍とキリスト教関連遺産」構成資産候補建造物調査報告書』2011年。 
  • 長崎県 編『世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」研究紀要 第1号』2022年3月。 

関連項目

外部リンク

座標: 北緯33度8分20.9秒 東経129度32分13.2秒 / 北緯33.139139度 東経129.537000度 / 33.139139; 129.537000



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