食とゲテモノ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 15:19 UTC 版)
食文化においては、しばしばごく狭い地域で発達してきた食文化の中に、独創的で他の地域には見られない特徴を備えるものもみられる。典型的な例では発酵食品や昆虫食などがその好例だが、発酵食品も微生物学の側面からみると、地域ごとに見られる特殊な発酵食品が他の地域で並行して発達したものとの類似性が見出されるなど、複雑である。 昆虫食においても、オーストラリアのアボリジニが地中の木の根から得た芋虫を食べることを、日本ではゲテモノ的に取り上げる例もあるが、その一方で日本ではイナゴや蜂の子やシロウオの踊り食い、あるいは郷土料理でざざむしの佃煮などが好まれる地域もあるなど、複雑である。米国でもジュウシチネンゼミ大量発生の年には、縁起物として好んで食べられるなどしている。 こういった食文化の発生には、発酵食品では保存食の発達や発酵させることで、栄養価が変化したり風味がよくなることが関係し、昆虫食では昆虫が過酷な自然環境の地域に至るまで、広い範囲で繁栄して得やすい反面、少ない飼料で良質な動物性蛋白質を生産することができるなどの合理的な側面があり、必ずしも珍奇性のみでは語りえない部分も見られる。 この他にも英国や米国では、競馬や乗馬が盛んで、馬が一般に乗用家畜ないし愛玩対象として好まれ、これを食べることに強い忌避感が存在する一方で、日本などでは馬肉としてやニューコンミートなどのような形で流通しているとか、現代日本や欧米では、愛玩動物として愛好されるため、食用とみなされないイヌやネコも、他のアジア諸国や南米の一部では、一般的に犬食文化があって食べられている地域もあるなどしており、どちらも一般的に食べている地域の食文化を食べない地域で紹介すると、価値観の上で理解されずにゲテモノとみなされる傾向も否めない。 こういった事態は、マスメディアの発達以降に、世界各地の風景や文化を家庭に居ながら目にすることが出来る機会も増えている関係で、自らの居住地域以外の食文化に拒絶反応を示してしまうケースも、しばしば見られるところである。 なお現代において、食に対する拒否感を示す語としての認識が強いゲテモノだが、その一方で北大路魯山人は著書『鮪を食う話』などにおいて、マグロをもってして「下手のもの」と断じている。ただこちらは後述で詳しく述べるが原義的な用法としての表現であり、廉価で大衆でも食べやすい食材であり一流の食通を満足させるものではないと言う一方でマグロの雉子焼きを醤油とたっぷりの大根おろしと飯で「下手なうなぎよりか、よっぽど美味い。」と言ったりしており、品格は無いが旨いものだと位置付けていて、『鮪の茶漬け』では関西の鯛茶漬けより簡単でうまい(こと東京にはいい鯛がないため)マグロの茶漬けを薦めている。
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