静的力とは? わかりやすく解説

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力 (物理学)

(静的力 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/07 03:11 UTC 版)

物理学における ちから: force)とは、物体状態を変化させる原因となる作用であり[1]、その作用の大きさを表す物理量である。特に質点の動力学においては、質点の運動を変化させる状態量のことをいう[2]。広がりを持つ物体の場合は、運動状態とともにその形状を変化させる。

本項ではまず、古代自然哲学における力の扱いから始め近世に確立された「ニュートン力学」や、古典物理学における力学、すなわち古典力学の発展といった歴史について述べる。

次に歴史から離れ、現在の一般的視点から古典力学における力について説明し、その後に古典力学と対置される量子力学について少し触れる。

最後に、力の概念について時折なされてきた、「形而上学的である」といったような批判などについて、その重要さもあり、項を改めて扱う。

歴史

自然哲学において、力という概念は、何かに内在すると想定されている場合と、外から影響を及ぼすと想定されている場合がある。古代より思索が重ねられてきた。

古代

プラトンは物質はプシュケーを持ち運動を引き起こすと考え、デュナミスという言葉に他者へ働きかける力と他者から何かを受け取る力という意味を持たせた。

アリストテレスは『自然学』という書を著したが、物質の本性を因とする自然な運動と、物質に外から強制的な力が働く運動を区別した。

6世紀のヨハネス・ピロポノスは、物質そのものに力があると考えた。

アラビア半島の自然哲学者ら(イスラム科学)の中にはピロポノスの考えを継承する者もいた。

ルネサンス以降

14世紀のジャン・ビュリダンは、物自体に impetus(インペトゥス、いきおい)が込められているとして、それによって物の運動を説明した。これをインペトゥス理論と言う。

ステヴィンの機械。斜面上に等間隔に重さの等しい球を配置する。それぞれの球を縄で繋ぎ鎖を作る。このとき鎖が斜面上の一方へと回転するなら、これは永久機関として利用できる。

ベルギー出身のオランダ人工学者シモン・ステヴィン (Simon Stevin、1548 — 1620) は力の合成と分解を正しく扱った人物として有名である。1586年に出版した著書 "De Beghinselen Der Weeghconst " の中でステヴィンは斜面の問題について考察し、「ステヴィンの機械」と呼ばれる架空の永久機関が実際には動作しないことを示した[注 1]。つまり、どのような斜面に対しても斜面の頂点において力の釣り合いが保たれるには力の平行四辺形が成り立っていなければならないことを見出したのである。

力の合成と分解の規則は、ステヴィンが最初に発見したものではなく、それ以前にもそれ以後にも様々な状況や立場で論じられている。同時代の発見として有名なものとしてガリレオ・ガリレイの理論がある。ガリレオは斜面の問題がてこなどの他の機械の問題に置き換えられることを見出した。

その後、フランスの数学者、天文学者であるフィリップ・ド・ラ・イール (1640 — 1718) は数学的な形式を整え、力を空間ベクトルとして表すようになった[注 2]

ルネ・デカルト渦動説 (Cartesian Vortex) を唱え、「空間には隙間なく目に見えない何かが満ちており、物が移動すると渦が生じている 」とし、物体はエーテルによって動かされていると説明した[4][5]

ニュートン力学

現代の力学に通じる考え方を体系化した人物として、しばしばアイザック・ニュートンが挙げられる。ニュートンはガリレオ・ガリレイの動力学も学んでいた。またデカルトの著書を読み、その渦動説についても知っていた(ただしこの渦動説の内容については批判的に見ていた)。

ニュートンは1665年から1666年にかけて数学や自然科学について多くの結果を得た。特に物体の運動について、力の平行四辺形の法則を発見している。この結果は後に『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア、1687年刊)の中で運動の第2法則を用いて説明されている[6]

ニュートンはその著書『自然哲学の数学的諸原理』において、運動量 (quantity of motion) を物体の速度と質量 (quantity of matter) のとして定義し、運動の法則について述べている。ニュートンの運動の第2法則は「運動の変化は物体に与えられた力に比例し、その方向は与えられた力の向きに生じる 」というもので、これは現代的には以下のように定式化される。

量記号 F次元 M L T −2種類 ベクトルSI単位 ニュートン (N)CGS単位 ダイン (dyn)FPS単位 パウンダル (pdl)MKS重力単位 重量キログラム (kgf)CGS重力単位 重量グラム (gf)FPS重力単位 重量ポンド (lbf)テンプレートを表示

定義

古典力学における英語: force)の、最も初等的な定義は質量加速度の積を力とするものである。

力の合成dT と力 dN を合成した力 dF は平行四辺形の法則によって対角線として計算できる。

力の合成とは、ある点に働く複数の力を 1 つの等価な力として表すことを言う。またその逆の操作を力の分解 (decomposition of force) と呼ぶ[17]。合成された力のことを合力 (resultant force) という[18]。力はベクトルとして定義されているので[19]ベクトル空間における加法の規則に従い合成と分解を行うことができる[20]。力と運動量がベクトルであることにより、運動方程式を任意の成分に分解することができる。この原理を運動の独立性 (independence of motions) という[19]

分解された力と元の力、あるいは合成される力とそれらの合力の関係を図形的に表すものとして、力の平行四辺形がしばしば用いられる。力の分解に関して、2 成分に分解された力は平行四辺形の辺をなし、その対角線は元の力となる。同様に、2つの力が同じ点に働くと、それらは平行四辺形の辺をなす。2つの力の合力は2つの力のなす平行四辺形の対角線として図示される[20]。力の分解や合成を平行四辺形の組み合わせによって表すことができる、という法則を平行四辺形の法則 (parallelogram law) と呼ぶ[14]。平行四辺形の法則はまた、ニュートンの第4法則 (Newton's fourth law) とか力の重畳原理 (superposition principle of force) とも呼ばれる[14]

分類

連続体力学などの分野では、力は次の 2 つに分類される。

面積力
面を通して作用し、その大きさが面積に比例する力[21]。表面を横切る微視的な運動量流束とも言え[22]表面力とも呼ばれる。物体の面を介して作用するので近接作用力である[23]。例としては圧力応力表面張力などが挙げられる。面積力は2階テンソル行列Σ で表され、面積要素 dA にはたらく力 dF

関連項目

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