青泉寺
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正真(しょうしん) 住職。高潔な人格者で、正縁や正念らをしっかりと導いている。 行き倒れていた艶とその父矢萩源九郎を助けて看病し、死にゆく源九郎から艶に新しい名前をつけてくれるよう願われた。その願いを受け、艶に縁という名を与えた。また、三昧聖となった縁に、正縁という名を与えた。 正念が出家を願った際、彼と母とその家族を救うために受け入れた。宣則(正念)の出家先が墓寺だったと知った水澤重之進が正真を罵倒したときは、「それが罪人でも、貴人でも、庇護を求めて法衣に縋る者を、見捨てぬのが出家者」と静かに答えて、彼を黙らせた。 僧籍にある者ももそうでない者も、世の中について広く見聞きすることが大切だという考えを持っており、桜花堂仙太郎が香のためにしばらく正縁を預かりたいと願ったときには、仙太郎の願いを叶えるようにと正縁に命じた。 改めて尾嶋多聞が正念の還俗を願った際は、すぐに断ろうとする正念にしばらく考えるように命じ、人として生きる道は一つではないと諭した。 正縁のために庵を寄進し、いずれ自分もそこには行って夫たちの冥福を祈りたいという香の意をくみ、彼女に正香という名を与えた。そして、正縁のこれからも三昧聖として務めたいという意思を確認すると、寺を出て自分の庵を結び、そこから寺に通ってくるよう命じた。 正念(しょうねん) 正縁より15歳年長の修行僧。第2巻では副住職と呼ばれている。女子である縁が、青泉寺に残って湯灌の仕事を続けたいと言ったとき、毛坊主ではなく三昧聖という職名を提案した。 普段は温和だが、筋の通らないことには烈火のごとく怒りを表す。縁が信吉に手込めにされそうになったときには、怒りのあまり信吉を絞め殺すところだった。 出家前は下総のある藩主(第2巻で、富澤藩松平家と判明)と、側室お咲の方(咲也)との間に生まれた8男で、宣則と名付けられた。幼い頃に国元に送られ、水澤重之進の屋敷で養育される。しかし、兄たちが次々と亡くなり、ただ一人残った兄が嫡男となると、14歳のときにお控えさまとして江戸藩邸に呼び戻されることとなった。その頃はしばしば尾嶋家を訪問して母とも親しく交流していた。しかし、藩主の嫡男が危篤となり、宣則が次の嫡男とされることが現実味を帯び始めた頃、母と異母妹の仲睦まじい様子を覗き見、もし自分が嫡男にされれば、咲也は今の夫や娘と引き離され、江戸藩邸に戻されることになると考えて、あえて母との不仲を周囲に見せつけることで、母が呼び戻されることを阻止しようとした。それでも、母の呼び戻しが止められそうにないと観るや、藩と全く縁が無く、寺社奉行の息もかからず、後で無理に還俗させられる恐れのない青泉寺に出家したのである。 咲也の生前はついに再会することはなく、死後も湯灌にさえ行くつもりがないと言い張ったが、正縁に訴えかけられ、正真に諭されて、翻意する。咲也を湯灌する眼差しは、僧侶ではなく息子としてのそれだったと、異母妹のあや女は語った。 博識で、正縁の薬草の知識は、正念に教わったものである。 病弱だった兄の式が近づき、改めて還俗して次の藩主になることを求められ、まだ尼になっていない正縁と結婚する道もあるとあや女に語られると、仏道に生きるか還俗するかの迷いが生じた。しかし、正縁と共にふみの湯灌に赴いた際、手を携えるなら、夫婦としてではなく、共に仏弟子として歩みたいという思いを共有した。そして、還俗を拒否する。 市次(いちじ) 3人いる毛坊主の最年長。縁が三昧聖となり正縁という名を与えられた後も、子どもの頃と同じように「お縁坊」と呼ぶ。 3人とも信吉に唆され、副葬品を横流しして正念に怒鳴られたことがあるが、根は誠実で信心深く、優しい。 仁平(にへい) 毛坊主。生真面目な性格。 三太(さんた) 毛坊主の最年少で20代。若いだけに俗物の面もあって、市井の人々の欲望や心情をよく理解している。
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青泉寺
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江戸郊外の下落合村にある寺。七曲坂の途中を西に曲がった、見送り坂と呼ばれる坂を登ったところにある。神田上水を彼方に見下ろす丘陵地に位置する300坪ほどの境内には、手前に通夜堂と庫裏があって、庫裏と渡り廊下でつながれた北の端に本堂が据えられている。西の拓けた一角には、白布で仕切られた湯灌場と火屋が備えられている。また敷地内に墓所もある。
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