青泉寺に出入りする人々
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/10 07:00 UTC 版)
捨吉(すてきち) 龕師(がんし。葬具業者)の親方。子宝に恵まれず、女房の願いで縁を養女に迎えようとした。しかし、縁のことをただ働きの奉公人程度にしか考えていないばかりか、女癖が悪いため、青泉寺では縁組みを断った。 信吉(しんきち) 湯灌場買い(火葬される遺体の副葬品を買い取る商人)。青泉寺では、副葬品の横流しは一切禁止されているが、三太らを唆して幼くして死んだ娘の晴れ着を買い取った。再び寺を訪れた際、死者を冒涜するような発言をしたため、三太に投げ飛ばされ、縁には湯灌後の湯をかけられた。その仕返しに、三太たちに下剤入りの酒を飲ませ、さらに縁を手込めにしようとしたが、正念に見つかって危うく絞め殺されそうになる。 岩吉(いわきち) 棺を作って納める龕師。6尺(約180センチ)を越える大男で、通常は大八車を使うか数人で運ぶ棺を、背にいくつも重ねて背負ってくる。その巨体と、疱瘡の跡があって軽石のように見える顔から、口が悪い者は神田上水の巨石にたとえて「一枚岩」と呼ぶ。年齢は、正念とほぼ同じ。 非常に無口で、最初は正縁が挨拶しても面倒そうに横を向くばかりだったが、心を込めて湯灌する姿に感動し、親しく話をしてくれるようになった。正縁が足をくじいて動けなくなったときには、背負って寺まで運んでくれるなど、何度か正縁を危難から救ってくれたこともある。そして、自分が死んだら正縁に湯灌してもらうという約束を取り付けた。 新宿小町の紋に惚れているが、相手にされないどころかうっとうしく思われていて、ただ遠くから姿を眺めるばかりだった。あるとき、髷を切られたという紋の証言によって捕縛された。拷問されても罪を否認していた岩吉だったが、窪田同心から紋の狂言だろうと聞かされ、彼女には自分に罪を着せねばならぬほど抜き差しならない理由があるのだと悟り、その翌朝、自分が髪切り魔だと嘘の自白をした。その結果、重敲き(いわゆる百叩きの刑)を受けたが、すでに拷問で衰弱していた岩吉は、青泉寺に担ぎ込まれてまもなく息を引き取る。そして、約束通り正縁の湯灌を受け、自分のために作っておいた座棺に入れられて荼毘に付された。 窪田 主水(くぼた もんど) 臨時廻り同心。三十路をとうに過ぎていて腹も出ているが、童顔。寺社奉行の支配下になく、町奉行所の管轄外にある青泉寺は気を遣わなくてよい場所なので、よく訪れて茶菓子をつまみ食いしていく。 粗忽でお調子者だが、罪を捏造するような悪吏ではない。実際、髷を切られたという紋の証言に則って岩吉を捕縛したが、紋の自作自演を正縁に示唆されると、岩吉を冤罪から救うために奔走した。 正縁が湯灌中に気づいたことを記録していることを知ると、検死のための手引書である「無冤禄述」を貸してくれた。 永代橋の崩落事故後、橋詰で遺体を清める正縁の姿を描いた読売を持って青泉寺にやって来た。そして、青泉寺が評判を呼ぶのは望ましいが、正縁が生き菩薩として人々にあがめられると、お上が正縁の存在を警戒するかもしれないと告げた。実際に、寺社奉行配下の者に正真と正念が捕縛されたと知ると寺にやって来て、早晩二人は釈放されるが、閉門は容易に解かれまいとの見通しを語った。
※この「青泉寺に出入りする人々」の解説は、「出世花」の解説の一部です。
「青泉寺に出入りする人々」を含む「出世花」の記事については、「出世花」の概要を参照ください。
- 青泉寺に出入りする人々のページへのリンク