転換社債発行に関する不祥事
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 06:06 UTC 版)
「アーバンコーポレイション」の記事における「転換社債発行に関する不祥事」の解説
上述の2008年における転換社債の発行に際しては6月26日の計画発表後から市場では「BNPパリバを割当先とするCB発行が頓挫したのでは」との憶測が流れていた。アーバンコーポはモーニングスターなどの取材などに対し、7月10日に「7月8日付でBNPパリバとCBの買取契約を締結した」と話しCB発行頓挫のうわさを完全否定、7月11日には「予定通りBNPパリバから発行総額300億円より諸費用5000万円を差し引き299億5000万円を取得したことを確認した。調達資金は短期借入金など債務の返済に充当する予定である」と述べた。この情報により、7月4日に一時ストップ安まで下落していた同社株価は7月11日の株価は268円まで3日続伸した。しかし、上述したようにこの時点では実際に92億円しか調達出来ず、さらには300億円調達の目的も実際にはスワップ契約に基づくBNPパリバへの資産運用目的であり、300億円は入金後BNPパリバへ即時返金されていた。このことは民事再生法申請まで未公表であった。このスワップ契約の内容は、BNPパリバが引き受けた転換社債を株式に転換し、その株式を株式市場で売却して得た資金をアーバンコーポレイション社に振り込むという契約だった。この契約を開示しないようにアーバン社に働きかけたのは、後にBNPパリバを追われ証券外務員資格を剥奪され東京都議会議員に転身した神野次郎であった。このデリバティブ契約を解除したことにより営業外損失が58億円発生した。これについて、当時の茂木敏充金融担当大臣が閣議後の記者会見で破たん前に具体的な使途や仕組みを公表せずに起債をしていた問題に対し「情報開示の厳格化を検討する」とコメントした。また、この問題に茂木金融担当相は、アーバンコーポがCB発行にかかる臨時報告書を提出したのが6月26日で、訂正報告書を提出したのが同社が民事再生法の適用を申請した8月13日だったことを事実関係として挙げた上で「一般論として、臨時報告の資金使途は投資家に誤解を招かないよう記載しなければならない。また、誤りがあった場合には、速やかに訂正報告書を提出しなければならない」と指摘した。さらに「その上で、どんな対応をしていくかは今後の検討になる」と述べている。 9月1日東京証券取引所代表取締役社長斉藤惇氏は上場会社代表者宛てに『東証上場第952号 適時開示における投資者の適切な投資判断の確保に関する要請について』との表題で「今般、エクイティファイナンスに関する適時開示において、重要な事項について事実と異なる理解を投資者に与え、投資判断を大きく誤らせたといっても過言ではない事例がみられました。当取引所としては、今回の事態を大変遺憾に思っております。上場会社各位におかれましては、重要な会社情報の開示にあたり、その内容に虚偽があったり、重要な情報が欠けていたり、誤解を生ぜしめたりすることのないようくれぐれもご注意いただくとともに、投資者の正確な理解により、適切な投資判断が確保されるよう、今後もより一層、適時・適切な開示にお努めいただきますようお願い申し上げます。」との書簡を送っている。 その後、10月10日には金融庁が、アーバンコーポが金融商品取引法第172条の2第2項に規定する「重要な事項につき虚偽の記載がある」臨時報告書を提出したとして法令違反が認められたと発表。加えて10月24日には、金融庁が平成20年3月期におけるアーバンコーポレイションの有価証券報告書に「重要な事項につき虚偽の記載がある」有価証券報告書を提出した行為に該当するとして有価証券報告書の虚偽記載の法令違反が認められたと発表。これにより、金融庁は臨時報告書虚偽記載について150万円、平成20年3月期有価証券報告書虚偽記載について1081万円の課徴金納付命令を下している。 7月にはメリルリンチからTOBを受け入れる完成した契約書のドラフトが送付され、後は署名するのみであった。アーバンコーポは、メリルリンチに6月に簿価ベースで約1,000億円、計18件の保有不動産を売却し約800億円を調達していたことから既に傘下に入る準備を進めていた。ところがメリルリンチ証券の顧問弁護士事務所である西村あさひ法律事務所は「転換社債に伴うデリバティブ契約について市場に開示をしないことは問題である」との見解を示した。一方でアーバンコーポレイションの顧問弁護士事務所である森・濱田松本法律事務所は投資家が判断を間違えない文言で臨時報告書を開示することを経営陣に助言した。メリルリンチは契約直前にTOBを断念した。なぜ直前になって断念したのか理由は不明であると房園氏は2011年11月4日東京地方裁判所606号法廷で開かれた公開証人尋問で証言している。
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