賃金と社会的経験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 19:22 UTC 版)
『the Journal of Applied Psychology』に掲載された研究論文は、身長が男性にとっての成功に強く結びついていることを示している。この論文によれば、年齢や体重などその他の社会心理学的変数を制御すると、男性の身長の増加は収入の上昇と対応することがわかったという。経済学者のNicola Persico、Andrew Postlewaite、Dan Silvermanらは"長身プレミアム"について説明しているのだが、「1インチ(2.54cm)身長が増加すると、それに付随して1.8%の給与の上昇がみられる」ことを発見した。また彼らは、成人男性の給与は16歳時点での身長とリンクしている可能性があるとしている。16歳時点での身長が1インチ増えると、成人時点での給与が平均して2.6%上昇するというのである。これは、1996年時点での年収でいえば、およそ850ドルの給与上昇と同等である。換言すれば、おそらく16歳時点で身長の高い男性は、低い男性と比べて、身長とそれに付随する社会的経験が、のちに成人した時の高い給与へと転化しやすいのであろう。 中国では、特に高収入だったり、中間ぐらいの収入を得ている女性は、平均よりも身長が1cm高くなるごとに給与も1.5~2.2%上昇している。履歴書に身長を書くのは一般的なことであるという。また、中国のスタートアップ企業やアリババなどの大企業で「プログラマー・モチベーター」として、プログラマーのやる気を出す役割を担う女性の募集がかけられたこともある。この職では容姿が要件に含まれており、中には5フィート2インチ(157cm程度)以上の身長を求人条件に求めている企業もあった。その後、アリババは批判を受けてこの求人広告を取り下げている。 あらゆる相関関係にいえることだが、作用している要因は他にもあるかもしれない。例えば人間集団において、身長と知能には統計的に著しい正の相関関係があることを示す疫学研究は数多くある。しかしながら、この相関関係は統計的には大きいものの、一般的には弱いものであり、身長の多様性が認知機能に直接的な影響を与えていることを示しているわけではない。先進国においても発展途上国においても、顕著な相関関係が子供時代の初期、後期で見られたが、大人になると、環境や社会的地位の変化がこの相関関係の影響力を弱めている。 高収入を得ている人は、満足のいく食事をすることができ、より綺麗で広い家に住んでいる傾向にあるので、高身長に育ちやすいともいわれている。また、金持ちの地域と貧乏な地域では、前者の方が大きく育ちやすい。上記の通り、高身長がまた高収入と強い関連性を持つのであれば、経済的格差はどんどん広がることになる。 最近の研究では、身長差別は人種的マイノリティに対してもっとも頻繁に起きることが示唆されている。2007年の研究によれば、アフリカ系アメリカ人から体重や身長に基づく差別被害の報告が多くなっているという。また、この差別の割合は女性の労働者でより高くなっている。
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