賃金との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:15 UTC 版)
リーマンショック後の不況と高失業率に対して米国FRBは大規模な量的緩和で対処してきたが、緩やかな回復傾向にある経済にあってもパートタイム労働者の割合の増加や労働参加率の低下やターンオーバーの増加などが見られる。これらが周期的要因で起きているなら金融政策で対処できるが、いくらかの要因には対処できないとする見解をジャネット・イエレンをはじめFOMCは出している。またグローバル化(あるいは企業が企業収益のみを追求すること)によって労働者の実質賃金が低下するケースをFOMCが金融政策ではコントロールできないと考えており、これによって賃金上昇の阻害がおこり労働指標が現実の労働市場を反映しない可能性がある。これによってFOMCのメンバーが、利上げなど金融政策の出口政策を考える上での不確定要素となってしまっている。 経済学者の伊藤隆敏は「雇用・賃金は遅行指標なので時間はかかる」と指摘している。経済学者の清水啓典は「貨幣の量が生産・雇用・物価に与える影響の大きさや時間のずれの長さは、国民の持つ情報とそれに基づき形成される期待次第である」と指摘している。 原田泰は「金融緩和の目的は雇用を増やすことであって賃金を上げることではない。もちろん、金融緩和で雇用が増えて、失業率が下がっていけば、いずれ賃金は上がる。しかし、雇用が伸びる前に賃金を上げては、かえって雇用の伸びを妨げることになりかねない」と指摘している。 高橋洋一は「金融緩和によるデフレ脱却の過程で、名目賃金の上昇率が一時インフレ率に及ばず、実質賃金が低下する局面もある。実質賃金が上がらないことで、雇用が増加している限り問題はない。一時的に実質賃金が低下して、雇用数が増加することは、デフレ脱却の局面では健全な姿である。デフレを脱却したら、実質賃金の上昇率はプラスになる」と指摘している。 経済学者の飯田泰之は「アベノミクスの一本目の矢は、決して金持ちの味方・貧乏人の敵ではない。所得に関しては中立であり、むしろ格差是正的な側面もある」と指摘している。 経済学者の松尾匡は「金融緩和なしの賃上げは、実質貨幣供給を減らすため金融引き締めと同じ効果をもたらすため、景気押し下げの圧力となる」と指摘している。 「失業#賃金との関係」も参照
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