販売電力量第2位への浮上
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 00:23 UTC 版)
「中部電力ミライズ」の記事における「販売電力量第2位への浮上」の解説
中部電力は、1954年(昭和29年)度以来60年以上にわたって、販売電力量国内第3位が定位置であった(1位は東京電力、2位は関西電力)。地元の中日新聞は、中部電力について、「“万年三位”に甘んじざるを得ない」と評していた。しかしながら、2011年(平成23年)の福島第一原子力発電所事故により電力業界の事業環境が激変し、このため、中部電力は、期せずして販売電力量第2位に浮上することになった。 事故の反省を踏まえ、2012年(平成24年)、原子炉等規制法などの原子力規制関係法令が見直され、新設された原子力規制委員会が新規制基準を制定した。改正原子炉等規制法では、古い基準のもとで設置許可を受けた原子炉も、厳しい新規制基準に適合しなければ、運転を継続できないことになった。 新しい原子力規制は、電力業界全体に大きな影響を与えたが、とりわけ影響が大きかったのが関西電力であった。関西電力は、福島の原発事故前、11基の原子炉(電気出力合計976.8万kW)を保有し、供給する電気の約半分を原子力発電で賄っていた。これら全てが、新規制基準対策工事を実施して原子力規制委員会の審査に合格するまで、運転できないことになった。 関西電力は、2012年(平成24年)2月までに全ての原子炉を停止し、原子力発電で賄っていた分を旧式で効率の悪い火力発電所の稼働や他社から受ける電気の融通により穴埋めする羽目になった。2013年(平成25年)度中に規制分野(低圧)9.75%、自由化分野(高圧・特別高圧)17.26%の値上げを実施したものの、火力発電の燃料費がかさみ、2011年(平成23年)度から2014年(平成26年)度まで、4期連続の赤字を計上した。やむを得ず、2015年(平成27年)度中に、2度目の値上げに踏み切った。今度は、規制分野(低圧)8.36%、自由化分野(高圧・特別高圧)11.50%の値上げ率であった。2度の値上げにより、2015年(平成27年)中には、関西電力の電気料金は、大手電力会社のうちで最も高額になった。 電力小売の全面自由化は、2016年(平成28年)4月に迫っていた。関西電力は、全面自由化を前に、高浜発電所3号機、4号機の再稼働にどうにか漕ぎ着けた。これにより収支の改善が見込めるため、同社は、5月から料金を値下げすることを2月に発表した。その矢先、大津地方裁判所が高浜発電所3号機、4号機の運転を禁ずる仮処分を決定した。値下げの計画は、発表からわずか2週間で撤回せざるを得なかった。結局、全面自由化初年度の2016年(平成28年)度は、原子力発電所を一切、運転できず、値下げもできなかった。値上げ前の2012年(平成24年)度に1,418億kWhあった関西電力の販売電力量は、2016年(平成28年)度には1,215億kWhになった。4年間で約14%の減少であった。 中部電力の販売電力量は、2007年(平成19年)度をピークに減少傾向にあるが、関西電力より減り方が緩やかであった。2012年(平成24年)度に1,266億kWhあった販売電力量は、2016年(平成28年)度には1,218億kWhになったが、4年間で約3.8%減ったにすぎなかった。 結果的に、中部電力の2016年(平成28年)度1年間の販売電力量は、僅差で関西電力を上回り、業界第2位に浮上した。もっとも、2017年(平成29年)時点では、中部電力関係者は、「“次男坊”でいられるのは、関電が(発電コストの安い)原発を本格的に動かすまでの間だ」という認識であった。 中部電力と関西電力の年度別販売電力量(2010年度~2019年度)
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