誕生に関する伝承
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 17:07 UTC 版)
「アリー・ザイヌルアービディーン」の記事における「誕生に関する伝承」の解説
上述の通り、ザイヌル・アービディーンはペルシアの姫君とイマーム・ホセインの間に誕生したという伝承がある。その後のイマームの伝記には、必ずと言って良いほどこの伝説的事件が記録されてきた。十二イマーム派シーア派主義が国教として定められたサファヴィー朝期以降においても、その傾向が見られ、むしろそれが定着した印象がある。同朝期末期に活躍した神学者マジュリスィーは、この伝説に関するいくつかの伝承を紹介している。 ・八代目イマーム、アリー・レザーに辿るイブン・バーブーイェの伝承によれば、アブドッラー・アーメルがホラーサーン征服を行なった際、ヤズデギルド三世の二人の娘を捕虜とした。そして彼女たちをカリフ、ウスマーンのもとに送り、その後、二人の姉妹のうち一人をハサンに、他をホセインにそれぞれ与えた。そして後者の結婚からザイヌル・アーべディーンが誕生した。ところが、その娘は、第一児を出産した時に亡くなったという。その結果、ホセインの奴隷の一人が彼の教育にあたり、ザイヌル・アーべディーンは彼女を自らの母と呼んだ。 ・イランの最後の王ヤズデギルドの娘がカリフ、ウマルの許へ連行され、メディナに入城したとき、町の娘たちは彼女の美しさを見るために出てきた。また、メディナのモスクは、彼女が放つ光輝によって輝いた。ウマルは、彼女の顔を見ようとしたが、これを拒まれた。そのとき、彼女は「ああ、ホルムズの日、暗くなりぬ」と述べた。ウマルは、このゾロアスター教徒は自分を罵ったとして、彼女を罰しようとした。これに対して、信者の長、すなわち初代イマーム・アリーは、ウマルはその言葉の意味を理解しておらず、これは罵りなどではない、と告げた。 ウマルは、それでは彼女を(奴隷として)売却するように命じた。しかし、アリーは、いかに異教徒とはいっても、王家の娘を売却することは許されないとして、彼女にイスラーム教徒を一人選ばせ結婚すること、さらに、彼女の結納金はその者の財庫より支払うことにした。ウマルはこれに同意した。イラン王家の娘は、一座のものの中から、アリーの次男、ホセインを選んだ。そしてアリーがペルシア語で王家の娘に語りかけ、彼女の現在の名前であるジャハーン・シャーに代えて、シャフルバーヌーと名付けた。そしてこれはアリー自身の姉妹の名であると述べた。さらに、息子ホセインに対して、彼女を慈しむように諭した。二人にはやがて子供が誕生し、その次人物は地上で最良の者となる、そして両親の後、清き人々の後継者となろう、とペルシア語で述べた。 ・シャフルバヌーは捕虜となる前、夢の中で預言者ムハンマドがイマーム・ホセインとともに彼女の住居に現れ、ホセインと結婚するように求められ、翌朝、彼女は夢の意味を巡って考えあぐねていた。ところが、次の夜、今度はムハンマドの娘でアリーの妻であるファーティマの夢を見た。シャフルバヌーは、夢の中でファーティマを介してイスラーム教徒になった。ファーティマは、イスラーム軍の攻撃があっても、何人も彼女に危害を加えないこと、さらに、自分の息子ホセインとの間に児を産むであろうことを告げた。このようにして、イスラーム軍が彼女をメディナに連行し、その後ホセインを見たとき、すでに預言者が夢の中で彼女の元にやってきて契約を結んでいたので、躊躇なくホセインを選んだのである。こうして二人は結ばれ、その結果ザイヌル・アービディーンが誕生した。彼は「二つの良き者から生まれた」と言われるように、「神がハーシム家の中から選び賜うた者は、イランから選ばれた者であり、高貴な家系の者であった。」 ホセインの殉教を伝える、サファヴィー朝成立前後に書かれた『殉教者の園』には次のような伝承が記述されている。 ・ホセインは三人のアリーという息子があり、ザイヌル・アーべディーンは二番目である。彼は十二イマーム派の第四代目イマームであった。彼は称号をザイヌル・アーベディーンといったが、その由来は次の通りである。すなわち、ある日、いつものように彼が祈祷を行っていたとき、悪魔がやってきて彼を惑わさそうとした。イマームはこれに気も留めない。そこで、悪魔は彼の足の指に噛み付いて、祈りを中止させようとしたが、それでも彼は祈りをやめなかった。神はイマームにそれが悪魔の仕業であることを知らせ賜うた。そこで、イマームは悪魔に呪いをかけ、一撃を加えて悪魔を退治した。その時悪魔の姿は見えなかったが、彼は「汝はザイヌル・アーベディーン(礼拝者の中で最良の者)なり」という叫び声が聞こえた。さらに、彼の父はイマーム・ホセイン、母はシャフルバヌーであるため、預言者と(イラン)国王の資質が彼に集約された。
※この「誕生に関する伝承」の解説は、「アリー・ザイヌルアービディーン」の解説の一部です。
「誕生に関する伝承」を含む「アリー・ザイヌルアービディーン」の記事については、「アリー・ザイヌルアービディーン」の概要を参照ください。
- 誕生に関する伝承のページへのリンク