西部劇に登場する銃器
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ガンマンが題材となることの多い西部劇には、正確な考証に基づくものから近現代の銃器を手直ししてそれらしく見せかけたものまで、様々の銃器が小道具として登場した。中でも象徴的なのがコルト・シングル・アクション・アーミー(SAA)リボルバー、通称「ピースメーカー」や、コルトM1851のようなシングルアクションリボルバーの拳銃である。SAAはコルト社の最高傑作と言われる名銃で1873〜1940年までの67年間に35万挺が製造されている。 腰のベルト付きホルスターにシングルアクションの回転式拳銃を収めたカウボーイスタイルは、映画に登場する西部ガンマンの定番であった。日本においても、西部劇人気の高まりと共にコルト45のようなシングルアクション拳銃の知名度は上昇し、多くのメーカーからトイガン製品が販売された。 この時代のシングルアクション拳銃には様々なバリエーションが存在するが、特にマカロニ・ウェスタンにおいて、主役は5.5インチの金属薬莢式、悪役のボスは7.5インチなどの長銃身で大型、その他大勢は4.75インチの金属薬莢式拳銃や、パーカッション式リボルバーという具合に、持ち主の役どころにより銃の種類が決められている場合が多かった。 目にも止まらぬ抜き撃ち連射、華麗なスピンといったガンプレイに習熟することが主演スターには要求され、ゲイリー・クーパーは『平原児』(1936)でセシル・B・デミルと話し合った結果、二丁拳銃の抜き撃ちを2週間猛練習し、名場面を作りあげた。 映画がカラーになり、やがてワイド化して横長画面になった頃、1950年代中期以降は朝鮮戦争の帰還兵士であったレッド・ロッドウィングが銃器類の取り扱い指導者になり多くのスターに拳銃の技を伝授した。このガン・プレイの指導にはアルヴァ・オジャラやドイル・ブルックスなどの名前が伝わっているが、遡ると映画がサイレントからトーキーになった頃に、まだデビュー前のジョン・ウェインにガン・プレイを指導したのはあのワイアット・アープ本人であったという話がある。 引き金を引いたままで拳銃を抜き、撃鉄をもう一方の手で連打することで高速に連射する「ファニング」と呼ばれるテクニックは、『荒野の決闘』で名バイプレーヤーワード・ボンドが初めて披露した技である。 なお、ジョン・ウェインはコルト6連発銃によるガンプレイが実は巧かった(「捜索者」でその片鱗を披露している)が大柄(やや太めのウェスト)過ぎて似合わないのでジョン・フォード監督のアドバイスでウィンチェスター銃(ライフル)を愛用したと伝えられる。そして後にライフル銃を持つとこれほど似合う俳優はいないと言われた。 そのウィンチェスター銃はオリバー・ウィンチェスターが考案したライフルで、最初は6連発のライフル銃であったが、SAAが売り出された同じ1873年に17連発の「73年型ウィンチェスター銃」(M1873通称ウィンチェスター銃73))が登場して、このウィンチェスター73も1873〜1932年の59年間に72万挺製造され当時の西部に広く普及したと言われている。ただし当時のアメリカ陸軍には不評で、19世紀に騎兵隊などの軍関係にはウインチェスター銃は使われていない。したがって歴史的には騎兵隊がライフル銃を使う場合はウインチェスター銃ではなく単発のスプリングフィールド銃が使われており、1876年にカスター将軍以下の第七騎兵隊がリトルビッグホーンでインディアンに全滅したのはインディアン側は連発のウインチェスター銃で、騎兵隊側は単発のスプリングフィールド銃を使っていたからという「まことしやかな説がある」と言われている。しかし西部劇映画では騎兵隊がウインチェスター銃で射ちまくる場面がよく見られるという。またテレビ「拳銃無宿」に主演したスティーブ・マックイーンが愛用していた銃は、このウインチェスター銃の銃身を短くした通称ランダルカスタムと呼ばれる銃である。ちなみに映画やテレビで使われるウインチェスター銃は有名なM1873ではなく後継のM1892が使用されている。 この「シングル・アクション・アーミー」と「ウィンチェスターM1873」の2つの銃が後に「西部を征服した銃」と呼ばれている。
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