蒔絵の起源に関する論考の経緯とは? わかりやすく解説

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蒔絵の起源に関する論考の経緯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 15:56 UTC 版)

蒔絵」の記事における「蒔絵の起源に関する論考の経緯」の解説

蒔絵日本漆工で特に特徴的な技法であり、日本では平安時代以降様々な蒔絵技法開発され他国漆工歴史比べて蒔絵作品の質と量は比類なきのである蒔絵技法のうち最も古くからある技法研出蒔絵(ときだしまきえ)であり、その原型となる起源に関する論考紆余曲折があったが、常に正倉院宝物の「金銀鈿荘唐大刀きんぎんでんそうからたち)」の鞘に施された「末金鏤作(まっきんるさく)」と合わせて論じられてきた。なお21世紀初頭時点で、研究の結果正倉院宝物95%は外国風のデザイン施した日本産であると考えられているが、金銀鈿荘唐大刀の鞘が日本産であった渡来であったかは未だ不明である。 以下に論考経緯を記す。 1878年黒川真頼は「金銀鈿荘唐大刀」は渡来のものであるが、その技法末金鏤」は「平塵であって蒔絵ではないとし、蒔絵起源平安時代日本資料求めた1932年六角紫水は「末金鏤」を金属粉と漆をあらかじめ練り合わせたもので絵を描いた「練描」であって蒔絵ではないとし、黒川同じく平安時代日本資料にその起源求め吉野富雄松田権六らもこの説を支持した同じく1932年吉野富雄これまで一般に末金鏤」と技法名のように称され使われていた、正倉院東大寺献物帳国家珍宝帳」に記載してある「鞘上末金鏤作」の表記紐解いて、これは完成品観察した結果末金金粉)を以って鏤して(散りばめて)作られたもの」という意味で記載されたものであって、その製作技法特定したものではないとし、「末金鏤」という技法そもそも存在せず渡来した金銀鈿荘唐大刀」の装飾観察したまま文字起こした記号的な意味合いのものであるとした。また、正倉院献物帳以外には「末金鏤」という現物他の文献記述もないことから、勝手に末金鏤」と略さず原文のまま「末金鏤作」と用いるが正しいとしている このように明治から戦後頃までの論考では「末金鏤もしくは末金鏤作」が渡来品に施され装飾であるとしつつも、「末金鏤」が「蒔絵」ではないことを論拠として蒔絵日本起源説唱えられてきた。 1953–1955年正倉院事務所調査によって、吉野とともに金銀鈿荘唐大刀」の実物を目にした松田権六1964年、「末金鏤まさしく後のいわゆる蒔絵技法になるもの」と判定しこれまで支持してきた六角の「末金鏤=練描」説を否定した。その一方で交流があり松田自身蒔絵界の先覚」と尊敬していた吉野の「末金鏤という技法名は存在せず末金鏤作とするが正しい」という説をも否定し、「末金鏤」を初期蒔絵技法名とした。さらに、「末金鏤中国ふうによばれているのは奈良時代には蒔絵という言葉が、まだできていなかった一証拠としてよい」としたうえで、「金銀鈿荘唐大刀」が日本作られたものであることを示唆したその上で「この末金鏤すなわち蒔絵技法中国には今までのところみられないので、わが国このころ創始され発達した」とし、日本起源説維持した。この松田による発表は、著書「うるしの話」が漆工芸界のベストセラーであったことも相まってその後末金鏤という初期技法作られ金銀鈿荘唐大刀蒔絵最初のもの」という説が広く浸透していくこととなる。 しかし、翌1965年松田中国訪問同年末に淡交新社より発刊され荒川浩和らとの共著日本工芸2 漆』の技法解説の「蒔絵」の項では、「それ(蒔絵)が日本独特のものだという説もあるが、最近中国での発掘調査では、その説は訂正されなければならないであろう」として、蒔絵日本起源説見直し示唆したまた、発行松田没後であるが、1993年再版され著書「うるしの話」の付記には「蒔絵らしいものを中国戦国時代紀元前403 - 紀元前221年)の遺品見た」と補足されている。 2002年田川真千子は東大寺献物帳記載されている単語やその類例広く比較検証し、「金銀鈿荘唐大刀」の「末金鏤作」について、「末金鏤という技法名は存在せず現物から観察的に記述したもの」として、吉野富雄同様に末金鏤作」は蒔絵のように特定の技法表したものではないという結論達している。 20092010年行われた宮内庁正倉院事務所科学的な調査研究では「末金鏤作」は研出蒔絵技法工程に近いと結論づけられた。

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「蒔絵の起源に関する論考の経緯」を含む「蒔絵」の記事については、「蒔絵」の概要を参照ください。

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